2020.07.22 2022.10.01

任意整理または債務整理で繰り上げ返済(早期返済)したり,ボーナス払いはできるのか?

任意整理または債務整理で繰り上げ返済(早期返済)したり,ボーナス払いはできるのか?

借入金やクレジットカードの利用代金等の支払が厳しくなってしまった際に取る債務整理の方法の一つとして,任意整理による方法があります。

任意整理は,裁判所を通すことなく債権者との直接の交渉をすることで,毎月の支払額を減少させることができることになりますが,そうは言うものの,やはり,毎月の支払を継続していかなければならない場合がほとんどですので,できれば,少しでも早く終わらせたいと思う方も多いのではないでしょうか?

任意整理で交渉をする際に,少しでも早く終わらせる方法がないかという点について,ご説明いたします。

任意整理(債務整理)とは?

任意整理とは,簡単にいえば,裁判所を介さずに,借入先の金融機関と直接和解交渉を行って,債務整理をすることであるといえます。

原則としては,取引開始時に遡って,支払済弁済額を利息制限法の上限金利で金利を再計算し,利息制限法の上限金利を超えた支払済の利息額(これを「グレーゾーン金利」という言い方をします。)を元金充当しすることで借入金元金を減額し,減額された借入金元金を今後元金のみで3年~5年で分割弁済していくという形で和解することになります。

このとき,支払済の利息額を元金充当して再計算したところ,元金を完済してさらに余分に払っていた場合には,いわゆる「過払金」となって,返還してもらえることになります。

平成22年6月の貸金業法の改正で,それ以降の借入や支払に関しては,グレーゾーン金利は発生しないことになりましたが,それまでに長期間借入と返済をしてきた場合には,過払金が発生する可能性もありますし,少なくとも元金は多少なりとも減少することになります。

任意整理のメリットとデメリット

任意整理のメリット

・和解成立後の支払が元金のみで確定される。

返済総額は確実に減ることになりますし,毎月の返済額,返済期間も軽減されることになります。また,支払額総額が確定することになりますので,完済までの予定が立ち,先の見通しが立てられることになります。

・弁護士等に依頼した場合には,督促等が止まる。

弁護士や司法書士に依頼して,受任通知を送ってもらえば,その後の督促や取り立てが止まりますので,精神的に追い込まれる状況を避けることができます。

・特定の債権者のみと和解することが可能である。

裁判所を介した自己破産や個人再生と違って,自分が希望する特定の債権者とのみ和解交渉をすることができますので,連帯保証人がいる債権者にはこれまで通りの支払を続けていくことで連帯保証人に迷惑をかけないで済むことになります。

・資格制限を受ける心配がない。

自己破産をした場合に受ける資格制限がないことから,仕事を一旦辞める等の必要がありません。

任意整理のデメリット

・原則として,残元金は支払わなくてはいけない。

自己破産であれば,手続後は一切支払をする必要はありませんが,任意整理の場合,過払金が発生している状態でなければ,再計算で軽減されたとはいえ借入金元金の残額は支払っていく必要があります。

・いわゆるブラックリストに載ることになる。

任意整理を行うと,信用情報機関にその旨の事故情報の記録が残ります(これをいわゆる「ブラックリストに載る。」というのです。)ので,その記録が抹消されるまでの期間は,クレジットカードを作ったり,住宅ローン等のローンを組むことはできなくなることになります。

・債権者が和解に応じなければ成立しない。

弁護士や司法書士のような専門家が介入して任意整理を行う場合,債権者側は利息を再計算した元金のみの支払で合意してくれることがほとんどではあります。

しかしながら,債務者はこちら側が提示した和解案に同意しなければならない法的義務はありませんので,債権者が提案した和解内容に合意してくれなければ,最終的には自己破産や個人再生をせざるを得なくなる可能性も否定できません。

ボーナス払い併用の任意整理ができる?

任意整理による和解交渉の結果,和解が成立した債権者には和解書(合意書)記載のとおりに支払を継続していくことになりますが,少しでも早く完済するために,ボーナス払いを併用した和解ができないかということを考えられる方もおられるかと思います。

確かに,住宅ローンの支払やクレジットカードでの買物等でも,ボーナス時に追加して支払うようにしたり,ボーナス一括払い等の支払方法を取ることができますので,そのような形で支払ができれば,より早い時期に完済することは可能と思われます。

方法としては,可能ではありますが,任意整理においてボーナス払い併用の和解案を提案することはお勧めできません。

確かに,予定どおりにボーナスが支払われるのであれば,問題はないとも言えますが,民間企業の場合,業績悪化でボーナスがカットされたり減額されたりする可能性があることは否定できませんので,絶対確実でないことを和解条項に盛り込むことは危険であると言わざるを得ないからです。

もし,ボーナス時に加算して支払をする和解を締結した場合に,ボーナスが予定どおりに支払われなければ,その月の支払のために,家計なり他の債権者への支払なりにしわ寄せがいくことになりますので,それがきっかけで支払ができなくなるようなことになっては本末転倒であると言わざるを得ません。

また,任意整理をして支払を続けている状況なのですから,新たな借入をすることはまずできませんので,借入をして不足したボーナス払いの加算金に充てることもできません。

何より,毎月の支払に窮して,返済のために借入するようなことを繰り返してきたからこそ,任意整理をしなければならなくなったというのに,同じことを繰り返すようなことを考えてしまうのであれば,任意整理をした意味がなくなってしまいます。

そこで,通常通り毎月毎月支払っていく予定の和解案を成立させ,毎月の返済を確実に行い,ボーナス等の一時金は,突発的な事項に備えてプールしておくことをお勧めいたします。

任意整理で繰り上げ返済をすることは可能であるか?

前述のとおり,ボーナス払い併用の任意整理は決してお勧めするものではありませんので,ボーナス等の一時金については,突発的なアクシデントに備えてプールしておくべきものであろうと思います。

ところで,任意整理での和解成立後,順調に返済を続け,それなりに貯金等もできているのであれば,まとまった資金を毎月の返済に加算して支払ういわゆる繰り上げ返済をすることで,弁済期間を短くすることができるのではないかと考えられることもあるかと思います。

では,任意整理後の支払において,繰り上げ返済が可能かどうかという点についてですが,これに関しては,債権者が繰り上げ返済の金額や時期に関して,合意してくれるのであれば,合意した金額を繰り上げ返済することは可能です。

債権者側としても,少しでも早く回収できるに越したことはないわけですから,債務者側から約定より多い金額を支払いたいと申し出た場合には,その申し出を断られることはまずないと考えられます。

特に,残債務全額を一括で支払うという内容の繰り上げ返済の申出に関しては,その1回をもって完済することになりますので,通常,債権者側から断られることはないと思っていただいて構わないものと考えます。

任意整理で繰り上げ返済をする場合の注意点とは?

任意整理後の支払いに関しては,それまでの支払いと比較すると毎月の支払の負担も軽くなっていますので,日常生活での出費の見直し等を併せると,毎月いくらかの貯蓄も可能となることは当然あり得る話です。会社勤めをされている方で,数年間支払を続けてこられたのであれば,ボーナス等の一時金については,いざというときの資金として貯蓄しておくことも可能と考えられます。

そのうえで,ある程度まとまった金額になった際に,繰り上げ返済をすれば,それだけ支払うべき残額も減少し,完済というゴールが近くなることで気分的にもより前向きになれるというメリットがあることは事実ですので,まとまった貯蓄をもって繰り上げ返済に充てるということを検討することは,決して悪いことではありません。

しかし,前向きな考えに水を差すようで申し訳ないのですが,繰り上げ返済をすることは一旦考えから外されることをお勧めいたします。

任意整理を行ったということは,一度は約定どおりの支払が困難になったということですから,少なくともその時点においては,あなたの弁済計画を含めた資金繰りに無理があったと言わざるを得ません。

あくまで,現状で余裕があるのは,任意整理によってリスケジュールした金額を支払えばよいということによる結果に過ぎないのです。

そうであれば,現状で余裕がある状態ならば,万一の事態に備えてその資金はプールしておくということを,まず第一に考えるべきであると思います。

少なくとも,任意整理後の支払を続けている状態で,新たな借り入れはできませんし,完済したところで,事故情報の記録が抹消されるまでには数年間かかるわけですから,急な出費等が生じた場合に対応ができなくなりかねません。

そのような場合には,それこそ自己破産等の手続を検討せざるを得なくなる可能性も出てきかねません。

そのような事態が生じかねないということも十分承知したうえで,繰り上げ返済を考えると言われるのであれば,繰り上げ返済自体がいけないことではありませんし,早く完済することを目指すことが悪いことではないというのもそのとおりです。

ですから,万一の事態には家族の収入や貯蓄等で対応可能であることから,繰り上げ返済を検討するということであれば,ボーナスを貯めておいて,残債務を一括して返済できる時になれば,一括して返済すればよいと思います。

しかしながら,状況的には石橋を叩いて渡るくらいの慎重さをもって事に当たるべきものであると考えますので,特にご家族等とも話し合われたうえで,本当に余裕があるといえるのでなければ,早急に繰り上げ返済を考えることは避けられるべきと考えます。

任意整理で分割弁済を続けている中で,繰り上げ返済をすることを考えるのであれば,そこまでの慎重さをもって考えていただきたいと思います。

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