契約法務・商取引

【契約法務】
契約は、当事者の意思表示の合致することによって成立し、愛人契約、奴隷契約などのように公序良俗に反しない限り、契約内容は、当事者が自由に決めることができます(契約自由の原則)。
契約は、口頭だけでも成立しますが、後日、言った、聞いてないで、もめないために、ほとんどの場合、契約書が作成されます。
契約書には、当事者が守っていくべきことが記載されており、当事者の行動の指針となるものです。契約書を作成することで当事者が不利益を被るのを防止でき紛争予防に役立ちます。
弁護士と企業との関わり方についても、従来は、企業が法律事務所と顧問契約を締結して紛争が生じたときに社外からサポートするという臨床法務型の顧問弁護士が中心でした。 顧問弁護士は、通常、複数のクライアントを有し、日々、様々な案件に対応していることから、依頼者側としても、第三者的立場からの客観的なアドバイスを期待できるという利点があります。
しかし、顧問契約では、法的紛争が生じて訴訟に発展した場合には、定期的な相談とは別に、訴訟事件については改めて個別の委任契約を締結するのが通常です。しかし、これではコストも時間もかかってしまいます。 そこで、近年においては、企業内部の事情を熟知しており、問題案件に迅速に取り組める企業内弁護士の需要が高まっています。企業内弁護士は、企業の一員として活躍するため、優先する利益が明確という利点もあります。さらに、予防的法務、戦略法務の必要性の高まりから、企業内弁護士も増えてきました。
[さまざまな契約]
私たちの身のまわりには、以下のような様々な契約があります。
- スーパーでの食品を買ったり、家を買ったりするときの「売買契約」
- レンタカーを借りたり、家を借りたりするときの「賃貸借契約」
- 家の壁の修理、車の修理、家を立ててもらったりするときの「請負契約」
- 弁護士、司法書士に裁判業務を依頼するときの「委任契約」
- 銀行、消費者金融からお金を借りる時の「金銭消費貸借契約」
- ホテル、旅館に泊まるときの「宿泊契約」
- クロネコヤマト、郵便局へ荷物の配送を頼むときの「貨物運送契約」
- 住宅ローンを組むときに不動産を担保にする「抵当権設定契約」
- お金を借りるときに保証人をつける「保証契約」
- 従業員を雇うときの「雇用契約」
- 倉庫に荷物を預けるときの「寄託契約」
- タダで物をあげる「贈与契約」
- 会社の事業の一部を売却する「事業譲渡契約」
- 会社の組織再編のひとつとしての「合併契約」
- 企業内の業務の一部を外注する「業務委託契約」
- コンビニなどの経営を行うときの「フランチャイズ契約」
- ウェブサイトに掲載する写真、イラストなどの著作物を使用することを承諾する「著作物使用許諾契約」
- 商標登録したブランドのロゴマーク、文字を譲渡する「商標権譲渡契約」
- マンション、アパートなどの賃貸物件についての管理を任せる「不動産管理委託契約」
[リーガルチェック]
弁護士は、契約の代理人となった場合は契約交渉、契約書作成をすることになりますが、契約の代理人とならないとしても事務所の顧問先から契約書のリーガルチャックを依頼される場合がとても多いです。
リーガルチェックには以下のようなメリットがあります。
契約書作成については、上記の各契約類型に応じて雛形というべき標準的なものがあり、各企業がそれをベースに具体的な取引内容に応じて、修正していく場合が多いです。
本来、契約書は、契約当事者が、契約内容の調査から始まり、時間をかけて交渉し、当事者のそれぞれの意見を取り入れて作成することが望ましいです。
しかし、典型的な契約については、ほとんどが、あらかじめ一方が作成した契約書に他方が必ず契約を成立させたい場面では、その内容に従わざるをえず、署名捺印をして、契約します。
たとえば、不動産賃貸契約の場合、貸主があらかじめ作成した契約書に署名捺印を押さなければ、家を借りられず、雇用契約の場合、雇い主があらかじめ作成した契約書に署名捺印しなければ、就職できず、運送契約の場合、運送会社があらかじめ作成した契約書に署名捺印しなければ、荷物を運んでもらえず、金銭消費貸借契約の場合、貸主があらかじめ作成した契約書に署名捺印しなければ、お金を借りられず、こういう場面では、他方は、契約内容に従わないといった具合です。
このように相手方が作成した契約書に従わざるを得ない、あるいは、定型的な契約書を利用するしかない、といった場合に、次にお伝えする、弁護士によるリーガルチェックが役に立つかもしれません。
①専門家の視点で、後日、トラブルになりかねない曖昧な表現をチェックして、合意した内容を明確にできる
②取引先や顧客からの不当なクレームや、突然の取引中止等、予想外のトラブルで紛争になった場合に、適正に作成された契約書は有力な証拠になる
③自社の利益ばかり優先した契約内容に対しては、第三者である弁護士のチェックが入ることで、異議を唱えやすくなり、対等な契約関係が築ける
④契約の実効性が高まる
このうち④について説明します。
たとえば、金銭消費貸借契約の借主が支払いを怠った場合、または、離婚した相手が養育費の支払いを怠った場合など、契約書の存在だけでは心許ない、ということがよくあります。このような場合に備えて、裁判所の手続によって勝訴判決等を得なくも公正証書の中に「強制執行認諾文言」を取り組むことを、リーガルチェックを通じて提案します。
さらには、すぐに強制執行手続ができるように公証役場での公正証書を作成する場合もあります。
これにより、契約上の債権の効力のみならず、執行力も備えることができ、契約の実効性がさらに高まります。
以上のように契約書作成は、後日の紛争予防機能、裁判での証拠となることから、契約締結後も、しっかりと管理しておくことが大切です。
【商取引】
商取引とは、企業、商人が利益を得るために行われる取引であり、その中でも、特に消費者の被害が多いために特別にその保護を図る対象となる「特定商取引」というものがあります。 特定商取引には、以下のものがあります。
①訪問販売
セールスマンが消費者の自宅などを訪問して契約の勧誘をする訪問販売だけでなく、街頭で声をかけて連れ込むキャッチセールス、契約の勧誘目的であることを隠して呼び出して高額商品などの契約をさせるアポイントメントセールス、デート商法、睡眠商法などの販売方法も含まれます。
②通信販売
消費者が広告を見て、通信手段で申し込みをする取引をいいます。
③電話勧誘販売
電話で勧誘をして契約させるものをいいます。
④連鎖販売取引(マルチ商法)
商品・サービスの販売業において、自己負担を伴うが自分の下に会員(販売員)を増やしていけば、利益も得られるといって誘われて販売員となる契約をいいます。
⑤特定継続的役務提供
英会話教室や家庭教師などのように事業者から一定期間にわたってサービスの提供を受ける内容の取引をといいます。
⑥業務提供誘引販売取引(内職商法)
仕事を提供すると誘って、その仕事のために必要だと言って商品を購入させられる取引をいいます。
これらの取引に該当する場合、消費者保護を図るために、一定の期間内(①③⑤は、8日間、④⑥は、20日間)に限って理由なく契約を解除できるクーリング・オフ(②を除く)、勧誘方法に問題がある場合には、クーリング・オフ期間が経過してしまっても、違法な勧誘行為を理由に契約を取り消せる取消制度(④⑥のみ)があります。