自己破産によって全ての借金の返済義務が無くなることには非常に大きなメリットがあります。その反面、家や自動車などの高額な財産を手放すデメリットも大きいです。
一方、自己破産のデメリットについて誤解を受けている部分も多く、多くの方がデメリットと思っていても実際にはデメリットではないものもあります。
今回は、自己破産のデメリットではないものと本当のデメリットについてご説明しますので、自己破産でどのような影響があるのかをハッキリさせておきましょう。
自己破産に対する誤解|実際はデメリットではない部分
まずは自己破産に関して多くの方がデメリットとして思っている部分について回答します。自己破産のデメリットと思っていた部分でも意外に影響ないこともありますので、思い当たることがあれば参考にしてください。
周りに自己破産の事実を知られる?
自己破産をすることで官報に掲載されます。官報は誰もが観覧できる機関紙です。ただし、官報を定期的に観覧している一般の人はほぼいないので、自己破産することをこちらから打ち明けなければ知られることはほぼないでしょう。
一方、同居する家族や保証人の方には後述するデメリットによる影響が考えられますので、事前に話しておくことをおすすめします。
会社を解雇される?
会社の人に自己破産の事実を知られることもほぼないので、そのまま働き続けられることがほとんどです。仮に知られたとしても、自己破産をしたことが正当な解雇理由にならないケースが多いです。
一方、後述する一部の職業には制限がありますので、業務に制限が出たり一時的に離職する必要も出てきます。
家族に迷惑をかける?
家族の方が保証人になっていなければ、代わりに借金の返済を迫られるようなことはありません。
ただし、生活を共にする家族がいる場合、自己破産によって家や車などを失うことでの影響が考えられます。
財産をすべて失う?
自己破産をしても全ての財産を失うわけではありません。99万円までの現金や生活に必要な家具/家電など、最低限の財産は手元に残ります。
《自己破産で手放す財産》
- 現金(99万円超)
- 預貯金(20万円超)
- 持ち家
- 車
- 高額な家具/家電
- 保険金
- 退職金
「自己破産して無一文、生活もままならない…」という状況に陥るわけではないのでご安心ください。
賃貸で家を借りられない?
自己破産によって自宅(持ち家)は失ってしまいますが、賃貸契約ができなくなることはありませんので、ご安心ください。
ただし、信用情報機関の事故情報に登録されることで、保証会社の審査に通らないことは考えられます。保証会社を通さない物件を選ぶなどの対応が必要なケースが出てきます。
海外旅行や海外出張に行けない?
自己破産をしてもパスポートに影響はありません。出張や旅行などで海外に行けなくなることはありませんので、ご安心ください。
ただし、自己破産手続き中で破産管財人が就いている場合には、裁判所から事前許可をもらう必要があります。
選挙権を失う?
選挙権は国民に保障された権利の1つです。自己破産をしても選挙権を失うことはありません。
生活保護を受けられない?
自己破産をした方でも生活保護の受給条件を満たしていれば、他の方と同様に生活保護を受けることが可能です。むしろ、支払能力がなくて自己破産をするわけですから、生活保護が必要な方も多いでしょう。
ただし、生活保護費を借金返済に充てることはできません。
自己破産による実際のデメリットと注意点
次に、実際に自己破産によるデメリットをご紹介します。「財産を失う」以外にもいくつかのデメリットもありますので、しっかり把握しておきましょう。
高額な財産を手放すことになる
自己破産は、破産者が持つ財産を換金して債権者に配当することで返済義務を免れる手続きで、家や車などの高額な財産は手放すこととなります。
《自己破産で手放す財産》
- 現金(99万円超)
- 預貯金(20万円超)
- 持ち家
- 車
- 高額な家具/家電
- 保険金
- 退職金
5年以上借り入れができない
自己破産手続き開始によって、信用情報機関の事故情報として登録されます。いわゆる『ブラックリスト入り』することになりますが、これにより以下の影響が出ます。
- 新たな借り入れができない
- クレジットカードを使えない/作れない
- ローンを組めない
自己破産によるブラックリスト掲載期間は5~10年です。少なからず生活に不便に思う部分は出てくるでしょうが、ある意味「強制的に借金ができなくなる」と前向きに捉えることもできます。
官報に掲載される
自己破産の手続き開始によって官報に掲載されます。上でお伝えのように、実際に官報を細かくチェックしている方はほぼいないので、「官報をきっかけに知人に自己破産を知られる」心配は不要でしょう。
一方、闇金業者も官報を見ており、「うちでは融資できます」などと闇金の営業を行われる危険性が出てきます。闇金からの連絡があっても必ず関わらないようにしてください。
保証人に影響が出る
自己破産して破産者の免責許可がされたとしても、保証人が付いている債務に関しては保証人に請求が行われます。
独断で自己破産しても保証人の方に影響を及ぼすことが考えられますので、保証人が付いている債務を自己破産する場合には、保証人の方ともきちんと話し合いを行った上で自己破産するかどうかを決めましょう。
一定期間就けない職業がある
自己破産をすることで、一部の職業では一定期間仕事に就けないものがあります。
- 士業
- 金融業(生命保険外交員/貸金業など)
- ごく一部の公務員
- 警備員
- 古物商など
上記の職業では自己破産による職業制限が考えられますので、特に慎重になるべきでしょう。
ただし、自己破産後もずっと仕事ができなくなるわけではなく、基本的には自己破産手続きが行われている期間の約半年となります。
税金などの支払い義務は残る
自己破産によって免責を許可してもらえれば全ての債務の返済義務がなくなりますが、一部の支払いは債務ではないので支払い義務が残ります。
- 税金
- 社会保険料
- 罰金
上記の国に対して支払う(納める)お金に関しては、たとえ自己破産をしても免除はされません。
まとめ
自己破産は、免責許可を得られれば全ての借金免除となる非常にメリットが大きい手続きです。しかしその反面、家や車を手放すなどデメリットも大きいと言えます。
一方、デメリットに関しては誤解を受けている部分も多く、自己破産を敬遠する要因になっていた方もいたと思います。
今回、デメリットとデメリットではない部分についてしっかりご説明しましたので、ご自身の状況に合わせて、「自己破産した方が良いのか?悪いのか?」を判断する参考にしていただければと思います。
ご自身だけで考えてもなかなか答えが出ない場合もあると思います。その場合は、自己破産に精通した弁護士に相談しながら決めていくことをおすすめします。