2020.02.18 2022.12.20

残業時間の上限

残業時間の上限

これまで法律による明確な残業時間の上限はありませんでしたが、その結果、長時間労働による労働者の精神疾患や過労死などを招き、たびたび問題視されていました。

それを受けて、2019年4月の働き方改革関連法によって、残業時間の上限規制が設けられることとなりました。

今回は、新たに設けられた残業時間の上限規制や上限を超えて残業させている場合の罰則や対処法についてご紹介します。
 

【ケース別】残業時間の上限


 
引用:「時間外労働の上限規制|厚生労働省」

働き方改革関連法による残業時間の上限には、『原則的な上限時間』と『特別な事情がある場合の上限時間』の2種類があります。

まずは、それぞれの上限時間がどれくらいなのかをご説明します。
 

【原則】残業時間の上限

  • 月45時間以内
  • 年360時間以内

後述する、臨時的な特別な事情がない場合には、原則的に上記の残業時間が上限となります。

ちなみに、大企業はすでに(2020年1月時点)この上限による規制が施行されていますが、中小企業は2020年4月からの施行となります。
 

月45時間以内

原則的な残業時間の上限は月45時間以内と決められています。この45時間残業は、以前からあった36協定での上限時間でもありますので、馴染み深い方も多いかと思います。

仮に月の出勤日数を20日とすれば、1日平均2時間少々の残業となります。
 

年360時間以内

また、年間通して360時間以内の上限時間も決められています。これを月平均にすると30時間となります。つまり、毎月45時間以内の残業時間に収まっていても、年間で360時間を超えているケースも考えられます。

その場合は、後述する労働基準法第119条による罰則を受ける可能性が出てきます。
 

【臨時的な特別の事情がある場合】残業時間の上限

ただし、臨時的な特別の事業があって労使による合意がある場合に限り、残業時間の上限を延長させることが可能です。

  • 決算時期
  • 商戦などによる繁忙期
  • 納期のひっ迫
  • 大規模なクレーム
  • 機械のトラブル

残業時間の上限の延長が認められる特別の事情とは、上記のようなケースです。また、労使による合意が必要になりますので、経営者の独断で決めることはできません。
 

年720時間以内

月平均にすると60時間の残業となります。原則の上限時間と比べると、かなり長く伸びますね。
 

複数月平均80時間以内

1~6ヶ月を平均して、それぞれの残業時間を80時間以内に収める必要があります。簡単に言えば、2ヶ月連続で80時間以上残業しているようであれば、特別の事情での上限も超えていることとなります。
 

月100時間未満

特別の事情があって業務が追いつかないような場合でも、月100時間を超えて残業させることはできません。
 

月45時間残業を超えることができるのは6ヶ月まで

これまでの上限時間をクリアしていても、原則的な上限時間である月45時間残業を超える月を6ヶ月以上設けることはできません。

あくまでも、臨時的で特別な事情がある場合の上限時間ですので、年間通して原則的な上限時間を超えることは常習的と考えられます。
 

残業時間の上限を超えている場合の罰則

残業時間の明確な上限が設けられたことと併せて、違反した場合の罰則も明確になりました。

これまでは、36協定による上限時間を超えて残業させても、行政指導の対象になる程度でしたが、今後は上記の上限時間を超えて働かせることで【6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金】を受ける可能性が出てきます。

上記でご説明した残業時間の上限を超えて働いているような方は、以下のような対処法を取っていきましょう。
 

残業時間の上限を超えている場合の対処法

最後に、上記でお伝えした残業時間の上限を超えて働いている方の対処法についてご紹介します。

お伝えの通り、上限を超えて残業させることは労働基準法に反している可能性が高いので、しかるべき対応を取れば、改善されることも期待できます。
 

社内の相談窓口に相談する

ある程度の規模の会社になれば、社内に人事部や労働問題に関する相談窓口が設けられているかと思います。まずは、社内での解決を図ってみても良いでしょう。

ただし、あくまでも会社組織内での窓口ですので、しっかり対応してくれるかどうかは疑問が持たれます。「改善されればラッキー」くらいの期待度で長時間労働に関する相談をしてみてください。
 

労働基準監督署に通報する

あきらかに上限を超えて残業しているような場合、労働基準監督署に通報することで対処してくることが期待できます。特に【特別な事情】がある場合の上限時間をも超えているような場合では、違法性が高いとも考えられますので、早急に対処することをおすすめします。

ただし、何の根拠もなくただ単に口頭だけで伝えても、労働基準監督署も迅速には動いてくれません。雇用契約書やタイムカードなど、実際に長時間の残業をしていることが分かる資料などを持って報告しに行くようにしましょう。
 

見切りを付けて退職する

事業内容、経営状況、人員不足など、会社によっては早急には改善されにくい場合もあります。そのような会社で働き続けても、時間と労力だけが奪われて、何も変わらない可能性も考えられます。

早々に見切りを付けて他の会社に転職することも方法の1つでしょう。
 

未払い残業代は請求できる

また、忘れないでおいて欲しいことが、未払い残業代は請求して取り返せるということです。特に長時間労働が横行している会社では、当然のように残業代が未払いになっているケースが考えられます。

少しでも正しく残業代が支払われていないと思う方は、一度弁護士に相談し、取り返せる残業代が残っているかどうかを確認してみてください。弁護士にもよりますが、無料相談だけである程度の未払い残業代の判断ができる場合があります。
 

まとめ

原則的 特別な事情がある場合
月45時間以内
年360時間以内
年720時間以内
複数月平均80時間以内
月100時間未満
月45時間超は年6ヶ月まで

働き方改革関連法で決められた残業時間の上限をまとめると、上記のようになります。

上限を超えて残業している方は、労働基準監督署へ通報したり転職や残業代請求をすることも検討しましょう。プライベートと仕事のバランスが取れた生活を送ることはきっとできるはずです。

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