タクシードライバー(タクシー運転手)は,きつい仕事であるにもかかわらず,稼げない仕事であるというイメージを持たれている方もおられることと思います。
タクシードライバーが精神的にも肉体的にもストレスが多い仕事であるという点については間違いではありませんし,収入面では,歩合給の部分があるために,毎月の収入が一定しないというリスクがあることは確かです。
仕事のストレス解消で散財してしまったり,収入が落ち込んだ際に生活費の不足分を借り入れたことがきっかけとなり,借金に苦しんでいるタクシードライバーの方もおられるのではないでしょうか。
タクシードライバーの方の債務整理について,注意点を含めて,ご説明いたします。
タクシードライバーの方がなぜ借金をしてしまうのか?
タクシードライバーの給与形態は,完全歩合給か,固定給+歩合給というのがほとんどで,完全歩合給の場合はもちろんですが,固定給+歩合給の場合でも,歩合給の割合が大きいため,収入が安定しないリスクを抱えているのです。 歩合給の部分については,売上によって毎月の収入が上下しますし,病気やケガ等で仕事ができなければ0になる可能性もあります。そのように,収入が安定しないことから,生活費の不足等を借入れする場合が出てくる可能性はありますし,収入が低い時期が続いてしまえば,借金が増えていく可能性も否定できません。 また,難儀な客への対応等でのストレスを解消するために,休日に飲酒やギャンブル等にのめりこんでしまい,収入以上の支出を繰り返してしまうことで,借金総額を増やしてしまうこともあり得ます。 このような流れで,タクシードライバーの方が借金を増やしてしまうことになってしまうのです。
タクシードライバーの方が任意整理をして借金(債務)の返済減額をするときの注意点
まず,最初に申し上げておくことは,債務整理(任意整理・自己破産・個人再生)をされても,運転免許等には何ら影響はありません(タクシードライバーに必要な「二種免許」や個人タクシーの営業免許にも影響はありません。)ので,その点の心配は全くありません。 また,債務整理をしたことを理由に解雇することは,不当解雇であり無効ですので,仕事を辞めなければならなくなることもありません。
個人名義のETCカードは利用できなくなる可能性があります。
タクシードライバーの方にとっては,高速道路を利用するに当たって,今やETCカードは無くてはならないもので,通常は,クレジットカード会社から付帯発行されるETCカードを利用されているものと思います。 勤務されているタクシー会社名義のETCカードを使用しているのであれば,何ら問題はありませんが,自分名義のETCカードを利用されている場合には,発行元のカード会社を任意整理の対象から外していれば,現在のカードの利用期限までは使用を続けることができる可能性はありますが,更新時に事故情報が明らかになる可能性があり,遅くとも更新の際には継続利用できるのかどうかを確認する必要があり,継続利用できない場合にはプリペイド式のETCパーソナルカードを使う等する必要があります。
携帯電話料金を滞納している場合等には,解約されてしまう可能性があります。
常連客の方への営業の一環として,携帯電話で直接連絡を取っているタクシードライバーの方もおられると思いますが,携帯電話料金を滞納している場合や分割弁済中の機器代金が残っている場合,携帯電話会社に対して任意整理を申し出た場合には,携帯電話契約は解約される可能性が高くなりますので,可能であれば,任意整理の対象から外すほうが安全です。
個人タクシー事業者の方は,車輌を処分される心配はほとんどありません。
個人タクシー事業者の方にとっては,車輌を処分されてしまうと,個人タクシーを続けていくことができなくなってしまいますので死活問題といえます。 任意整理の場合,タクシーの車輌代金が支払済の場合には,車輌を処分されることはありません。 車輛のローンを支払中の場合には,ローン会社を任意整理の対象とした場合には,車輌を引き上げられ処分される可能性がありますが,任意整理の対象から外して,それまでと同じように支払を続けるのであれば,処分されることはありません。
長期間無理なく返済できる金額を決めなければなりません。
任意整理は,3~5年をかけて借金の元金を返済していくことになりますので,収入が少ない場合でも,返済を続けていける金額を基準に月々の弁済額を決めていかなければなりません。 冷静に債権者との交渉を進めるためには,債務整理に長けた弁護士に依頼されることをお勧めします。
いわゆるブラックリストに載ってしまいます。
任意整理を行ったことによって,信用情報機関への事故情報の登録がされます(いわゆるブラックリストに載ることになります。)ので,一定期間(通常5~7年程度)は新たな借り入れや新たなクレジットカードの作成ができなくなります。
タクシードライバーの方が自己破産して借金(債務)をゼロ(免責)にするときの注意点
個人名義のETCカードは使用できなくなります。
自己破産の場合には,全債権者を裁判所に届け出る必要があり,クレジットカード会社も当然債権者として届け出なければなりません。そのため,クレジットカードに付帯する個人名義のETCカードも当然解約されて使用できなくなります そのため,ETCカードを使用する場合には,プリペイド式のETCパーソナルカードを使う等する必要があります。
携帯電話料金を滞納している場合等には,解約されてしまいます。
自己破産の場合には,携帯電話料金を滞納している場合や機器代金を分割弁済中の場合には,携帯電話会社も債権者となり,携帯電話契約は強制解約されます。 ここで,携帯電話は必需品であるとして,強制解約されないように,携帯電話料金や機器代金だけを自己破産の直前に勝手に支払ってしまうと,偏頗弁済(「へんぱべんさい」と読み,一部の債権者のみ優先して支払をすることをいいます。)に該当する可能性があり,管財人が選任されて否認されかねません(支払った金額を管財人に返す必要が出てきます。)。 勝手に判断して支払うようなことはせずに,事前に債務整理に長けた弁護士に相談されたうえで,慎重に対応方法を決めるべきです。
個人タクシー事業者の方は,車輌を処分しなければならない可能性が高くなります。
自己破産の場合には,価値が低い場合(原則として時価20万円以下)や,「自由財産の拡張」が認められる等車輌が自由財産として認められれば処分の必要はありませんが,そうでない場合には,車輌代金の支払が残っているかどうかにかかわらず,家族等に買い取って貰う等の段取りをしなければ,債権者への配当等に充てられることになり,最終的に処分されることになります。 そのため,自己破産以外の方法を選択したほうがよい可能性もありますので,事前に債務整理に長けた弁護士と方針を相談する必要があります。
いわゆるブラックリストに載ってしまいます。
任意整理を行った場合と同じデメリットがあります。
タクシードライバーの方が個人再生して借金(債務)を減額するときの注意点
個人名義のETCカードは利用できなくなります。
この点については,自己破産の場合と同じです。
携帯電話料金を滞納している場合等には,解約されてしまいます。
この点についても,自己破産と同じですが,個人再生の場合には,偏波弁済とされた金額については,返済すべき金額に上乗せして再生計画を作成する必要があり,弁済総額が高くなってしまう可能性があります。 そのため,自己破産と同じく,事前に債務整理に長けた弁護士に相談されたうえで,慎重に対応方法を決めるべきです。
個人タクシー事業者の方は,車輌を処分しなければならない可能性が残ります。
個人再生の場合,車輌代金を支払済のタクシーであれば,財産の1つとして計上し,合計の財産額以上を支払すればよいので,処分されることはありません。 ローン支払中であれば,所有権者であるローン会社と弁済協定(車輌の評価額相当額を支払う代わりに車輛引き上げを止めてもらうことを認めてもらう協定のことをいいます。)を締結して,車輌を維持することは可能ですが,弁済協定が結べなければ,車輌を処分されることになります。 協定を結ぶためには,事前に債務整理に長けた弁護士に相談されたうえで,速やかに処理をすべきです。
毎月の弁済額を3年間確保できる目途が立たなければなりません。
個人再生は,原則として,3年で債務総額の2割程度の金額を返済していくことになりますが,毎月の弁済総額は再生計画案によって決まることになります。 3年間,毎月その金額を確保できる目途が立たなければ,個人再生での債務整理は難しくなることには注意が必要です。
いわゆるブラックリストに載ってしまいます。
任意整理,自己破産を行った場合と同じデメリットがあります。
タクシードライバーの方で借金にお困りの方は,債務整理を取り扱う大阪・難波(なんば)・堺市の弁護士に
タクシードライバーの方の債務整理に関しては,注意すべき点が色々とありますので,どの手続を取るべきかは,個別に判断せざるを得ません。 法律事務所ロイヤーズ・ハイには,債務整理に長けた経験豊富な弁護士が複数在籍しておりますので,タクシードライバーの方が,債務を整理したうえで引き続き仕事を続けられるよう,一番よい方法を選択して手続させていただきます。 タクシードライバーの方で借金にお困りの方は,債務整理を取り扱う大阪・難波(なんば)・堺市の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。