2019.09.26 2022.12.20

解雇通知書を受け取ったらまずどうすべき?

解雇通知書を受け取ったらまずどうすべき?

日本では雇用者が労働者を解雇するとき、「解雇通知書」を発行することがあります。あまり目にすることのない書類ですから、一方的な内容にショックを受ける方も少なくないでしょう。しかし、解雇通知書は、それだけで正当な解雇を証明しているわけではないのです。解雇が正当なものかどうか(有効であるかどうか)は、さまざまな情報を確認しなければわかりません。そこで、「解雇通知書を受け取ったときにやるべきこと」を整理して解説します。

解雇通知書とは何か?

まず解雇通知書について簡単に解説します。解雇通知書は、「解雇する旨とその日付」を労働者に通知する書類です。内容としては、「○月○日をもって雇用契約を解除する」といった文言が書かれているでしょう。また、「解雇事由」も併記してあるのが一般的です。この解雇事由がよくわからず、「理由ははっきりしないがクビになった…」と落ち込んでしまう方が多いようです。

解雇通知書は「単に雇用者側が労働者を解雇することの意思表示」に過ぎません。これだけで解雇が正当であることを決定づけるものではないのです。当然、解雇自体が正当なものではない可能性も含まれています。そこで、解雇通知書を受け取ったときに取るべき行動を整理しておきましょう。

解雇通知書を受け取ったときに取るべき行動

解雇通知書を受け取ったら、まず次の3つの事柄を確認してください。

解雇事由が正当なものか

ここで重要なのは、解雇事由が「客観的に合理的」であり、なおかつ「社会通念上相当である」ということです。労働契約法では、解雇の条件を厳しく制限しており、客観的で合理的かつ一般社会の尺度に適合しない解雇については無効としています。

“労働契約法第16条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。”

“労働契約法第15条(懲戒)
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。”

ちなみに「就業規則違反」や「勤務態度不良」と記載されていても、実際にその内容が合理的で社会通念に合致していなければ、解雇自体が無効です。ありがちな解雇事由の例としては、次のようなものがあります。

  • ・上司の指示に従わない
  • ・遅刻や欠勤(事前の説明や話し合いがない突然の解雇は無効)
  • ・妊娠、ケガによる入院、通院
  • ・労働組合での活動
  • ・残業命令や休日出勤への反発(従わない)
  • ・学歴、身分、性別など理由とするもの

これらは全て無効な解雇事由である可能性が高いのです。

また、整理解雇の場合は「経営不振のため」などと記載されることが多いですが、本当に経営不振に陥っているかどうかも確認しましょう。解雇通知を行いつつ、すでに代替人員の募集をかけている場合などは、経営不振という理由自体が虚偽かもしれません。

解雇事由自体が記載されていない場合は、別途「解雇理由証明書」を請求し、解雇の理由を説明するよう求めてください。「なぜ解雇されるのか」の説明を求めることは、労働者に与えられた正当な権利です。

そもそも就業規則は適切か

単に「就業規則違反」と書かれている場合、就業規則に解雇の事由について記載があるかを確認してください。当然、こちらも「客観的で合理的」かつ「社会通念上相当である」ことが必要です。例えば、「いかなる理由でも3日間連続で欠勤した場合は解雇」といった内容は無効です。病気やケガ、その他家庭の事情などで3日間会社を休むことは、通常の生活で起こりうることですから、就業規則の内容自体が無効になると考えられます。

解雇予告の有無(解雇予告手当含む)

普通解雇では「解雇予告」を行う必要があります。具体的には解雇の30日以上前にその旨を予告しなくてはなりません。また、解雇までの日数を30日より少なくする場合には、短縮分の日数に応じて「解雇予告手当」を支払う必要があります。これは労働基準法第20条に定められています。

“労働基準法第20条(解雇の予告)
1.使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
2.前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。”

もし予告も手当てもなく、「2週間後に解雇する」といった内容であれば、解雇自体が無効かもしれません。ちなみに解雇予告手当は「1日の平均賃金×(30日-解雇予告から解雇までの日数)」で計算できますので、事前に把握しておきましょう。

一方的な解雇通知に対抗するために

このように解雇通知には、確認すべき事柄がいくつもあります。すでに述べたとおり、解雇は簡単にできるものではありません。複数の条件をクリアしてはじめて成立します。もし解雇が不当なものであれば、未払い賃金や退職金、解雇予告手当などの請求も可能です。

ただし、不当解雇を証明するためには「証拠」が重要であり、その証拠自体を入手しにくい可能性もあります。また、「一人で会社と対立することへの不安」も重くのしかかってくるでしょう。たしかに労働者が単独で企業と対峙するためには、不安やストレスに耐えなくてはなりません。こうした問題を解決するため、まずは専門家である弁護士へ相談してみてください。労働問題に強い弁護士ならば、解雇通知の有効性確認や証拠集め、会社との交渉を含めたサポートが可能です。

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