【修習生・弁護士向け】手持無沙汰な事務所と忙しい事務所の分類について(代表弁護士 田中今日太)
こんにちは。
弁護士の田中です。
さて、今回のテーマは、仕事が忙しい事務所と、手持無沙汰な事務所についてお話したいと思います。
ちなみに、私の事務所は③の「ボチボチ忙しい事務所」かなと思っています。
私の適当な分類を言いますね。
あくまでも体感の話なので、参考程度に読んでください。
また、一日●●時間と記載しますが、一時的に起案が重なるとかリサーチが重なる等の理由で、多少ぶれる可能性があることもご留意くださいね。
では、分類していきましょう。
①激忙しい事務所=1日15~20時間労働
とある企業法務系の激忙しい事務所では、「睡眠時間が4時間でそれ以外仕事」というような、そんなことが可能なのか?という働き方をする事務所もあると聞きます。
この場合の労働時間は、一日20時間?ぐらいでしょうか?
配置される部署によって忙しさが全く異なると聞いていますが、さすがに誇張していると思うので1日15時間から20時間というよう定義しておきますね。
(ただ、今のご時世にこれだけ働かなければならないのかは疑問です。
これだけ忙しいときもあるという風に考えるのが良いのかもしれませんね。
関係者の方で詳しくご存じの方は教えてください。)
とはいえ、一応、分かりやすい分類として設定させていただきます。
ところで、これらの事務所は、入所する前に、激忙しいことは十分に分かっていてなお入所されているので、「こんなに忙しいとは思わなかった」とはならないと思います。
また、それだけ働くので得られる報酬は多いです。
1年目から年収1000万円以上が払われる事務所もあります(ただし時給換算すると・・・・)。
②かなり忙しい事務所=1日12時間~15時間労働。
とある企業法務系の事務所や個人事務所でもブラックと呼ばれる法律事務所では、「毎日終電で帰らないといけない」事務所もあると聞きます。
例えば、勤務開始時間を9時からとしたとして24時まで働くとすれば、休憩時間を1時間とすると、14時間の労働ですね。
勤務開始時間が9時からで22時まで働くとすれば、休憩時間を1時間とすると12時間労働ですね。
これもかなり忙しい事務所だと思いますね。
企業法務系の事務所でこれだけ働く事務所は、そこそこネームバリューのある法律事務所かと思いますし、入所される方も事前にかなり忙しいことが分かっているので、
不意打ちで「こんなに忙しいとは思わなかった!」とはならないと思います。
他方で、個人事務所でこれだけ働く事務所は、無名の法律事務所であることが多いと思いますし、「これだけ忙しいとは思わなかった!」となりやすいように思います。
そのため、個人事務所の場合には「ブラック」と呼ばれやすいでしょうね。
なお、全国に支店展開をしている法律事務所の中で「業務過多」になっている状況の場合には、ここに分類されることもありうると思います。
企業法務系の事務所は、顧問対応やリサーチが多く含まれることや、1件の対応時間が相当長くなることもあるので、一概に保有件数は言い難いです。
他方で、個人事務所の場合の保有件数ですが、どんなに少なくても50件以上~80件といったところかと思います。
ここで50件から80件と幅があるのは、法律事務所のシステムや仕組みによる事件処理の効率性によって、処理できる件数に大きな差が生じるためです。
ブラックと呼ばれる法律事務所の中には、事務局が不在又は不足しており、システムや仕組みによる事件処理の効率性が図られておらず、また任せる事件の難易度も考慮していないので、経験力量不足の弁護士に高い難易度の事件が配転されます。
よって、これらの状況におかれれば、50件ほどの事件数であっても、弁護士が大きな事務負担を負うことになり、また経験力量不足によって事件処理方針が決まらず、リサーチに多大な時間を要すること等が要因となって、労働時間が12時間~15時間に至ります。
あるいは、多少なりともシステムが整っていても、弁護士の保有する事件(又は弁護士が主として処理する事件)が70件~80件ともなると、これぐらいの労働時間にはなると思います。
③ぼちぼち忙しい事務所=1日9時間~12時間労働。
私の事務所もここに分類されると思っていますが、ちゃんと経営が成り立っている事務所(利益がしっかり出て黒字でありメンバーにも適正な報酬が払われている)なら多くはここに分類されるように思います。
ちゃんと経営が成り立つためには、「一定レベルの集客」は必要不可欠です。集客が立たなければ、皆さんに十分な給与や報酬が支払えません。
集客が不足すると⑤の分類になってしまいます。
そうはならないように集客に関する努力を行い調整しようとすると、この③「ぼちぼち忙しい事務所」の分類に至るはずです。
事務局の人数、経験、仕組み整備の程度、システム面の充実の度合いによって、保有件数は異なりますが、概ね弁護士の保有件数(又は弁護士が主として処理する件数)は40~60件程度になると思います。
ちなみに、ロイハイは、10:00~19:00勤務で、19時半から21時までには帰宅する弁護士が多いです。起案が立て込めば、22時ぐらいになる場合もありますが、それは例外です。
そのため、30分から2時間ぐらい残業して1日8時間半から10時間労働ぐらいでしょうか。
ロイハイは、固定残業時間が40時間ついているので、その範囲内で勤務している弁護士がほとんどです。
もちろん、その日に予定がある弁護士は19時ピッタリに帰宅する方もいます。
④忙しくはない事務所=1日8時間労働。
概ねの印象ですが、1年の事件処理件数が30件以下なら、このラインだと思います。
この分類にあてはまる事務所は、私はほとんどないという印象です。
やや忙しい方向に振れれば③に分類されますし、暇な方向に振れれば⑤寄りの分類になると思います。
なぜ、このようになるかというと、個人事務所の場合、事件がちゃんと来るかは事前に予測しきれませんし、
「紹介」でいつ事件がくるか分からないということもあるので、「受任できるときに受任しておく」という考えになります。
そして、事件が来る、ということが続けば③に分類されます。
他方で、事件が来ない、ということが続けば⑤に分類されます。
このように、丁度中間点である④を「意図的」に狙うのは、かなり難しいです。
仮に、皆さんが④の状況にあるなら、「ただの偶然」か、意図的に「事件数を●件まで」というように決めておける場合のみです。
前者の場合は偶然なので、忙しくなれば③に振れ、暇になれば⑤に振れます。
後者の場合には、事件数を●件までという風に定めて受任制限をしたときに、事件が来なくなってしまうと⑤に振れてしまうので意図的に行うのはややリスキーな面があります。
私の意見は、③の状態までは集客を維持し、②の状態に至る前に受任制限をして従業員の負担を軽減した方が経営的にも安定するし、
いざというときに従業員を守りやすいと考えています。
また、従業員のスキルアップにもつながります。
それもあって、ロイハイでは③の分類で調整を行うようにしています。
⑤手持無沙汰な法律事務所=一応8時間の勤務時間が定められているが、事件処理が少なく手持無沙汰になっている状況。
概ねの印象ですが、1年の事件処理件数が20件以下なら、このラインになると思います。
弁護士が1~3名程度の個人事務所に多い印象です。
働く人にとってメリットになるかどうかは分かりませんが、早く帰宅できるという点が特徴かと思います。
他方で、働く人にとってのデメリットとしては、勤務弁護士に給与を支払うのが経営的に厳しいので、安定した給与や報酬が払ってもらえるかどうかについて不安があったり、
あるいは、経営が安定しないので状況によっては退職せざるを得ないということもあります。
また、事件処理を十分にこなしていないので、弁護士として十分な経験を積めていないという悩みをお持ちの方が多いです。
このような理由から、中途弁護士の方でロイハイにご応募される方も一定数おられます。
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さて、いかがだったでしょうか?
今回は、手持無沙汰な事務所と忙しい事務所について、私なりの分類をお伝えしました。
皆さんがどのような事務所で働きたいかは、皆さんの価値観によって変わります。
あまり働きたくないという方は⑤の事務所で勤務したいと思うのかもしれませんし、
自分のプライベート時間は無くなってもいいからめちゃくちゃ働いてお金を稼ぎたいという方は①の事務所で勤務したいと思うのかもしれません。
あなたがどうしたいのかについて、よく考えたうえで、事務所を選びましょう。
あなたにあった事務所が見つかることをお祈りしております。