交通事故 交通事故基礎知識 後遺障害
2023.10.06 2024.04.25

【まとめ】後遺障害とは?よくある4つのケースと認定されるメリット・デメリットを解説

【まとめ】後遺障害とは?よくある4つのケースと認定されるメリット・デメリットを解説
【まとめ】後遺障害とは?よくある4つのケースと認定されるメリット・デメリットを解説

後遺障害は,厳密には後遺症とは異なります。

交通事故後に何らかの症状が残れば,慰謝料などを請求したいと考えるのが通常です。

しかし,交通事故後に残った後遺症であっても,後遺障害と認められなければ,後遺障害に対する損害賠償請求は認められません。

そのため,どのような場合が後遺障害に当たるかが重要になります。

このコラムでは,交通事故の後遺障害についてご説明いたします。

目次

1 そもそも交通事故による後遺障害とは何か?

そもそも交通事故による後遺障害とは何か?

「後遺症」とは,病気や怪我の治療後も残る傷害や痛みをいいます。

これに対して「後遺障害」とは,交通事故を原因とする後遺症のうち,治療後も事故前の状態にまで完全に回復せず,残る症状を指します。

後遺障害の認定要件は,

⑴医学的にみて,交通事故を原因とする後遺症であること
⑵将来においても回復が見込めないこと
⑶労働能力の低下・喪失を伴うこと
⑷後遺症の内容・程度が自賠責保険の認定基準に該当すること

です。

後遺障害は14等級に分かれ,以下のページに記載があります。

国土交通省 自動車総合安全情報 自賠責保険ポータルサイト 後遺障害等級表

2 後遺障害よくある4つのケース

⑴交通事故によって頭を強く打ち,脳梗塞を起こした。事故後,物忘れがひどく新しい仕事を覚えることができない。

→高次脳機能障害といい,脳に重大な損傷を負い,高度な脳機能が傷害された状態をいいます。

⑵交通事故によって背中部分を打ち,脊髄を損傷した。事故後,手足が痺れる。

→脊髄損傷を原因とする後遺障害です。

脊髄は身体のあらゆる器官へ指令を伝えているので,脊髄を損傷すれば手足などに麻痺症状が出ることがあります。

⑶横断歩道を歩行中,車に追突された。事故後,首を動かすと痛い。

→「むちうち」と呼ばれる症状です。

交通事故の際,首に不自然な強い力がかかったことによる首の捻挫です。

衝撃を受けると,首が,鞭がしなるように動くことから,「むちうち」と呼ばれています。

⑷車で運転中,追突事故にあった。事故後,めまいがする。

→交通事故で頭部等を打撲すれば,めまいが起きることがあります。

めまいには,周囲がぐるぐる回る感じがする,身体がふらつく感じがするような症状の2種類があります。

3 代表的な後遺障害の種類と認定基準,等級

後遺障害の種類と,後遺傷害と認定される基準について,下記の症状を取り上げて解説いたします。

⑴高次脳機能障害

交通事故により頭部に衝撃が加わり,脳に損傷を負ったことにより生じます。

代表的な3つの症状

①認知障害

すぐに忘れる,新しいことを覚えられなくなった,不注意が多くなったなど

②行動障害

周囲の状況に合わせた適切な行動ができない,職場や社会のルールを守れないなど

③人格変化

気力の低下,衝動的になる,自己中心的になるなど

高次脳機能障害の認定基準

(ア)原因となる傷病を発症している
(イ)脳の損傷に関するCT,MRI,脳波などの検査結果が存在する
(ウ)頭部外傷後の意識障害が一定期間生じた
(エ)記憶障害や性格変化などの,高次脳機能障害によると思われる症状が現れている

高次脳機能障害である場合の等級と支払われる保険金

等級後遺障害自賠責基準の保険金(共済金)
(要介護の後遺障害)1級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの→食事・排泄・入浴など、生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要する。就労も不可能。4,000万円
(要介護の後遺障害)2級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの→自宅での日常生活に問題はないが、著しい判断力の低下や情動の不安定などがあり、外出することができない。食事、排泄、入浴などに、随時家族からの声かけや看視を欠かすことができない。就労も不可能。3,000万円
3級3号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの→自宅周辺を1人で外出できる。家族の声かけや、介助なしでも日常動作は行える。しかし、記憶力や注意力、新しいことを学習することなどが困難な状態のため、一般就労が全くできない。2,219万円
5級2号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの→単純作業だけであれば、一般就労は可能。ただし、新しい作業を覚えること、環境の変化で作業ができなくなることなどの問題がある。そのため,障害がない人よりも作業能力がかなり制限される。職場の方の理解や援助がない限りは就労がかなり厳しい。1,574万円
7級4号神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの→一般就労が可能で、かつ維持も可能。ただし、作業の手順が悪い、期限を忘れる、ミスが極端に多くなる等、障害がない人と同じ作業・条件で行うことはかなり厳しい。1,051万円
9級10号神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの→一般就労が可能で、かつ維持も可能。ただし、問題を解決していく能力に障害が残る。また、作業効率や作業持続力などに問題が出てくる。616万円

⑵脊髄損傷

脊髄には運動や感覚をつかさどる神経が多く含まれているので,脊髄を損傷すると,腕や手足の麻痺などの症状が現れます。

脊髄損傷の等級と認定基準,支払われる保険金

等級認定基準(後遺障害)自賠責基準の保険金(共済金)
(要介護の後遺障害)1級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの→①高度の四肢麻痺が認められる②高度の対麻痺(両上肢または両下肢の麻痺)が認められる③中等度の四肢麻痺または中等度の対麻痺で,食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要する4000万円
(要介護の後遺障害)2級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの→①中等度の四肢麻痺が認められる②軽度の四肢麻痺または中等度の対麻痺で、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要する3000万円
3級3号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの→軽度の四肢麻痺や中等度の対麻痺が認められるが、随時介護を要する程度ではない2219万円
5級2号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの→軽度の対麻痺が認められるものや、一下肢の高度の単麻痺が認められる1574万円
7級4号神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの→一下肢の中等度の単麻痺が認められる1051万円
9級10号神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの→一下肢の軽度の単麻痺が認められる616万円
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの→他覚的に神経系統の障害が証明されるもの224万円

⑶失明,視力低下

等級認定基準(後遺障害)自賠責基準の保険金(共済金)
1級1号両眼が失明したもの3000万円
2級1号一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの2590万円
3級1号一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの2219万円
5級1号一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの1574万円
7級1号一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの1051万円
8級1号一眼が失明し、又は一眼の視力が0.02以下になったもの819万円

⑷醜状障害

顔など日常露出する箇所・上肢・下肢に,その交通事故による外傷,やけど,手術などの傷跡が残る後遺障害をいいます。

醜状障害の等級と認定基準,支払われる保険金

等級認定基準(後遺障害)自賠責基準の保険金(共済金)
7級12号外貌に著しい醜状を残すもの1051万円
9級16号外貌に相当程度の醜状を残すもの616万円
12級14号外貌に醜状を残すもの224万円
14級4号上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの75万円
14級5号下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの75万円

⑸胸腹部臓器

呼吸器,循環器,腹部臓器,必尿器,生殖器に障害を残す場合です。

等級認定基準(後遺障害)自賠責基準の保険金(共済金)
(要介護の後遺障害)1級2号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの4000万円
(要介護の後遺障害)2級2号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの3000万円
3級4号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの2219万円
5級3号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの1574万円
7級5号胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの1051万円
7級13号両側の睾丸を失つたもの1051万円
9級11号胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの616万円
9級17号生殖器に著しい障害を残すもの616万円
11級10号胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの331万円
13級11号胸腹部臓器の機能に障害を残すもの139万円

参照:愛知県 高次脳機能障害って何だろう

なお,①交通事故が原因で高次脳機能障害になった場合,②麻痺が残ってしまった場合について,当事務所の次のコラムでご紹介しているので,ご覧ください。

交通事故が原因で高次脳機能障害になったので弁護士に相談したい

交通事故で麻痺が残ってしまったら?

4 後遺障害に認定されるとどんなメリットがあるのか

⑴後遺障害慰謝料を請求できる

後遺傷害慰謝料とは,交通事故による後遺障害に対する,被害者の身体的・精神的な苦痛を補償するために支払われます。

後遺障害が認定されると,後遺障害慰謝料の算定が可能です。

⑵後遺傷害逸失利益を請求できる

後遺障害逸失利益とは,交通事故を原因とする後遺障害によって労働ができなくなった度合に応じて,将来に得られるはずであった収入金額をいいます。

後遺障害が認定されると,後遺傷害逸失利益の算定が可能です。

⑶介護費用を請求できる可能性もある

後遺障害が残り,介護が必要となった場合の将来にわたってかかる介護費用を請求しやすくなります。

5 後遺障害に認定されるデメリットはあるのか

後遺障害に認定されるデメリットはありません。

強いて言えば,手続きに手間がかかるぐらいです。

6 後遺障害の認定を受ける方法

⑴事前認定(加害者請求)

事前認定とは,加害者が加入している保険会社に申請を任せる申請方法です。

以下のような手続きがとられることになります。

①症状固定
②後遺障害診断書を医師に作成してもらう
③保険会社に後遺障害診断書と同意書等を提出
④保険会社が後遺障害申請を行う
⑤調査
⑥結果が保険会社に送られる

加害者側の保険会社が手続きを行うので,被害者本人には手間がかかりません。

一方で,十分な資料・証拠を収集してくれず,後遺障害が認定されないおそれがあります。

⑵被害者請求

被害者請求とは,被害者(または代理人の弁護士)が行う申請方法です。

以下のような手続きがとられることになります。

①症状固定
②後遺障害診断書を医師に作成してもらう
③相手方保険会社が取得している申請に必要な書類の写しをもらう
④他に必要な書類などがあれば,書類を集める
⑤自賠責保険金請求書などの申請用紙に必要事項を記入し、資料一式と共に自賠責保険へ送る
⑥調査
⑦調査結果が自賠責保険に送られ、その内容に応じた等級認定の結果が出る

被害者が手続きを行うので,手間・時間がかかるおそれがあります。

一方で,提出書類を被害者が確認できるので,有利な資料・証拠を提出可能です。

また,先払い金や仮渡金を受け取ることができます。

7 後遺障害はいつ認定されるのか

後遺障害認定の審査に必要な期間は,約7割が30日以内,約1割が60日以内です。

そのため,ほとんどの場合,60日以内に審査が終わるといえます。

ただし,平均的な期間にすぎないので,後遺症の性質によっては認定期間が長引きやすい場合もあります。

参照:損害保険料率算出機構 自動車保険の概況 2022年度版 p37損害調査の所要日数

8 後遺障害が保険会社に認定されない場合の対処法

後遺障害が保険会社に認定されない場合の対処法

⑴異議申立をする

異議申立てをして,後遺障害等級認定の再審査を受けることが考えられます。

最初の審査で認定がされなかった理由を精査し,自分の主張を裏付ける証拠や資料を準備し,異議申立書を作成してから異議申立てを行いましょう。

回数の制限はありません。

⑵訴訟を起こす

後遺障害等級は損害保険料算出機構が決定します。

これに対して,訴訟では裁判所が判断するので後遺障害が認定される可能性があります。

9 弁護士を入れると何が変わるのか

弁護士を入れると何が変わるのか

ここまでのコラムを読んで,被害者請求で後遺障害認定の手続きを行いたいと考えた方がいらっしゃるかもしれません。

しかし,上述のとおり,被害者請求の方法をとれば,被害者ご本人にかかる負担が大きいです。

その場合,後遺症害認定の手続きを弁護士にご依頼いただければ,ご負担を軽減することができます。

また,後遺障害が保険会社に認定されなかった場合も,被害者ご本人で対応しようとすれば,ご本人にかかる負担が大きいです。

異議申立は,再度判断を求めるものなので,認定されなかった理由をしっかり分析して反論を考えなければいけません。

また,異議申立書に反論を記載するには,医学的・法的視点が必要なので,専門知識と経験を有する弁護士に任せることをお勧めします。

さらに,訴訟を提起しても必ず後遺障害が認定されるとは限らないので,訴訟を提起すべきかの判断は難しいです。

そこで,専門家である弁護士に依頼することが有効です。

10 まとめ

交通事故による後遺障害は,日常生活だけでなく,仕事に支障を与えるものです。

後遺障害は,症状が多岐にわたるうえに,認定基準も複雑です。

そのため,ご自分で後遺障害の認定手続きを行うなどの場合は,時間と手間がかかりますし,適切な認定が受けられない可能性もあります。

これに対して弁護士は,交通事故による後遺障害の認定の経験に長けているので,適切な認定結果を得られる可能性が高まります。交通事故による後遺障害で悩まれている方は,交通事故案件を多く取り扱い高い評価を得ている大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。

このコラムの監修者

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