2020.07.24 2022.10.03

自己破産をする際に,ずるいですが偽装離婚して,財産を隠すことができるのでしょうか?

自己破産をする際に,ずるいですが偽装離婚して,財産を隠すことができるのでしょうか?

自己破産をせざるを得ないほどに借金が増加した場合に,配偶者に迷惑がかからないようにという理由であったり,何とか財産を隠すことができないかと画策して,自己破産申立て前にいわゆる「偽装離婚」をしてうまく立ち回れないかということを考えているというお話を伺うことがあります。

しかしながら,偽装離婚をしても全く意味がありませんし,それ以上に要らぬ不利益を被ることになりかねませんので,自己破産申立ての前に偽装離婚することは絶対に避けるべきです。

その理由,又,債務整理と離婚の関係等に関してご説明いたします。

偽装離婚とは?

偽装離婚とは,事実上は夫婦関係が継続しているにもかかわらず,戸籍上,離婚届を提出して,法律上の夫婦関係を解消することをいいます。

離婚届提出後に別居している場合もあれば,同居を続けている場合も見られます。

民法では,「夫婦は,その協議で,離婚をすることができる。」(民法第763条)と定められており,離婚意思があって,離婚届を役所に提出して受理されれば,それだけで,離婚が成立します。

なお,離婚意思とは単に離婚を届け出るという形式的な意思があればよいというのが,裁判上の解釈とされていますので,届出意思があればその後同居していても,離婚自体は原則有効と判断されます。

ですから,決してお勧めするものではございませんが,いわゆる偽装離婚をしても,そのこと自体が違法ではありませんので,単に偽装離婚をしただけであるならば,特に目立った不利益を被ることもありません。

偽装離婚をしようとする理由とは?

では,なぜ偽装離婚をしようと考えるのでしょうか。

一般的には,以下のような理由に基づいて偽装離婚を考えるケースが多いと説明されます。

借金が多くて自己破産をせざるを得ないが,配偶者に迷惑をかけたくない場合又は財産を守りたい場合

債務超過となって自己破産を検討せざるを得なくなった場合に,夫婦であれば配偶者も請求されるのではないかと心配して,とりあえず籍を抜けば何とかなるのではないかと考えて,離婚届を出すケースが考えられます。

それより悪質な場合としては,偽装離婚をして離婚に伴う財産分与や慰謝料の支払をすることによって,配偶者に自分の財産を移すことで,債権者からの追及を避けようとしたり自己破産の際に財産がないものとして申し立てることを考えているケースです。

このような場合に,偽装離婚をすることでその目的を達成できるかという点に関しては,別にご説明いたします。

生活費の足しにするために生活保護や児童扶養手当を不正受給しようとする場合

離婚して独り身となった,又は子どもを抱えて生活をしていなければならないが,なかなか就職ができない等という理由で生活保護申請をして保護費を不正受給しようとするというケースです。

不正受給がばれることなく過ごせている場合もあるかもしれませんが,不正受給をしたことが判明すれば,需給停止はもちろんのこと,それまでに不正に受け取った保護費の返還も求められますし,公正証書原本不実記載等罪に問われ5年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる可能性もあります。

不正受給がばれてしまったときのリスクを考えれば,偽装離婚をすべきでないことは明らかです。

保育所の入所のため,シングルマザー(シングルファーザー)として,優先的に保育所入所ができるようにする場合

以前には見られなかった理由ですが,共稼ぎの夫婦で,互いの仕事を継続するために子どもを保育所に入所させ易い状況になったことにするため,偽装離婚をしてシングルマザー(シングルファーザー)として保育所入所の申請を行うというケースです。

昨今の待機児童問題がいかに深刻であるかということの現れではありますが,実際にそのようなケースが増えているというのは残念ながら事実のようです。

この場合,待機児童問題で苦しんでいる家庭が他にもたくさんあることは事実ですので,偽装離婚がばれてしまえば,それこそ親子共々世間の非難や白い目にさらされることになりますし,保育所側から退所させられる可能性もあるため,こうした目的を達成するために偽装離婚することも決して望ましくありません。

偽装離婚で目的を達成できるの?

では,自己破産をせざるを得ない状況で,配偶者に迷惑をかけたくない,または財産を隠したいというような理由で偽装離婚をする意味があるのでしょうか。

離婚すれば,配偶者は借金の請求をされなくなりますか?

離婚は関係なく,配偶者だからといって請求されることは原則としてありません。

 夫婦であっても一方の債務については,原則として責任は本人が負うものであり配偶者が責任を負うものではありませんので,離婚してもしなくても,借金をした側が責任を負うにすぎません。

 単に夫婦であるからといって,基本的には配偶者に請求されることはありませんし,万一請求がされたとしても応じる義務もありません。その意味で,偽装離婚する意味は全くありません。

 もっとも,配偶者が連帯保証人になっている場合には,離婚してもしなくても連帯保証人に対する請求はされますので,夫婦の一方が自己破産のみならず何らかの債務整理をすれば,当然に配偶者は連帯保証人としての責任を追及され,請求されることになります。

あくまで連帯保証人としての責任を追及されるにすぎませんので,離婚してもしなくても全く変わりはありません。やはり偽装離婚する意味は全くありません。

 もちろん,自己破産をして自宅を手放さなければならないことになれば,最終的には引っ越さなければなりませんし,自動車等の高額資産を所有していれば,それも換価しなければならず,最終的には没収されることになりますので,事実上,配偶者にも何らかの迷惑がかかる可能性はあることは否めませんが,これは偽装離婚とは無関係な話です。

日常生活での借金は夫婦で責任を負うのではないでしょうか?

その心配はありません。

確かに,日常生活に必要な支払や物の購入に関しては,日常家事債務といって,夫婦の一方が行ったものであっても,配偶者には連帯して支払う義務が生じます(民法第761条)。

 そのため,債務が増加して自己破産を検討しなければならなくなった際に,離婚した方がよいのではないかと思われることがあるかもしれません。

 確かに,借入金やクレジットカードで日用品や食材の購入をしていることもあるとは思いますが,債権者が配偶者に請求するのであれば,どの借入やカードの支払が日用品等の購入に充てられているかを特定しなければならず,それこそ全てのレシートをチェックするようなことをしなければならず,実際問題として,特定や立証は非常に困難であると言わざるを得ず,夫婦の一方が借金をしたとしても,配偶者が日常生活での支出だからと連帯責任を問われて,請求されることはまずありません。

 ですから,日常生活での借金で自己破産しても,偽装離婚する必要は全くありません。

離婚して財産分与すれば,自己破産しても財産を守れますか?

では,借金がかさんで自己破産申立てしか方法がないというとき,自己破産申立ての際に財産を隠そうとして偽装離婚をする場合はどうでしょうか。

そのようなことをしたところで,まず,隠し通せるものではなく,財産を守ることはできないと思ってください。

通常,離婚の際に認められる財産分与は,婚姻中に形成された財産の2分の1程度までですので,それを超えて過大な財産分与をした場合には,その財産分与は詐害行為(債権者を不当に害する目的をもって自己の財産を減少させることをいいます。)に該当するものとして,債権者から詐害行為取消権を行使される可能性があります。

もちろん,常識的な範囲の金額での財産分与であれば,詐害行為取消権の対象とはならないかもしれませんが,最近,債権者の追及を逃れることを目的とした偽装離婚が無効であると判断された判例(東京高裁平成26年3月18日判決)では「本件離婚及び本件財産分与が,真意に基づかない通暁虚偽表示であると認められる」と判示されています。

離婚そのものが無効と判断されれば財産分与も全てが無効とされることになります。

偽装離婚をして,その後間もなく自己破産申立てをした場合には,まず間違いなく,破産管財人が選任され,破産管財人が離婚も含めた事情や財産の移動を詳細に調査することになります。

そこで財産隠匿を目的とした偽装離婚であることが判明すれば,否認権が行使されます。

簡単にいうと,その財産の移動が無効になるということです。

なお,離婚の際の慰謝料を支払うことに関しても,自己破産申立ての直前に離婚に伴う慰謝料を支払うということは,偏頗弁済(「へんぱべんさい」と読みます。一部の債権者にのみ支払をすることです。)と扱われ,同じく,破産管財人に否認権を行使される可能性が高いです。

否認権が行使されれば,その行為で移転した財産は破産財団に戻され,債権者への配当のため等に使われることになります。

通常,偽装離婚までして隠したい財産といえば,自宅不動産や,高額の預貯金,株式や自動車等でしょうが,所有権の移転や処分をした場合には,不動産登記事項証明書,預貯金通帳,証券取引報告書,自動車の登録証明書等に,財産が移動した記録が残りますので,一目瞭然です。決して,最後まで隠し通せるものではありません。

自己破産申立てをすれば,財産関係の移動は事細かに調査されます。一時的に財産隠しが上手くいったように見えても,最終的には見破られるものと思っておいてください。

つまり,自己破産の際に財産を隠そうとして,申立ての直前に偽装離婚しても,その目的を達成することはできません。

偽装離婚がばれてしまうと,とんでもないことになるかもしれませんよ!

債務が帳消しにならないばかりか,犯罪者として処罰される可能性があります。

まず,偽装離婚で配偶者に財産分与や慰謝料の支払いをすることは財産の隠匿行為ですので,免責不許可事由に該当し,免責が不許可になる可能性も高くなります。

免責が不許可になってしまっては,財産は債権者の配当のために破産財団に持って行かれ,なおかつ,借金の支払義務も残ったままになるということになり,何のために自己破産申立てをしたのか分からないことになります。

さらに,財産を隠す行為が悪質と判断されれば,詐欺破産罪に問われる可能性も出てきます。その場合には1か月以上10年以下の懲役または1000万円以下の罰金に処せられることになりかねません。

債務を免れるどころか犯罪者になってしまう可能性まであるのですから,偽装離婚して自己破産をするという考えは,全く無意味な考えだと言わざるを得ません。

自己破産の前には絶対離婚できないのですか?

偽装離婚ではなく,本当に離婚しようとしており,協議離婚の合意に至ったのが,たまたま自己破産申立ての前であったという場合であっても,偽装離婚と思われてしまうので,離婚はできないと考えるべきなのでしょうか。

そういうことはありません。自己破産の前に離婚すること自体がいけないことではありません。

例えば,財産分与や慰謝料の支払等の財産の移動が全くない場合であったり,財産分与をしたとしても,常識的な範囲でなされているという場合に,本当に離婚するというのであれば,そのこと自体が問題となるものではありません。

ただし,相当な範囲を超えて財産分与をしていたり,何らかの財産の移動があったりすると,偽装離婚ではないかと疑われることもありますので,破産管財人から詳細に調べられますし,場合によっては財産分与を一部否認される可能性もありますので,出来ない訳ではありませんが,あまりお勧めもできないというのが正直なところです。

ずるいことは考えず,弁護士に相談して正当に手続を取りましょう。

自己破産申立てを検討するにあたって,配偶者が請求されないようにと思って離婚を考える方もおられるかもしれませんが,自己破産自体は直接の離婚原因とはされていませんし,ここまで読んできていただいた中で,離婚してもしなくても状況は何ら変わらないことをご理解いただけたものと思います。

 

また,何とか上手く立ち回ろうと策を弄したところで,不利益を被る可能性が高くなるだけであるということに関しても,ご理解いただけたのではないかと思います。

 

ずるいことを考えるのではなく,一刻も早く弁護士に相談して,きちんと正当な手続を取って,0からの再出発を考えてください。

 

当事務所は,債務整理に長けた弁護士が何人も在籍しております。配偶者への迷惑を最小限にしたいと思われるのであれば,弁護士に相談する際にご遠慮なくお話しください。最良の方法を見つけるお手伝いをさせていただきます。

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