2019.09.24 2022.12.20

会社が解雇できる場合と不当解雇の判断基準

会社が解雇できる場合と不当解雇の判断基準

突然クビを言い渡され、疑問を感じつつも退職してしまったという経験はありませんか?
本来、会社側は労働者を簡単に解雇できないものです。したがって、実は不当解雇に該当していたという例は少なくありません。まず、自身の身に降りかかった解雇が、本当に有効であるかどうかをチェックしてみましょう。ここでは、会社が解雇できる場合と不当解雇の基準について解説します。

会社が解雇できる場合とは?

解雇には大きく2つの種類があり、それぞれに条件があります。

普通解雇
遅刻欠勤が著しく多い、勤務成績が悪い、適性や能力に欠ける、その他違反行為などは普通解雇の対象になります。また、普通解雇の中には会社の業績悪化や経費削減を理由とする「整理解雇」も含まれます。いわゆるリストラですね。

懲戒解雇
懲戒解雇は、「企業の秩序を乱した」「法に抵触する行為」などを理由とし、いわゆる懲戒処分(違反行為に対する制裁)の一環として行われます。懲戒解雇は、労働者に対する制裁の意味合いが強く、能力・その他個人的な事情・経営上の事情などを理由とする普通解雇とは別のものと考えてください。

解雇が有効とみなされるための条件

解雇が有効とみなされるための条件については、労働契約法第15条および16条に規定があります。

“労働契約法 第16条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。”

“労働契約法 第15条 (懲戒)
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。”

これら2つの条文から、普通解雇、懲戒解雇ともに「客観的に合理的な理由」「社会通念上相当であること」が必要であるとわかります。

もう少し具体的に解説すると、普通解雇の場合は

  • ・解雇の理由が第三者の視点から見て合理的であること
  • ・理由が合理的であったとして、それが解雇に相当するほどのものであること

という2つのハードルをクリアしてはじめて解雇は有効ということになります。

また、整理解雇については、普通解雇の条件に加えて

  • ・人員削減の必要性
  • ・雇用者側が解雇を回避するために努力したこと
  • ・整理解雇の対象となる人選が合理的であること
  • ・手続きが適切であること(労組との協議や説明義務を果たしていること)

なども必要です。

さらに懲戒解雇については、

  • ・就業規則に「懲戒解雇事由」が定められており、明示・周知されている
  • ・懲戒解雇を言い渡す前に、労働者に対して弁解の機会を与えている

といった事柄も条件に含まれます。

このように解雇には、それぞれに厳格なルールが定められています。経営者や上司の勝手な思い込みや主観・判断による解雇は無効(不当解雇)である可能性が高いため、まずはこれらの基準に照らして適切であるかをチェックしてみましょう。

不当解雇に当たるケースとは?

では、ここまでの内容を踏まえたうえで「不当解雇に該当するケース」について解説します。不当解雇とは、解雇条件を満たしていなかったり、解雇の手続きが正確ではなかったりするにも関わらず、雇用者が労働者を一方的に解雇することです。具体的には、以下のようなケースで不当解雇と判断される可能性が高いでしょう。

普通解雇

  • ・上司の意見に反論したら解雇された
  • ・勤務態度が悪かったものの、事前の説明や話し合いがないまま突然解雇された
  • ・妊娠、ケガによる入院、通院などを理由に解雇された
  • ・労働組合での活動を理由に解雇された
  • ・残業命令や休日出勤に従わないとして解雇された
  • ・学歴、身分、性別などを理由に解雇された

整理解雇

  • ・経営不振によるリストラを理由に解雇を言い渡されたのち、同じ企業が求人広告を出している
  • ・リストラを迫られるほどの経営不振に陥っている証拠が乏しい

懲戒解雇

  • ・逮捕後に冤罪であることが分かり、不起訴処分であるにもかかわらず解雇された
  • ・経費着服、顧客情報の持出などを疑われ、確固たる証拠がないまま解雇された

こういったケースでは不当解雇を主張し、本来であれば受け取っていたはずの賃金や退職金などの支払いを求めることができます。

不当解雇は「証拠」の確保が重要

不当解雇を主張するためには、何よりもまず証拠を集めなくてはなりません。ここで言う証拠とは、次のようなものです。

  • ・雇用契約書や就業規則
  • ・解雇通知書
  • ・解雇理由証明書
  • ・人事評価書、勤務成績表、
  • ・タイムカードや勤怠システム入力システムの履歴
  • ・解雇を言い渡されたときの録音やメールなど
  • ・仕事に関するメール
  • ・賃金規定、給与・賞与明細
  • ・解雇に関して会社側とのやり取りしたことがわかる書面

特に「解雇理由証明書」は、「自発的な意思による退職ではなく、会社側からの解雇であること」を証明するための書類です。会社側に請求しなければ発行してもらえないことが多いため、解雇通知書とは別に請求するようにしましょう。
ちなみに、労働者からの請求に対して解雇理由証明書を発行することは、会社側に課せられた義務です。これについては、労働基準法第22条に規定があります。

“労働基準法 第22条 (退職時の証明)
1.労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。”

解雇に関するトラブルは、スタートの時点で労働者側が不利な立場にあることが大半です。
会社側としては、最低限の対応・情報提供のみを行いがちです。そのため、単独では証拠を揃えられないといったケースも珍しくありません。少しでも解雇に納得がいかないのであれば、まずは証拠の確保や交渉のプロセスを含め、専門家である弁護士への相談を検討してみてください。

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