2020.01.10 2022.12.20

誤解されがちな飲食店勤務の残業代請求

誤解されがちな飲食店勤務の残業代請求

残業代は、就業規則上の労働時間以外の労働について支払われるのが一般的です。しかし、業界によっては「残業代が出ないのは普通」といわれることもあります。そのひとつが、飲食店です。「うちは飲食店だから残業代は無い」と言われ、額面通りに受け取ってしまう方が少なくありません。しかし、飲食店に残業代が適用されないというルールはありません。そこで、飲食店勤務の残業代請求について、解説します。
 

なぜ飲食店では残業代が出ないのか

飲食店で残業代が支払われない理由を簡単に整理すると、次の4点に集約されるのではないでしょうか。

  • 1.慢性的な人手不足で、なし崩し的なサービス残業が習慣になっている
  • 2.みなし残業代制(固定残業代制)を採用しており、残業代は全て給料に含まれていると「誤解」している
  • 3.店長や副店長は「管理監督者」に該当するため、残業代の支給対象外としている
  • 4.「30分未満の端数は全て切り捨て」と説明されている

1は論外としても、2・3・4は労働者側も納得してしまっているケースが少なくありません。しかし、いずれも適法とは限らず、その内容を詳しく見ていくと、残業代請求の対象になっていることも多いのです。では、どういった点を詳しく見るべきなのか、解説します。
 

2.みなし残業代制(固定残業代制)に対する誤解

みなし残業代制は、「毎月一定時間を残業したとみなし、実際には残業していなくても固定の残業代を支払う」制度です。つまり、30時間の残業代が含まれる「みなし残業代制」であれば、実際にはその月の残業時間が20時間であっても、30時間分の残業代が支給されます。逆に、実際には50時間の残業があったにもかかわらず、固定残業代分(つまり30時間分)しか支給されていなければ、未払い残業代が発生していることになります。飲食店では、この「超過分の残業代未払い」が多いようです。たとえみなし残業代制を採用している店でも、

  • ・基本給とみなし残業部分が明示的に区別されている
  • ・みなし残業代(固定残業代)について、具体的に労働契約に明記されている

という条件がそろっていれば、超過分を請求できます。具体的には、

  • ・固定残業代部分から、残業1時間あたりの給与を計算する
  • ・残業1時間あたりの給与を超過分にかけ、未払い残業代として請求する

というステップで、未払いの残業代が計算できます。
 

3.店長や副店長は「管理監督者」に該当するため、残業代の支給対象外

少し前に「名ばかり管理職」として社会問題になった時期もありましたが、店長や副店長など「管理」に属する人間には残業代が無いという誤解です。確かに労働基準法では、労働者が管理監督者に該当する場合、残業代の支払いは必要ないとしています。しかし、実際に管理監督者に該当するかは、単なる肩書だけではなく、職務と権限の内容まで吟味しなくてはなりません。具体的には、次の点を再確認すべきです。

  • ・経営方針や労働条件、人事採用などに関する職務と権限が与えられていること
  • ・出退勤について上位者などから管理されていないこと
  • ・地位、責任、権限にふさわしい待遇(給与)を受け取っていること

 
つまり、たとえ店長という肩書であっても、人事採用や店の開店・閉店時間を決める権利がなく、出退勤の時間も決められているようでは、管理監督者に該当しない可能性が高いのです。したがって、店長という「見かけ上は管理監督者」という立場でも、実際には残業代を請求できる権利を持っていることになります。もし、「管理職だから残業代は出ない」と説明されているなら、実際の権限や職務内容、報酬などをしっかり確認してみてください。どの程度が管理職相当か判断しにくい場合は、弁護士などへ相談してみるのもひとつの方法です。
 

4.「30分未満の端数は全て切り捨て」と説明されている

これも良くあるパターンですが、残業時間の「丸め」や「切り捨て」は、厳密に言えば違法です。労働基準法は第24条で「賃金全額支払いの原則」を定めており、これに違反するからです。したがって、少なくとも1日あたりの残業代において、15分や30分未満はカウントしないという計算方法は許されません。1分単位でしっかり積み上げていくのが正解です。

丸めや切り捨てが許されるのは「月単位の集計」に用いる場合です。例えば、その月の残業時間が「22時間15分」、次月の残業時間が「23時間35分」だった場合に、それぞれ「22時間(切り捨て)」「24時間(切り上げ)」するようなケースです。1日ごとに端数を切り捨てていくと、月単位では膨大なサービス残業が発生することになりますから、誤解の無いようにしましょう。もし、毎日10分~30分のサービス残業があるならば、しっかり計算して請求していきたいところです。
 

誤解されがちな飲食店の残業代の解決は弁護士へ

飲食店の残業代は、誤解や解釈のミスによって支払われてないケースが少なくありません。
本来受け取れるはずの報酬を正当に請求するために、まずは本稿で紹介した事柄をチェックしてみてください。残業代の請求は「本来の支払い日から2年」が期限です。もし未払いの残業代が発生しているようなら、早急に弁護士へ相談しましょう。

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