残業代を請求しても、企業側がすんなり応じてくれるケースばかりではありません。
さまざまな理由で拒否されることも多々あります。
今回は未払い残業代が発生しやすい業種やパターン、企業側のよくある反論をご紹介します。
あてはまる方は注意してください。
1.残業代不払いが多い業種
残業代不払いが多いのは、以下のような業種です。
- 建設業
- 運送業
- SEなどのIT関連
- 居酒屋などの飲食店
- 塾や英会話教室
- アパレル関連
もちろん上記以外の業種でも残業代が発生しているケースはたくさんあるので、お心当たりがあれば弁護士までご相談下さい。
2.タイムカードを先に押させて残業させる
悪質な企業では従業員に定時にタイムカードを打刻させ、その後に残業をさせるケースがあります。しかしタイムカードを押した後でも残業していれば残業代を請求できます。タイムカード以外の証拠を集める方法があるので、あきらめずに弁護士までご相談下さい。
3.自主的な勉強会を開かせる
残業と言わず、従業員らに「自主的な勉強会」などとして仕事をさせる企業もあります。しかし実質的には時間外労働をしているのであれば、残業代請求が可能です。
4.「うちでは残業代を支払っていない、誰も残業代をもらっていない」と言われる
残業代を請求すると「うちでは残業代を支払っていない」「入社時にも説明したよね?」「他の誰も残業代をもらっていないのに君にだけ支払うことはできない」などと言われるケースがあります。
しかし残業したときに時間外手当を払わねばならないのは労働基準法にもとづく雇用者の義務です。企業側が「残業代制度」を採用しているかどうかの問題ではありません。
他の人が誰ももらっていないなら全員がもらうべきであり、残業代不払いの理由になりません。雇用契約の際に説明を受けていても関係ありません。
企業側がこのような説明をしていても残業代を請求できるのであきらめる必要はありません。
5.「残業代は毎月の給料に含まれている」と言われる
「残業代はすべて毎月の給料に含まれているので、別途支払いはできない」と言われるパターンです。
このようなみなし残業代制度が導入されていても、予定されている時間を超えて働いた場合には残業代請求ができます。また、そもそもみなし残業代制度を導入するための要件を満たしていない企業もたくさんあります。その場合には時間外労働の分の全額の残業代請求が可能です。
6.「管理職だから残業代が発生しない」と言われる
課長やマネジャーなどの「管理職」の方が残業代請求すると「管理職には残業代が払われない」と言われるケースが多々あります。労働基準法の「管理監督者」に該当すれば個別に残業代が計算されなくなるからです。
しかし管理職であっても労働基準法上の「管理監督者」に該当しなければ残業代を請求できます。
たとえば「自分の働く時間に裁量がない」「重要な経営の意思決定に関わることはない」「地位に応じた報酬をもらっていない」場合などには管理監督者にならないので残業代を請求できる可能性が高いと言えます。
7.「営業職には残業代を払わなくて良い」と言われる
営業職の方が残業代を請求すると「外回り営業には残業代が発生しない」と言われるケースがあります。外回り営業の場合「事業場外のみなし労働時間制」が適用されて個別の残業代計算をしなくてよいケースがあるからです。
ただし外回り営業でも「上司から指示を受けながら営業活動をしている」「上司が同行している」「常に携帯などで指示を受けられる状態にある」場合には事業場外のみなし労働時間制は適用されず、残業代が発生します。
8.変形労働時間制、フレックスタイム制のケース
変形労働時間制やフレックスタイム制を使って働いていると「残業代が発生しない」と言われるケースがあります。しかしこれらの労働時間制を使っていても、法定労働時間を超えて働いたら残業代が発生するので誤魔化されないように注意しましょう。
9.「年俸制の人には残業代を払わなくて良い」と言われる
年俸制の賃金体系の方も残業代を払ってもらえないケースが多くなっています。しかし年俸制であっても予定された労働時間を超えて働いた場合には残業代を請求できます。
10.「裁量労働制の人には残業代が支払われない」と言われる
裁量労働制が適用される場合、残業代が支払われません。
しかし現実には裁量労働制が適用されない方にも「君は裁量労働制だから残業代は払わない」と言われるケースがみられます。裁量労働制を適用できるケースは限定されているので、判断に迷ったときには弁護士までご相談下さい。
企業側がさも当然のように「残業代を払わない」と主張・説明しているとき、法律を無視しているケースも少なくありません。納得できないと感じたら、すぐに弁護士までご相談下さい。