幣事務所では、家族や職場に知られずに(内緒で)、債務整理手続き(任意整理・個人再生・自己破産)をされたいという方々からのご相談を受けることが多くあります。
どの相談者の方々にもいえることですが、債務整理手続きをすることに迷いはないものの、家族や職場に知られるのではないか、という漠然とした不安をお持ちになられることが多いです。
そこで、今回は上記のようなお悩みをお持ちの場合には、どのような解決方法があるのか、そして、選択する手続きによって、どのような影響や違いがあるのかということについてご説明いたします。
債務整理手続き(任意整理・個人再生・自己破産)が与える各種影響
メリット
任意整理・個人再生・自己破産のいずれの手続きにも共通することですが、弁護士が介入することによって、借入先からの督促と返済がいったん停止します。
これが、弁護士に債務整理手続きを依頼して、最初に感じられる大きな影響だと思われます。
これまでは、借入先から頻繁に督促の電話やお手紙があったものが、弁護士に依頼した途端に嘘のようにぴたりと止まります。
これには理由があり、貸金業法やサービサー法により、弁護士から「○○さんの代理人になりました」という受任通知が借入先に届くと、借入先はその日以降直接の取り立てができなくなるからです。
借入先からの督促と返済が停止することで、その間に生活を建て直していただくことが可能なります。
また、督促の電話や手紙から解放されることで、精神的にも安定した日々を送ることも可能になります。
デメリット
しかし、弁護士に債務整理手続きを依頼すると、上述したようなメリットだけではなく、デメリットもあります。
その代表的なものとして、個人信用情報機関への事故情報登録(ブラックリスト)があげられます。
(1)で述べたように、弁護士が介入することによって、借入先からの督促と返済がいったん停止します。
このことについて借入先の立場になって考えてみると、返済が停止する=延滞状態になるということですので、事故情報として個人信用情報機関に登録するという流れになります。
この事故情報ですが、個人信用情報機関によって登録期間はまちまちですが、一般的には5~7年程度といわれています。
事故情報の登録により、新たな借入れやローンが組めなくなることや、新たなクレジットカードを作成できなくなること等の影響があります。
債務整理手続き(任意整理・個人再生・自己破産)は職場に知られずに(内緒で)できるのか
個人再生・自己破産の場合
結論から申し上げますと、職場に知られる可能性があります。
個人再生や自己破産の場合、裁判所への申立時には多数の書類を提出しなければなりません。
それらの書類の中で、場合によっては職場に開示を求めなければならない書類として、退職金に関する証明書があります。
この書類の開示を職場に求めるにあたり、職場に個人再生や自己破産の手続きをしていることを知られる可能性はゼロではありません。
そうすると、職場に知られずに(内緒で)個人再生や自己破産ができないのかというと、必ずしもそうとは限りません。
裁判所での運用上、退職金に関する証明書の提出が困難な場合には、退職金支給規定と計算書をもって代えることができます。
退職金支給規定は就業規則と同様に、従業員がいつでも見ることができるように備え付けておくべきものですので、こちらのコピーを提出してもらうことで対応することが可能です。
あとは、退職金の計算方法のみを口頭で人事担当者等に確認してもらえれば、退職金の計算は可能となり、退職金支給規定と併せることで、裁判所に退職金に関する証明書の代替書類として提出することができます。
この方法であれば、職場に個人再生や自己破産の手続きをしていることを知られる可能性は低くなります。
ただし、自己破産の場合のみ、保険会社や警備会社等にお勤めの方は一定期間業務に影響が出ることから、職場に知られてしまう可能性があることに注意が必要です。
詳しくは、「保険募集人が自己破産をするとどうなるか」をご覧ください。
任意整理の場合
任意整理は、個人再生や自己破産と異なり、弁護士と借入先の話し合いで解決をする手続ですので、職場に任意整理をしていることを知られる可能性は、ほぼありません。
また、自己破産のように、職種によって一定期間業務に影響が出るといったこともありません。
ただし、長期間延滞したまま放置しておくと、裁判を起こされて判決を取られてしまうことで、給与の差押を受けるリスクは存在します。
給与の差押を受けると、借金をしていることが確実に職場に知られてしまいます。
そうなる前に、できるだけ早く弁護士に相談されることをおすすめします。
債務整理手続き(任意整理・個人再生・自己破産)は家族に知られずに(内緒で)できるのか
個人再生・自己破産の場合
結論から申し上げますと、家族に知られる可能性があります。
上述した通り、個人再生や自己破産の場合、裁判所への申立時には多数の書類を提出しなければなりません。
それらの書類の中で、場合によっては家族に協力を求めなければならない書類として、家族の通帳や保険証券や給与明細書や公共料金の領収書等があります。
これらの書類を提出するにあたり、家族に個人再生や自己破産の手続きをしていることを知られる可能性はゼロではありません。
そうすると、家族に知られずに(内緒で)個人再生や自己破産ができないのかというと、必ずしもそうとは限りません。
手続をする当事者以外の家族が保険に加入していなかったり、働いていなかったり、公共料金の支払について手続きをする当事者が支払っているような場合であれば、そもそも提出する書類が存在しません。
これらのような場合であれば、家族に個人再生や自己破産の手続きをしていることを知られる可能性は低くなります。
任意整理の場合
繰り返しにはなりますが、任意整理は、個人再生や自己破産と異なり、弁護士と借入先の話し合いで解決をする手続ですので、家族に任意整理をしていることを知られる可能性は、ほぼありません。
借入先との連絡はもちろんのこと、書類のやり取りも弁護士が窓口となって行いますので、ご自宅に借入先から書類が届くことは、基本的にはありません。
ですので、家族に知られる可能性は極めて低いものといえます。
しかし、ここで一点注意が必要です。
自宅に借入先から書類が届くことは基本的にはありませんが、裁判所からの書類は別です。
弁護士が介入することによって、借入先からの督促と返済がいったん停止しますが、裁判をする権利までを奪うものではありません。
長期間延滞があった状態で弁護士が介入した場合、借入先が裁判所に提訴して、ある日突然に裁判所から訴状が届くことがあります。
そうなると、借金をしていることが確実に家族に知られてしまいます。
そうならないように、できるだけ早く弁護士に相談されることをおすすめします。
実際にあったご相談内容と解決事例
Aさんは30代の会社員の方で、専業主婦の妻とお子さんの4人家族です。
Aさんは製造業の会社で現場作業員として日々働かれていましたが、お子さんの将来の教育資金に充てるために、FXをすることで資産を増やそうと考えられました。
手持ち資金がなかったAさんは、FXの資金を工面するために銀行から借金をしました。
銀行からの借金をもって、さっそくFXを始めましたが、あっという間に損失を出していまいました。
なかなかうまくいかないことに焦り始めたAさんは、損失を取り戻そうとさらに借金を重ねてFXにつぎ込みました。
結果的に損失ばかりを増やしてしまい、AさんはFXをやめて株取引を始めました。
その資金を工面するために、今度は消費者金融から借金を重ねました。
しかし、FX同様に損失ばかりを出してしまい、手元の資金もあっという間に底をついてしまいました。
損失を出す度に、銀行や消費者金融からの借金を重ね、運用をしていました。
そのようなことを続けていくなかで、ついにAさんの借入額は600万円近くにまで増加し、返済ができなくなってしまいました。
そこで、Aさんは幣事務所にご相談のうえ、個人再生を行うことになりました。
ただ、Aさんは自らの行為を深く反省される一方で、どうしても家族や職場には借金の事実を知られたくないと大変心配をされていました。
幸いなことに、Aさんのご家族はAさん以外に収入がある人がおらず、給与明細書はAさんのものだけを提出するだけで済みましたので、ご家族の協力は不要でした。
また、保険についてもAさんが加入している保険以外にご家族が加入されている保険はありませんでしたので、ご家族の協力は不要でした。
さらに、公共料金の支払もAさん名義の口座からの引落でしたので、ご家族の協力は不要でした。
これで、ご家族には知られることなく、個人再生手続を進めることが可能となりました。
次に、職場については、退職金に関する証明書の開示を求めなければならないかを検討する必要がありました。
幸いなことに、Aさんの職場では退職金支給規定が誰でも閲覧できる状態であったため、人事部に計算方法のみを確認するだけで、退職金の試算が可能でした。
これにより、Aさんは職場にも知られることなく、個人再生手続を進めることが可能となりました。
最終的に、600万円程度あった借金も5分の1まで圧縮することができ、ご家族にも職場にも知られることなく(内緒で)手続きを終わらせることができました。
ご依頼は経験豊富な弁護士に
借金の事実をご家族や職場に知られることなく、なんとか解決されたいというご相談は多くあります。
債務整理手続きをされるにあたって、その返済をどうすべきなのかということは非常に大切なことではあります。
しかし、借入先の返済以外にも、どの手続きを選択するのが自身にとって最大のメリットがあり、尚且つご家族や職場にも知られず(内緒で)手続きをすることができるのか、債務整理の豊富な経験を有する弊事務所に早急にご相談ください。