2019.10.15 2022.12.20

残業代請求に負けるケースとは

残業代請求に負けるケースとは

残業代請求は、労働者であれば誰もが持つ権利です。したがって、もし未払いの請求があるならば、誰でも残業代請求が可能です。しかし、それが認められるか否かはケースバイケース。残業代請求の争いに負けてしまい、残業代を受け取れない可能性もあるわけです。では、残業代請求に負けるケースとはどういった場合なのでしょうか。

残業代請求で負けるケース5つ

残業代請求で負けてしまうケースは、大きく以下5つが考えられます。

1.立証責任が果たせない

残業代請求では、請求する側に立証責任があります。「立証責任」とは、「ある事柄について事実関係を証明する責任」のことです。立証責任を果たせないと、残業代請求で負ける可能性が極めて高くなります。具体的には、「証拠がない、もしくは乏しい」場合です。ちなみに残業代請求の証拠としては、次のようなものがあります。

  • 労働契約の証拠…労働契約書や雇用契約書
  • 残業の事実を証明する証拠…タイムカードや勤怠管理表、Eメール、業務用PCへのログイン・アウト履歴、オフィスの時計の写真、タクシーの領収書など
  • 残業内容の証拠…上司からの指示が記されたEメール、メモ、書類など
  • 賃金の支給額がわかる証拠…給与明細や源泉徴収票、就業規則のコピーなど

残業代請求では、証拠集めが非常に重要な作業ですので、できる限り証拠を集めておきましょう。

2.時効が成立している

残業代請求には時効があり現状は2年と定められています。これは、労働基準法第115条に規定があります。

“第115条 (時効)
この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によって消滅する。”

ただし、2020年の民法改正の影響から、残業代請求の時効も2年から5年に延長されるかもしれません。

3.労働基準法上の管理監督者に該当する

労働基準法上の「管理監督者」に該当する場合、残業代請求で負ける可能性があります。
管理監督者には、その職務や責任の性質上、労働時間や休憩・休日に関する規定が適用されないからです。

4.自発的な残業と見なされる

上司からの残業指示がなく、自発的な残業とみなされれば、残業代請求の対象にならないかもしれません。しかし、「黙示の残業命令」があれば、明確な指示がなくとも残業代を請求できる可能性はあります。黙示の残業命令とは、規定時間内に終わらない量の業務が発生しており、なおかつ上司が残業の中止を命じない場合に成立すると考えられます。
ただし、これには「客観的に見て正規の時間内に終わらない量の仕事」であることがポイントです。残業代請求でも争いになりやすい分野ですので、弁護士への相談をおすすめします。

5.固定残業代制のもとで、規定範囲内の残業である

固定残業代制(みなし残業時間制)を採用する会社で、固定残業時間内の残業時間であれば、すでに残業代が支払われているために残業代請求はできません。ただし、固定残業時間を超えた残業がある場合や、固定残業代制そのものが違法な場合は、残業代を請求できる可能性があります。

残業代請求で勝ちたいなら「独りで戦わないこと」

このように残業代請求では、負ける可能性が高くなるポイントがあります。特に、「立証責任」や「自発的な残業か否か」「固定残業代制の適法性」などについては、専門知識やノウハウが必要なため、労働者が単独で戦うのはおすすめしません。
これらは労働問題に強い専門家(弁護士)の腕が問われる部分であり、しっかりとしたサポートがあるか否かで、結果が変わってきます。

  • ・残業はしていたが、上司に”指示はしていない”と言われた
  • ・残業に関する証拠集めが進まない
  • ・就業規則の内容が適法かわからない
  • ・会社側と一人で交渉するのは心細い

といった場合には、消滅時効(2年)を過ぎてしまう前に、ぜひ弁護士へ相談してみてください。

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