2020.06.05 2024.11.15

自己破産申立前にやってはいけないこと7選

破産申立前にしてはいけないこと

自己破産を検討している方の中には、申立前に何かしてはいけないことがあるのではないか?と不安に感じている方もいらっしゃるでしょう。
実際に、破産申立前や自己破産の手続き中にしてはいけないこと・制限されることはあります。
具体的にどのような行動を取ってはいけないのでしょうか?
そこで今回は、破産申立前にしてはいけないこと・制限されてしまうことをご紹介していきます。
これから自己破産の手続きをしようと検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。

自己破産申立前にやってはいけないこと7選

自己破産の申立は裁判所によって手続きを進めていきますが、申立前に気を付けておきたい点があります。
まずは申立前にどんなことをしてはいけないのか、ご紹介しましょう。

1 破産手続き前の財産処分や名義変更

自己破産を行うと、自分が所有する財産の全てが「破産財団」が構成され、破産管財人に管理処分権が移ります。

難しい言葉なのですが、簡単に言うと、あなたの財産はあなたが勝手に処分できるものではなくなるのです。

あなたの財産は、処分されて、債権者に平等に分配されます。

例えば、不動産を所有していながら自己破産手続きを開始するとその不動産も破産財団に組み入れられてしまい、破産管財人に売却されて債権者に配当されることになります。

これらはあくまでも自己破産手続きが開始されてから行われるもので、手続き前に不動産を売却したい場合は破産直前期でなければ、自由に行うことが可能です。

破産手続き前は、財産を処分する行為が禁止されているわけではありません。
しかし、中には自分で処分をした後に借金返済に充てず、ギャンブルなどに使ってしまうケースもあるでしょう。
そこで、破産管財人(財産の管理・処分を行える権利を持っている人)は手続き前に行われた財産処分を帳消しにできる権限・否認権を使い、債権者に大きな不利益が被らないようにしているのです。

主に否認権が活用されるのは、「詐害行為」と「偏頗(へんぱ)行為」の2種類です。
詐害行為は、財産を処分したことで得たお金を債権者に返済せず、財産を減らそうとする行為を指します。
例えば、破産申立直前に所有していた不動産を誰かに贈与、もしくは安く売却して利益を得た場合、否認権が行使されてしまいます。
偏頗行為は、財産を処分して特定の債権者を優先して返済する行為を指します。
債権者への返済は基本的に平等に行われるため、親族に借金をしていてそれだけは早めに返済しようとすると、否認権が行使されて平等に分配されるのです。
また、偏頗行為は免責不許可事由に該当しており、自己破産が認められなくなる恐れがあります。
財産処分自体は悪い行動ではないものの、詐害行為と偏頗行為に注意しながら処分するようにしましょう。

なお、身近なところでは、メルカリなどの転売サイトで、自身の持ち物を売却する行為も、財産処分行為にあたりますので、注意が必要です。少額であればそこまで問題になることは少ないですが、破産手続中は、メルカリなどの利用も控えておくのが無難です。

2 財産隠し

自己破産手続きを開始すると生活に必要な最低限の財産は残るものの、それ以外の財産は基本的に全て破産財団になり、破産管財人に処分されてしまいます。
そのため、中には破産手続を開始する前に財産を隠そうとするケースも見られるのです。
しかし、破産手続き前に財産を隠そうとする行為は債権者に対して嫌がらせを行ったとみなされてしまい、「詐欺破産罪」に問われる可能性があります。
詐欺破産罪に問われると、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方と規定されていて、罪の中でもかなり重い内容です。
詐欺破産罪にあたるのは、財産を隠す行為だけではなく、自己破産でどうせ借金が帳消しになるからと新しく借金を増やしたり、財産をわざと傷付けて価値を落としたりするなどの行為も含まれます。
詐欺破産罪に問われれば免責不許可事由で自己破産ができなくなってしまうため、注意しましょう。

また、離婚して、財産を隠そうと考えられる方もおられるのですが、以下の記事をご覧ください。
自己破産をする際に,ずるいですが偽装離婚して,財産を隠すことができるのでしょうか?

3 弁護士に債務整理を依頼する直前に、高額な借金をすること

自己破産をすると、全ての借金がなくなることを知って、そうであれば、弁護士に破産を依頼する直前にできる限りお金を借りて、破産してやろう、と考える方も残念ながらおられます。

しかし、いくら自己破産をするからといって、弁護士に依頼する直前期に高額な借入をすれば、それが詐害行為にあたると判断されて、直前に借りて使用した分のお金を裁判所に納めるように言われたり、最悪、免責が不許可になるリスクがあります。

ですから、いくら破産をするしかない状況であっても、最後に借りれるだけ借りて遊んでやろう、という発想はやめてください。

なお、中には、弁護士に払う弁護士費用を、直前期に数十万円を借りてねん出しようという方もおられますが、同じ理由で辞めておくべきです。
また、そのようにして用意されたお金なら、まともな弁護士は受け取りませんし、悪質なクライアントであると判断して依頼を受けてもらえなくなりますので、注意しましょう。

4 弁護士に債務整理の依頼後に借金を返済する(偏波弁済といいます)

破産を依頼する直前期に新しい借金を作るのは悪質な行為とみなされますが、実は新しく借金を作る以外にも、弁護士への依頼後、受任通知が送付された後に、債権者に借金を返済する行為も控えなくてはなりません。
受任通知とは、依頼した弁護士が債権者に向けて「債務整理に着手した」と伝えるための通知を指します。
債務整理に着手したということは、借金を完済することが難しい状態だと債権者に伝えたことと変わりません。
それなのに、親族や取り立てが厳しい債権者に返済したとなると、ある債権者には返済して、ある債権者には返済しないという、返済の不平等が発生してしまい免責不許可事由に該当してしまうのです。

これを専門用語で、偏波弁済といいます。

受任通知の時点では自己破産を行うのか、それとも任意整理で大丈夫なのかは決まっていないケースもありますが、自己破産になる可能性も考えて借金返済は行わないようにしましょう。

5 浪費やギャンブル、投機投資

当然ではありますが、破産申立前に浪費やギャンブルなどを行ってはいけません。
浪費やギャンブルが原因で借金を作っていると免責不許可事由に該当し、自己破産ができなくなってしまいます。

ちなみに、浪費は、ご自身の収入に見合わない支出を意味しています。

そのため、客観的には、それほど高額な金額ではなかったとしても、自分の収入に見合わない支出をしている場合には、問題になる可能性があります。よく問題になるのは、飲食費、遊興費、趣味代、などです。

ギャンブルは、パチンコ、パチスロ、競艇、競馬、競輪などが典型的です。

それだけでなく、投機や投資も問題になります。例えば、著しく財産を減少させる行為として株式やFX、先物、バイナリーオプションなどもこれらに当てはまるため、破産申立前には行わないように注意してください。

6 クレジットカードや携帯電話の売却による現金化

よく問題になるのは、クレジットカードで、新幹線のチケットを購入して、金券ショップへ転売する行為です。

新幹線のチケットは、金券ショップで90%を超える金額で買取をしてくれます。

つまり、クレジットカードで新幹線チケットを購入すれば、90%以上で買取してくれるので、現金化できて、すぐにお金として使えることになりますね。

しかし、当然ですが、これらの行為は、換金する分の%が引かれていくことになるので、繰り返せば繰り返すほど損していくことになります。

また、最近では、携帯電話を複数台契約して購入して、それを転売して現金化するという方法も用いられることがあります。

こうした行為も極めて悪質であり、破産で免責が下りなくなるリスクが上がりますし、

時に犯罪にもなりうるので、くれぐれも注意しましょう。

7 スマホ決済

近年、スマホの電子マネーやスマホのキャリア決済が使用されることが増加しています。

しかし、例えば、スマホのキャリア決済で生活費を支払っている場合も、問題行為となります。

これは、キャリア決済を利用することで後払いをしているにすぎず、新たな借入と言えるからです。

特に、スマホ決済で10万円以上使用しており、その使途が十分に説明できない場合には、自己破産手続きが難航することもあります。

具体的には、使途の説明を求められ、十分に説明できなければ、管財人から浪費を疑われてその使用した分のお金を支払うよう求められるケースもあります。

スマホ決済は、うっかりやってしまうことがある行為ですので、注意しましょう。

自己破産の手続き中に制限されてしまうこと

破産申立を行ってからしばらくは破産管財人が財産を調査し、平等に分配するための方法を考えます。
結果が出るまでの間は手続きなどを行う必要はあるものの、基本的には生活に不便が生じることはありません。
ただし、制限されてしまうものもあります。

1 引越しや旅行

破産管財人の調査が完了するまで少し時間がかかり、引越しや旅行をしようか考える人もいます。
しかし、これらの行為は財産を隠そうとしたり、破産者が逃げたりする行為にもつながってしまうため、自己破産の手続き中には制限されてしまいます。
もしも引越しや旅行に出かけたい場合は、裁判所から許可を取らなくてはなりません。
ただし、引越しや旅行が制限されてしまうのは管財事件のケースのみで、同時廃止であれば自由に引越し・旅行が行えます。

2 一部の資格が取得できない

破産申立を行った場合、一部の資格が取得できなくなり、場合によっては職業にも就けなくなってしまいます。
これは資格制限と呼ばれるものです。
一生資格が取得できなくなったり、その職業に就けなくなったりするわけではありません。
基本的には自己破産が確定し、破産者ではなくなった時に復権されます。
ちなみに、就職・転職活動中に自己破産を行ったとしてもその情報が就職先にバレてしまうということはありません。
そのため、一時的に資格が取得できなくなってしまうものの、復権されればまた資格を取得できるようになるでしょう。

3 借入行為

破産を弁護士に依頼して受任通知を債権者に送ると、信用情報に登録されます。いわゆるブラックリストです。
ブラックリストに入ってしまえば借入ができなくなってしまいますし、クレジットカードの新規発行も行えません。
ローンを組むこともできなくなるため、自己破産を行ってからしばらくは自動車・住宅などを購入するのは困難になるでしょう。

自己破産申立前には弁護士と相談しましょう

自己破産申立前や申立中には様々な禁止事項や制限されてしまうことがあります。
初めて自己破産手続きをしようと考える人の中には、してはいけないことを間違えて行ってしまったらどうしようと不安を抱く人もいるでしょう。
そのような不安から解放されるためにも、依頼時、破産申立前、債務整理の段階で弁護士に相談することが大切です。
弁護士はあなたと破産管財人・裁判所の仲介に入ってくれる存在です。
もし弁護士の言うことを守らなかったり、約束を何度もドタキャンしたりすると、裁判所が提示した期日までに書類を出せなくなって免責不許可事由に該当する可能性もあるため、弁護士とは密に連絡を取り、指示があった場合は必ず応えるようにしましょう。

今回は自己破産申立前にしてはいけないこと、自己破産申立中に制限されてしまうことなどをご紹介してきました。
意外と禁止事項は多く、場合によっては罪に問われてしまう恐れもあります。
罪に問われれば自己破産ができなくなるだけでなく、刑罰によりさらなる負担を科せられてしまうため、今回ご紹介した内容を参考に、取ってはいけない行動をしていないか確認しましょう。

あなたが自己破産を検討される際に、この記事が参考になることをお祈りしております。

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