2019.09.17 2022.12.20

同一労働同一賃金とは?

同一労働同一賃金とは?

近年「格差社会」という言葉が世の中を目にする機会が増えています。この言葉は様々な意味を持って使われますが、頻繁に目にするのは「収入」や「待遇」についての話題ではないでしょうか。同じ職場で同じ業務をこなしているにもかかわらず、賃金や給料が違う。こういった格差を解消するため、2020年から「同一労働同一賃金制度」が本格的に開始されます。一体どういった制度で、どのような対応が必要なのでしょうか。

政府主導で始まる「同一労働同一賃金」

2020年4月から、厚生労働省の主導のもと「同一労働同一賃金制度」の運用が始まります。同一労働同一賃金制度とは「同一企業・団体において、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間で、不合理な待遇差を設けることを禁止する制度」です。少し極端な例ですが、同じ会社で同じ業務を行っているAさんとBさんがいるとしましょう。

Aさんは正社員待遇で月給30万+賞与2か月+福利厚生有り、一方のBさんは有期雇用契約で時給1500円のみ、といった格差が原則として禁止されるということです。ちなみに、正規雇用労働者と非正規雇用労働者とは、次のような人々です。

  • ・正規雇用労働者…期限の定めのない雇用契約を結んでいるフルタイム労働者(いわゆる正社員)
  • ・非正規雇用労働者…期限の定めがある雇用契約を結んでいる労働者、パートタイム労働者、派遣労働者など

これまでも、同一労働同一賃金という言葉はありましたが、日本では法律上の縛りが弱く、待遇格差の制限はごく一部に留まっていました。すでに国際労働機関(ILO)では、同一労働同一賃金の原則を基本的人権のひとつとして掲げているなど、国際的には「あって当然」というレベルのルールとして知られています。

「同一労働同一賃金」に関する法改正の内容

今回の同一労働同一賃金に関して、改正された法律は以下3つです。

  • ・労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)
  • ・短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)
  • ・労働契約法の一部

また、改正のポイントを簡単にまとめると次のようになります。

不合理な待遇格差を禁止するための「均衡待遇規定」および「均等待遇規定」の明確化
職務内容や配置変更などで不合理な待遇差や差別的な取扱いを禁止します。

派遣元企業への規制
派遣労働者の待遇については、派遣元企業に対し以下2つの方式のうち、いずれかを確保することが義務化されます。

  • ・派遣先の労働者との均等・均衡待遇
  • ・一定の要件を満たす労使協定による待遇

労働者に対して「待遇の差」を説明する義務
「自身の待遇について企業側に説明を求める権利」が法律上明確になりました。
今後は、非正規労働者からの待遇差に関する質問に対し、雇う側が回答する義務を負うことになります。

行政による助言・指導・解決手段の強化
労使間の争いについて、都道府県労働局が無料で紛争解決手続きを行うようになります。
また行政ADR(ADR=裁判外紛争解決手続)の導入が開始され、裁判以外での紛争解決手段が強化されます。

同一労働同一賃金で行うべき対応

同一労働同一賃金の適用開始は、大企業が2020年4月から、中小企業は2021年4月からです。これをうけ、労使それぞれで行うべき対応は次のとおりです。

企業・事業主側(雇う側)

  • ・労働者の雇用形態の確認
  • ・正社員と非正社員との待遇差の確認
  • ・待遇がある場合はその理由が合理的であるかの確認
  • ・待遇差に関する合理的理由を説明できる体制が整っているかの確認
  • ・不合理な待遇差の解消

労働者側(雇われる側)

  • ・同一企業、団体において同じ内容の業務を行っている正社員との間に待遇差(基本給、賞与、時間外手当や交通費など)がないかを確認
  • ・正社員と同様の昇給率を確認
  • ・派遣社員であれば「派遣元企業との間で待遇差に関する労使協定が締結されているか」「派遣先企業から待遇差に関する情報提供がなされているか」を確認
  • ・もし待遇差がある場合には、その理由を企業・事業主に質問する
  • ・不合理な待遇差については専門家へ相談する

今回の改正では罰則規定は設けられていないものの、不合理な待遇差は人材確保のうえで著しい障害になり得ます。企業・事業主側はできるだけ早く労働者の雇用形態を把握し、適切な人事制度の構築に踏み切るべきでしょう。まずは法改正の詳しい内容と、とるべき対応を具体化するため、弁護士への相談をおすすめします。

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