残業代請求とは、未払いになっている残業代の支払いを企業に求めることをいいます。
残業をしたときに残業代をもらうことは労働者にとって当然の権利です。
しかし、残念ながら、すべての会社がきちんと残業代を支払ってくれるとは限りません。なかには、様々な理由をつけて従業員に残業代を支払おうとしない会社も存在します。
このような場合、残業代請求を行うことで、未払いになっている残業代を取り戻せる可能性があります。
残業代請求ができる可能性があるケース
法定労働時間(1日8時間または週40時間)を超えて働いた場合、超えた分については1分単位で残業代が発生します。
会社が適正な金額を支払っていないときには、その分を会社に請求することが可能です。
特に、未払いの残業代が発生しやすいケースとしては次のようなものが挙げられます。
サービス残業が常態化している
残業代を支払わずに従業員を残業させる「サービス残業」は違法です。特に、職場でサービス残業が常態化しているような場合には、結果的に多額の残業代が発生している可能性があります。
固定残業代制を採用している
企業によっては固定残業代制を採用し、あらかじめ決めた「みなし残業時間」分の残業代を前払いしている場合があります。
もっとも固定残業代制を採用している場合であっても、みなし残業時間を超えて残業をしたときは当然追加の残業代が発生します。
また、固定残業代の採用にあたっては厳格なルールがあるため、導入・運用のやり方に不備があると固定残業代制そのものが無効になります。
固定残業代制が無効と判断された場合、残業をした分だけ残業代が発生します。
みなし労働時間制を採用している
外回りの営業職、研究職といった特定の業務についている人については、実働時間に関係なく一定の時間働いたものとみなす「みなし労働時間制」が採用されているケースがあります。
みなし労働時間制で働く場合、何時間働いてもみなし労働時間分の給料しかもらえません。
そのため、ブラック企業の中には残業代を減らすためにみなし労働時間制を悪用している会社もあります。
名ばかり管理職になっている
労働基準法上、管理職には残業代を支払わなくてよいことになっています。しかし、労働基準法の管理職(管理監督者)にあたるかどうかは、待遇面や業務における裁量権などの要素から実質的に判断されます。
したがって、実質的に管理職といえない「名ばかり管理職」である場合には、残業代の未払いは違法です。
残業代請求を認めてもらうためにやるべきこと
未払い残業代の存在に気づいたら、会社に残業代を請求しましょう。
ここでは、残業代請求を認めてもらうためにやるべきことを紹介します。
証拠を集める
会社に残業請求を認めてもらうためには、違法な残業があったことを証明する必要があります。
次に紹介するような証拠を集め、残業があったという事実を証明できるようにしておきましょう。
- 賃金に関する規定が書いてある書類(雇用契約書や労働契約書、就業規則のコピー)
- 実際の勤務時間がわかるもの(タイムカード、日報、勤怠表、メールの送受信記録、帰宅時に使ったタクシーの領収書、日記など)
- 残業の事実が証明できるもの(残業の指示や承諾に関するメモや書面、業務用メールの送受信履歴、業務日誌など)
弁護士に依頼する
証拠集めと並行して、弁護士を始めとする専門家に相談することも大切です。
残業代請求では会社との交渉も必須となるため、1人で最後まで戦い抜くのは簡単ではありません。
弁護士であれば会社との交渉を任せられるのはもちろん、訴訟になった場合でも対応できます。
残業代請求には期間の制限があり、期間内に請求できなかった残業代は消えてしまいます。残業代請求に関して不安なことがありましたら、早めに弁護士にご相談ください。