エンジニアには『3K(きつい・帰れない・給与が安い)』『IT土方』とも比喩される、過酷な職業でもあります。
実際に、長時間労働や未払い残業代などの問題に悩まされているエンジニアの方も多いことでしょう。
今回は、エンジニアの残業事情や残業代請求の方法についてご説明します。
エンジニアの残業事情
まずは、実際にエンジニアはどれほど残業をしていて、なぜ長時間労働や未払い残業代が発生するのかからご説明します。
エンジニアは残業時間が長い
「fabcross for エンジニア」が約1万人に行ったアンケートでは、エンジニアは一般職に比べて残業時間も長い傾向にあることが分かりました。
特に10時間未満の残業時間で済んでいるエンジニアは全体の半数以下しかおらず、一般職と比べると10%以上少ない結果となりました。
エンジニアの残業時間が長い理由
では、なぜエンジニアに長時間労働が多くなりがちなのでしょうか?
ひっ迫した納期
技術職であるエンジニアは、ほとんどで納期が決められており、納期内に終わらせるために長く働かざるを得ない状況にもなります。
特に下請けの下請け(孫請け)の会社では、無理な注文を取ってくることも多く、結果的にエンジニアに負担が大きく及びます。
このような、下請け構造がエンジニア職の長時間労働の原因になっているとも考えられます。
クライアントからの急な仕様変更
上記と同じく、特に下請けの会社ではクライアントからの急な要望に対応する機会が増え、エンジニアが対応しなくてはならない状況が作られます。
裁量労働制の誤った導入
エンジニア職は、『裁量労働制』を取り入れることができる職業でもあります。
裁量労働制とは、労働者が労働時間で給与等の評価を受けるのではなく、成果によって評価を受けられる制度です。出退勤は自由にできる代わりに、しっかり決められた成果を上げれば良いとされます。
しかし、実際には裁量労働制が「残業代を払わないための制度」になっており正しく機能していない会社も多くあります。
エンジニアの裁量労働制では、到底通常の労働時間だけでは終わらないような成果を求められ、成果を上げるためにエンジニアは長く働きます。しかし、会社からは「裁量労働制だから残業代は発生しない」と言われてしまうのです。
結果的に、「エンジニアはいくらでも働かせて良い」というような風潮が出来上がってしまいます…。
エンジニアで未払い残業代が発生する原因
上記のように長くなりがちなエンジニアの労働時間。真っ当に残業代を支払えば、会社の人件費も増えていきますので、悪質な会社ではあの手この手を使って残業代を払わなくてよい理由を作ります(実際には違法なケースが多いです)。
固定残業代で残業代を支払ったことにされている
固定残業代とは、あらかじめ給与に残業代を含めて支払っておくことです。本来、会社にとっては給与計算がしやすくなるくらいで、ほとんどメリットはありません。
しかし、実際には残業代未払いの隠れ蓑として使われており、会社の「残業代は払っている」という言い分によく使われます。
- 実際は固定残業として決められた時間を超えて働いている
- 固定残業代が実際の残業代と見合わない
上記のケースでは、固定残業代として残業代を受け取っていても未払い残業代があると考えられます。
裁量労働制で残業代を払わなくて良い理由にされている
上でもお伝えしましたが、エンジニアは裁量労働制によって「残業代は払わなくてよい」と、決めつけられているケースが多いです。
たとえエンジニアの裁量労働制であっても、以下のケースでは適切に運用されておらず、残業代請求ができる可能性があると考えられます。
- 出退勤時間に決まりがある
- 長時間労働が蔓延している
- みなし労働時間とかけ離れている
エンジニアが残業代請求をする方法
エンジニアの方で少しでも未払い残業代があると思われる方は、弁護士に相談の上、以下の方法を取ってみてください。
残業代が発生している証拠を集める
残業代請求をするにあたって、証拠の存在が重要になります。
証拠の種類 | 証拠の例 |
---|---|
労働契約の内容が分かる物 | 雇用契約書 就業規則 |
実際の残業が分かる物 | タイムカード 出退勤時間が分かる物 |
残業の経緯が分かる物 | 指示書 上司からのメール |
実際の支払われた金額が分かるもの | 給与明細 源泉徴収票 |
残業代請求の証拠としては、主に上の物が挙げられます。在職中のうちからなるべく多くの証拠を準備しておくことをおすすめします。
内容証明郵便や交渉で残業代請求をする
裁判所を介さずに、直接会社に残業代請求や交渉ができます。会社側が応じてくれれば手っ取り早く済ますことができますが、本人だけで請求や交渉を行っても応じてくれないことも多いでしょう。
上記の証拠を元に根拠を持って請求したり、弁護士に間に入ってもらうことで会社側が応じてくれる可能性を高めることができます。
労働基準監督署に報告する
今の会社に残りつつもしっかり残業代を支払って欲しい場合は、労働基準監督署への報告も検討しましょう。労基署からの指導の結果、正しく残業代が支払われることが期待できます。
労基署も未払い残業代の証拠がないとなかなか動いてくれませんので、上記の証拠を持って相談/報告に行くようにしましょう。
裁判所を介した手続きで請求する
交渉等では解決できない場合、裁判所を介した手続きに移っていくことがあります。労働審判や裁判によって決まった内容には、会社側も応じる必要があります。
裁判官などに未払い残業代を分かってもらうためには、言わずもがな証拠が重要ですね。また、手続きも難しくなりますので、弁護士への依頼も検討しましょう。
まとめ
エンジニアで長時間労働や未払い残業代問題を抱えている方も多いかと思います。特に、裁量労働制の不適切な導入で未払い残業代が発生しているエンジニアも多いです。
今回お伝えした内容で、少しでも未払い残業代が考えられる方は、まずは弁護士に相談してみて、最適な方法で残業代請求を行っていただければと思います。