「明日からもう来なくていい」「お前は使えないからクビだ」などと、一方的に解雇を告げられたという事案は珍しくありません。これら一方的かつ明確な理由が無い解雇は、「強制解雇」と呼ばれることがあります。ここで問題になりがちなのが「もらっていない給料(未払い賃金)」です。本来、働いた分の給料は支給されて当然のものであり、未払いであることは許されないのですが、「クビになったのだから…」と諦めてしまう方が大勢いらっしゃいます。しかし、相応の手続きを踏めば、未払いの給料は取り戻すことができるのです。
解雇されても未払い給料はもらえる!
まず、大前提として、未払い給料は辞めた後でも請求できます。これは強制解雇であっても同様です。ここでいう未払い給料とは「基本給」だけではなく、残業代や諸手当、ボーナス、退職金、などを含みます。さらに、未払いの期間に対しての利息も請求可能です。
もし、まだ受け取っていない給料があるのならば、まずは内容証明郵便で未払い給料を請求してみましょう。このとき、次のような内容を明記します。
- ・賃金の種類(基本給、諸手当、残業代、ボーナス、退職金など)
- ・未払いの金額
- ・未払いの理由の説明を求めていること
- ・支払期限(1週間後~で自由に設定)
- ・振込先口座
請求しても仮に支払いが無ければ労働基準監督署に「労基違反」として相談してみてください。このとき、就業規則や給与明細、タイムカードなども持参すると、話が進みやすくなります。
「強制解雇=不当解雇」である可能性
日本では、「解雇」に関する意識がやや曖昧だといえます。本来、解雇は簡単にできることではなく、正当な理由が無く一方的に解雇できることは稀です。会社側には、「解雇権」があると理解されていますが、客観的かつ合理的な理由や、社会の一般的な常識に照らして問題ない理由がなければ解雇は無効になります。
これは、労働者側の能力・適性の問題から起こる「普通解雇」だけでなく、いわゆる整理解雇(業績悪化による解雇)や懲戒解雇(非行や法律違反による解雇)であっても変わりありません。
“労働契約法 第16条 (解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。”
つまり「明日から来なくていい」「お前はつかえないからクビ」という言い回しには、しっかりとした根拠が必要なのです。この根拠がはっきりしていなければ、「不当解雇」に該当する可能性があります。このとき重要になるのが、解雇を決定づける書類(解雇通知書や解雇理由証明書)です。特に解雇理由証明書は、不当解雇に該当していないかを確認するために重要な書類ですので、会社側に請求して準備しておいてください。不当解雇に該当すれば、解雇自体が無効になり、労働者としての立場や賃金(未払い給料)が守られることになります。
不当解雇であれば交渉中の給料も発生
もし、強制解雇が不当解雇に該当していれば、不当解雇の確認を行っている間の給料も請求できます。なぜなら、不当解雇であるがゆえに解雇は無効であり、労働者としての地位(つまり社員やアルバイトとしての身分)が継続するからです。ちなみに、不当解雇であることを争っている最中の給料は、平均賃金の60%です。ここでいう平均賃金とは「直近3か月間の賃金総額÷直近3カ月間の勤務日数」になります。
未払い給料に加えて「慰謝料」の請求ができる可能性も
もし不当解雇に該当した場合で、特に違法性が強いケースであれば、未払い給料とは別に「慰謝料」が請求できます。全ての不当解雇が慰謝料請求の対象になるとは限りませんが、内容次第では弁護士へ相談すべきでしょう。ちなみに慰謝料の相場は50~100万円程度です。パワハラやセクハラを伴った不当解雇であれば、慰謝料請求を視野に入れて動いてみてください。
粘り強い交渉と地道な証拠集めが重要
強制解雇時の未払い給料に対する請求自体は、それほど難しくないでしょう。しかし、実際にすぐ支払ってくれるとは限りません。また、解雇自体が無効(不当解雇)であることを認めさせるには、証拠を集めたうえで会社と交渉・裁判をしなくてはならず、多大な労力を要します。
こういった交渉や裁判を含め、最後まで徹底したサポートが可能なのは弁護士だけです。本来受け取れる給料や守られるべき地位を手放さないために、弁護士への相談を検討してみてください。