2023.02.02 2023.02.02

残業代の計算方法

はじめに

1日に8時間を超えて労働した場合,超えた部分は残業時間となって,労働者は使用者に対し残業代を請求することができます。
では,残業代はどのように計算すればいいのでしょうか?
以下では,月給制の場合を前提に残業代の計算方法を解説していきます。

残業代の計算方法

残業代は,割増賃金の単価に残業時間をかけて計算します。
そして,割増賃金の単価は,基本給及び諸手当を1か月の所定労働時間で割った金額に割増率をかけて計算します。

・基本給及び諸手当

家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に支払われた賃金・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金などを除いたものがこれにあたります。

・1か月の所定労働時間

使用者が就業規則等で定めている労働時間をいいます。
一般的には,月全体の日数から使用者側が定めた休日を引いた日数に1日の労働時間をかけた時間をいいます。

・割増率

割増率は労働者が労働により変動します。
労働基準法上,以下のように割増率が定められています。
時間外労働や休日労働に対しては,通常の労働時間または労働日の賃金の2割5分以上5割以下の範囲内で命令の定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法37条1項本文)。
月60時間を超える時間外労働部分については,割増率は5割となります(同法37条1項ただし書)。
また,午後10時から午前5時までの時間帯に労働(深夜労働)をさせた場合には,通常の労働時間の賃金の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません(同法37条4項)。
時間外労働と深夜労働とが重複した場合,および,休日労働と深夜労働が重複した場合には,割増率が合算した割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法施行規則20条)。具体的には,時間外労働と深夜労働では5割(2割5分と2割5分の合算),月60時間を超える時間外労働と深夜労働では7割5分(5割と2割5分の合算),休日労働と深夜労働が重複した場合では6割(2割5分と3割5分の合算)となります。
 まとめると割増率は以下のとおりです。
 時間外労働 ・・・25%
 月60時間を超える時間外労働 ・・・50%
 深夜労働(午後10時から午前5時までの労働) ・・・25%
 休日労働(法定休日に労働した場合) ・・・35%
 時間外労働(法定労働時間を超えた場合)+深夜労働 ・・・50%
 時間外労働(月60時間を超えた場合)+深夜労働 ・・・75%
 休日労働+深夜労働 ・・・60%

具体例

AさんはX社に勤務しており,Aさんの勤務形態は一日の勤務時間は8時間(平日午前10時から午後7時までで休憩時間は1時間)であり,基本給及び諸手当は30万円(除外される手当等を除いた金額),休日は土曜日・日曜日・祝日の場合を考えます。
ある月の全体日数は30日で,休日が10日あったとして,Aさんが平日午前10時から午後11時まで毎日勤務したとします。
この場合,午後7時から午後10時までの3時間は時間外労働にあたります。また,午後10時から午後11時までの1時間は法定労働時間を超えた深夜労働にあたります。
それでは,上記式をAさんの場合に当てはめて残業代を計算していきましょう。
 ・基本給及び給与・・・30万円
 ・1か月の所定労働時間・・・160時間(月全体の30日から休日10日を除いた日数である20日に勤務時間8時間をかけた時間)
 ・基本給及び給与を1か月の所定労働時間で割った金額・・・1875円
 ・割増賃金の単価
   時間外労働の単価 ・・・2343円(端数は切り捨て)
   深夜労働の単価 ・・・2812円(端数は切り捨て)
 ・1日の残業代
   時間外労働 ・・・7029円(1日あたり3時間の時間外労働)
   深夜労働 ・・・2812円(1日あたり1時間の深夜労働)
以上により,Aさんの1日の残業代は,9841円となり,ある月の残業代は19万6820円(平日20日分)となります。
実際の例ですとAさんのような単純な計算になるのではなく,残業した月が数か月にわたっている場合や,残業時間も日ごとに異なったり休日労働も含まれている場合もあるので,複雑な計算になると考えられます。
確かに,労働者自身が残業代を計算することはできますが,残業時間の漏れや,残業の評価に疑問を持つ場合もあると考えられるので,残業代の計算を法律の専門家である弁護士に依頼するのも一つの有効な方法と言えます。

おわりに

労働者が残業をした場合,使用者に対し残業代を請求するのは労働者の正当な権利でありますが,残業代の計算は労働者一律に決まっているのではなく,それぞれの労働者がどのような労働を行っているかどうかにより変わっていきます。残業代の計算のために,法律の専門家である弁護士に相談してみるのも有効な方法であると考えられます。
当事務所では,残業代請求に関し経験豊富な弁護士が在籍しております。残業代請求を検討されている方は,当事務所の弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

このコラムの監修者

カテゴリ一覧

アクセスランキング

新着記事

CONTACTお問い合わせ

ご相談など、お気軽に
お問い合わせください。

電話アイコンお電話でのお問い合わせ

06-4394-7790受付時間:8:30〜19:00(土日祝日も可)

メールアイコンwebフォームよりお問い合わせ