2020.08.07 2022.10.03

遺産未分割のままでの自己破産申立て

遺産未分割のままでの自己破産申立て

遺産の相続は、基本的に全ての人がその権利を有しています。被相続人が死亡した段階で胎児だったとしても相続する権利を持っているのですが、自己破産をしている人の場合は相続された遺産を債権者の配当に充てなければいけません。

そのため、遺産を相続せずに対応できないかと考える債務者もいるはずです。実は、状況によっては相続の権利がなくなってしまったり、相続人が放棄したりできます。

相続人の放棄ができるといっても、専門的なことは分からないという人も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、遺産未分割のままで自己破産申し立てをする場合についてみていきましょう。

遺産相続と自己破産について

遺産を相続する権利がないと見なされる場合には権利がはく奪されます。
それを、相続欠格、相続廃除と呼びます。

相続欠格について

  • ・故意に被相続人や同順位の相続人を死亡または死亡させようとした
  • ・振相続人が殺害されたことを知っていながら告発や告訴をしなかった
  • ・詐欺や脅迫によって被相続人が遺言を残したり、撤回・取り消し・変更したりすることを自己の利益のために妨げた
  • ・詐欺や脅迫によって被相続人に遺言を残させたり、取り消しや変更したりすることを自己の利益のために強制した
  • ・相続人が遺言書の偽造や変造、破棄、隠ぺいを自己の利益のために行った

このような場合に、相続の権利が欠格します。
つまり、自己破産をしたことが直接的な欠格の原因にはならないと言えるでしょう。

相続廃除について

  • ・被相続人を虐待したり、侮辱したりした
  • ・被相続人の財産を不当に処分した
  • ・ギャンブルや浪費を繰り返すことで被相続人に大きな借金を支払わせた
  • ・遊興や犯罪、浪費、反社会勢力への加入、繰り返す異性問題のような非行を行っていた
  • ・財産目当ての婚姻や養子縁組を行っていた

このような場合に、相続が廃除となります。
自己破産は直接的に関係していませんが、自己破産の理由がギャンブルや浪費、遊興などの娯楽だった場合は、相続廃除の対象になる可能性が高まります。
もちろん自己破産をしていなくても、ギャンブルや浪費、遊興などの娯楽で借金を支払わせていたり、非行とみなされる行動を行ったりしていれば、相続廃除の対象になるでしょう。

自己破産をしても相続の権利は失われないが…

ここまでで説明してきたように、自己破産をしたとしてもそれによって相続の権利が失われることはありません。
しかし、相続が開始したタイミングが破産手続開始決定の前か後かによって、状況がかわります。
相続人はまず、相続が開始したタイミングが破産手続き開始決定の前か後かを確認する必要があるのです。

破産手続開始決定前に相続が開始された場合

破産手続開始決定前に相続が開始された場合、遺産分割協議に参加することができません。
破産した人は、「破産手続開始時に有する財産」の財産管理権を失うため、破産手続開始決定までに相続が開始していると相続財産は「破産手続開始時に有する財産」に含まれます。
そのため、相続財産の管理処分権まで失ってしまうのです。

破産開始決定後に相続が開始された場合

破産開始決定後に相続が開始された場合は、遺産分割協議に参加することができます。
破産開始決定後に破産した人が手に入れた財産は、新得財産になるためです。
新得財産は、破産した人が自由に持てる財産です。
すでに破産開始が決定されているのであれば、遺産分割協議に参加したり、取得した財産を好きなように使ったりできます。
この方法が破産した人にとっては、生活再建において有利になります。

未分割遺産がある場合の自己破産

遺産相続の権利は自己破産によって失われることはありませんが、状況によって変わるということをここまでの説明で知っていただけたでしょう。
続いては、未分割遺産がある場合の自己破産について見ていきます。

遺産分割が終わっていない相続財産がある場合、債権者の配当に充てなければいけません。
これは、他の財産と同じ扱いになるためです。
相続の割合に応じた財産を手放さなければいけませんが、親が暮らしている自宅などは手放すことが難しいでしょう。
そのような場合は、対応に苦慮してしまうものです。

そんな時には、破産する人の取り分をゼロにして遺産分割協議を行うケースがあります。
しかしこの方法は、できるだけやらない方が良いと考えられている方法です。
なぜかというと、債務の支払いができない状況になってから行われた遺産分割協議は、破産管財人の否認権行使の対象になってしまうためです。
破産管財人の否認権行使の対象になるというのは、遺産分割協議自体がなかったことにしてしまいます。
そのため、遺産分割協議を急いで行うのではなく、親せきなどに協力をしてもらいながら破産した人の相続割合に応じた金額を破産財団に組み入れることを検討すべきだと言えるでしょう。

相続放棄をすることで遺産への影響はなくなる

自己破産申立てをまだしていない場合は、相続放棄ができます。
申立てをする前に相続放棄すれば、遺産は相続しないため影響を受けません。
相続放棄した人は、相続人ではなかったという扱いになるためです。
そのため、相続放棄後に自己破産をしたとしても遺産を取り上げられ、債権者の弁済に利用されることはありません。
兄弟や他の相続人にも迷惑をかけずに済みますし、土地や建物を取り上げられることもないので、他の相続人はきっちりと分けることが可能です。
ただし、相続放棄には3ヶ月以内という期限がある点に注意しなければいけません。
相続放棄は、基本的に自分自身が相続人だと分かってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申請しなければいけないのです。

しかし場合によっては、3ヶ月以内に申請が出来な場合もあるでしょう。
状況によっては3ヶ月以内に手続きができなかったとしても遺産放棄が認められる場合があります。
それは、

  • ・亡くなってから3ヶ月経った頃に亡くなった人当ての督促状が届いた(亡くなった人に借金があることを誰も知らなかった場合)
  • ・亡くなった人が遠方に住んでいて、相続人になったこと自体を知らなった

といった場合です。

このような場合であれば、家庭裁判所が3ヶ月以内に手続きができなくても仕方ないと認めてくれて、相続放棄が可能になる可能性が高くなります。

家庭裁判所に認めてもらうには、提出しなければいけない書類になぜ3ヶ月以内に手続きができなかったのかを落とし込むことがポイントになるので覚えておきましょう。

納得してもらえるような理由を記載するためには、これまでの状況の事実関係を把握し、証拠となる書類を用意する必要もあります。

それだけではなく、本当に相続放棄をしなければいけないのかを判断するために、相続人や財産の状況を調査することも必要になります。

また、3ヶ月以上経ってから相続放棄をする場合は、専門的な知識を持つ弁護士や司法書士などに相談することも検討すべきだと言えるでしょう。
中には、遺産相続に特化している弁護士や司法書士もいるので、そのような人に相談することでより円滑に手続きを進められるようになります。

まとめ

遺産に関するトラブルや問題は非常に多いですが、専門的な知識が無ければ解決は非常に難しいです。特に、遺産未分割と自己破産はとても複雑な問題です。

そのため、自分たちで何とかしようとするのではなく、専門的な知識を持つ弁護士や司法書士などに相談するようにしましょう。

それぞれの状況に合わせて適切なアドバイスをしてくれるため、状況改善に向けてスムーズに動けるようになります。

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