2019.10.10 2022.12.20

残業代未払いにかかる遅延損害

残業代未払いにかかる遅延損害

残業代が未払いだった場合、未払い分とは別に「利子」や「賠償金」を請求できることをご存じでしょうか?本来支払われるはずの賃金や残業代が約束通りに支払われないと、労働者は生活に支障をきたしますよね。また、支払うべきお金を払うことが出来なかったり、欲しいものが買えなかったりします。つまり、何らかの「損害」が生じる可能性が高いのです。このように、金銭債務の不履行によって生じた損害に対しては、「遅延損害金」を請求できます。ここでは、未払いの残業代にかかる遅延損害金の内容や、その請求方法について解説します。

遅延損害金を請求できる時期と金額は?

未払いの残業代に対しては、未払い期間に応じて利息が加算されます。また、利息の他にも「遅延損害金」の請求も可能です。この遅延損害金は意外と知られておらず、本来請求できるにもかかわらず、見逃してしまっている例が少なくありません。遅延損害金の請求は、タイミングを逃すとできなくなる可能性もありますから、「いつ請求すべきか」を把握しておきましょう。

原則として「在職中」に請求する

遅延損害金は、「残業代の支払い期日から請求日(もしくは退職日まで)の間」に請求できるものです。そのため、残業代の未払いがあるようなら、退職する前に請求しなくてはなりません。これに対して「遅延利息」は、退職後に請求できます。なぜこのような違いがあるかと言えば、根拠となる法律が異なるからです。

遅延損害金の根拠法…民法415条

“民法 415条 (債務不履行による損害賠償)
1.債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき(債務の履行が不能であるときを含む。)は、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。
2.1の債務の不履行が、契約その他の当該債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、債権者は、その債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求することができない。”

遅延損害金は請求する相手方が営利目的の企業の場合は年率6%、非営利法人の場合は年率5%と定められています。

遅延利息の根拠法…賃金の支払の確保等に関する法律

こちらは年率14.6%と非常に高い利率であることが特徴です。

遅延損害金の計算方法

遅延損害金の請求では、次のようなステップで金額を計算します。

  • ・基礎時給の算出
  • ・各月の残業代を算出
  • ・支払われるはずだった日から現在までの利息金額を算出(遅延損害金=元金(未払い残業代)×遅延損害金年率×遅延した日数÷365日)

例えば、10/30に支給されるはずだった残業代6万円を、翌年1/30に請求する場合は次のように計算します。

遅延損害金=6万円(未払い残業代)×6%(遅延損害金年率)×91日(遅延した日数)÷365日=897円

もちろんこれは未払いがあった分だけ積みあがりますので、合算すると無視できない金額になっている可能性があります。

遅延損害金の請求方法

遅延損害金を請求方法としては、次の4つがあります。

1.任意交渉会社側に未払い賃金や残業代がある旨を伝えるため、内容証明郵便などを送ったのちに交渉を行います。
もし交渉がスムーズに進んで合意出来た場合でも、しっかりと書面(合意書や和解書)を作成しておきましょう。
労働者が単独で交渉できるならば問題ありませんが、一般的に労働者側が立場が弱く言いくるめられる可能性があるため、この時点から労働問題に強い弁護士のサポートを受けたいところです。

2.裁判外での解決(ADRなど)

各自治体に設置されている労働局、紛争調整委員会、労働基準監督署を利用する方法もあります。
また、第三者機関が間に入り、話し合いによる解決を試みるADR(裁判外紛争処理手続)も検討したいところです。
ただし、注意すべきはこれらの方法に「強制力がない」という点です。
あくまでも間に公的な機関が入った話し合いですから、ここで決着がつかなければ法的な手続きに進まざるを得ません。

3.労働調停・審判

裁判所を通した話し合いとして、労働調停や労働審判があります。労働審判は合意に至らなければ「調停不成立」となりますが、労働審判は裁判所から何らかの決定が言い渡されます。
また、労働審判の決定に異議があれば、いよいよ訴訟に移行していきます。

4.訴訟

いわゆる「裁判」です。当事者双方の立証・主張をもとに、裁判官が判決を下し、その結果は強制力を持ちます。
したがって、残業代を払わない会社側に対して、いつでも強制執行ができるようになります。
ただし、事実認定や立証に時間と労力がかかるため、訴訟前の段階から弁護士のサポートを受けておくことが大切です。

 

未払い賃金の遅延損害金請求は難易度が高い

実際には遅延損害金が支払われるケースは決して多くありません。
なぜなら、調停や審判では遅延損害部分がカットされがちであり、訴訟の確定判決がなければ支払われないからです。そのため、遅延損害金が高額だったり、どうしても支払わせたいという場合には、訴訟を見据えて弁護士への相談を検討してみてください。

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