【弁護士向け】弁護士は、売上では評価できない経験も積みましょう(代表弁護士 田中今日太)
こんにちは。
弁護士の田中です。
さて,本日は,特に中途弁護士向けの内容になります。
事務所の規模が徐々に大きくなってきたせいか,ありがたいことに中途弁護士の方から応募をいただくことが増えてきました。
応募いただく方に,ご自身に合う事務所を探していただきたいと考えておりますので、
ロイハイでは「(考えや相性が)合うか合わないか」を大切にしています。
詳しくは,是非、以下の記事をご覧ください。
では,本題に入っていきましょう。
よく,弁護士の間では,①職人的要素と②経営的要素の議論が巻き起こります。
つまり,弁護士は,事件処理をする(事件処理にこだわる)という意味において「職人」であり,他方で,自営業者という意味において「売上」(サービスも含めて)を考えなければならない立場であるため「経営者」でもあります。
勤務弁護士の場合には,そこまで経営について考えなくてよいため,①の要素が強いことが多いです。
他方で,独立して経営をしている弁護士の場合には,②の要素も大切になります。
経営している弁護士の場合に,自分一人,あるいは少人数規模で経営している場合には,経営者弁護士自身も事件処理に大きく関わるため,①の要素は重要ですが,
他方で,事務所規模が大きくなるにつれて,②の要素の比重も大きくなっていき,最終的には①を捨象して②の要素に振り切ってしまう,という方もおられます。
ここで,①の要素を追求しすぎると,事件処理に時間をかけすぎてしまい,売上をあげることができず,経営的に厳しくなるということがあります。
経営が厳しくなれば,自らの生活が経済的に不安定になり,それこそ逆に事件処理に集中できない環境になってしまいます。
他方で,②の要素を追求しすぎると,経済合理性を優先するあまり,時間や手間暇がかかる割に売上につながらない案件(つまり利益率の低い案件)をそもそも受任しないか,受任したとしても事件処理に時間をかけない,という方向に働きます。
これが過ぎると,顧客満足は得られません。
つまり,①と②の要素のいずれかの要素を追求しすぎると,デメリットが生じることになります。
このような観点から,弁護士業をするにあたっては,①と②のバランスをよく考えて行かなければなりません。
ロイハイは,弁護士も事務局も増えて約30名ほどの規模に成長してきました。
その中で,私が①と②のことで思ったことを言うと,
実に「難しい案件,手間暇のわりに売上につながらない案件の方が,自分を成長させてくれたな」と感じます。
また「こうして成長させてくれたからこそ,今の自分がある。」とも思います。
難しい案件や手間暇のわりに売上につながらない案件は,やっている間は苦労しますししんどいことも多いのですが,やり終わった後は,強い達成感と自己成長を得られます。
何が言いたいかというと,難しい案件,手間暇のわりに売上につながらない案件も,
つまり,「売上では評価されない案件」であっても,「自己成長のために経験を積んでおくべきだ」ということです。
なぜかというと,②の要素を強くしすぎて経営合理的に考えて,そのような案件を避け続けていると,なんでもかんでも艱難苦難を避けることになり,忍耐力や精神力が育まれません。
これらが育まれないと,いざやったことのない新しい事件に対応する気力を失ったり,楽をすることばかりを考えてしまい,
普通の案件(難易度が普通であったり,手間暇もそこまでかからず一定の売上が期待できる事件)の事件処理でも,楽をしてしまいかねませんし,
仕事のやりがいを失ってしまうことがあるからです。
つまり,②の要素を強くしすぎると,①の職人的要素と相反してしまい,仕事自体のやりがいを見失ってしまうということです。
(私は,これが経済的合理性を追求することの多い,新興系法律事務所における大きな問題点の一つだと思います。)
ですから,①の職人的要素は,今のロイハイになるにあたって必要不可欠な要素であったし,今後も必要不可欠な要素であり続けるでしょう。
なお,弁護士の仕事のやりがい(主に職人的要素)についても書いたブログがあるので,そちらもご覧ください。
他方で,①の要素を強くしすぎると,自己成長のため,やりがいのためとして,あえて難しい案件,手間暇のわりに売上につながらない案件ばかりをやってしまうことになります。
しかし,このような事件「ばかり」を対応していると,時間がいくらあっても足りなくなりますし,精神的にも辛くなります。
そんなことを続ければ,経営が苦しくなり,自分の生活が経済的に追い詰められて,結局のところ,良い事件処理ができなくなります。
ですから,①と②のバランスが大切であるということです。
私は,中途弁護士の方と面接をする際に,「今の(以前にいた)事務所では,売上でしか自分を評価してくれない」という転職理由を聞くことがあります。
私は,これは,その事務所が②の経営的要素を強くしすぎたことによる弊害なのだろうと思います。
せっかく弁護士になったのに,「売上でしか評価されない」というのは残念なことです。
経営者弁護士は,弁護士に①職人的要素が必要であることを,働いてくれる従業員弁護士のためにも忘れてはならないと思います。
他方で,経営者弁護士は,①の要素に流されすぎず,自身と従業員の「生活」を支えるためにも,②の経営的要素も忘れてはならないと思います。
なお,自身と従業員の生活を支えるための工夫の一つですが,以下のブログにちょっとだけ書いていますのでよければご覧ください。
さて,今回のブログの内容は,私自身にも常に当てはまる内容になりました(笑)
肝に銘じて邁進したいと思います。
どうか、転職活動をされている弁護士の方が、売上では評価できない経験を積んで、①と②のバランスを忘れずに、仕事のやりがいを持ち続けていただけるようお祈りしております。