2020.03.04 2022.12.20

運送業の残業代

運送業の残業代

運送業は、給与は良い代わりに長時間労働が多い仕事のイメージがあります。実際に、運送業は残業も多く、月に何十時間も残業している方がいます。

長時間労働でも、きちんと残業代が支払われていればまだ良いのですが、正しく残業代が支払われていないことも多く、残業代請求ができるケースもあります。

今回は、運送業の残業代事情や未払い残業代を取り返す方法について解説します。
 

運送業の残業の実態

まずは運送業の残業事情についてご説明します。先に触れましたが、長時間労働の会社が多くなっているようです。

運送業は残業が多い!


参考:「運送業における労働時間と働き方に関する調査|厚生労働省」
こちらは、厚生労働省が運送業界(バス・タクシー・トラック)の平均的な残業時間を運送会社約500社にアンケートした結果です。残業時間の長さに応じて色分けしましたが、平均で月に45時間以上残業している会社が3割以上ある結果となりました。

残業時間の上限以内【月45時間以内】 63.8%
残業時間の上限を超える【月45~80時間】 25.7%
過労死ラインを超える【月80時間以上】 5.9%

アンケート自体は2016年のものと少し古く、法令が変わる前のものですが、45時間を超える残業は、2020年現在で原則的にさせてはならない上限となっています(中小企業は2020年4月から)。

約3割の会社が法律で決まる原則的な残業時間の上限を超えていることになりますので、運送業は残業が多いと言うことができるでしょう。

運送業の残業が多い理由

なぜ運送業の残業が長いかと言うと、以下の要因があるからだと考えられます。
 

固定残業代の導入

一般的な会社と違い、運送業は常に外で仕事をします。実際に働いた時間を管理しにくくなるので、多くの会社で固定残業代制を導入しています。

固定残業代とは、あらかじめ働く分の残業時間に対する残業代を先に固定で払っておく制度です。

後からもご説明しますが、この固定残業代制のせいで「すでに残業代は支払っているからいくらでも働かせてよい」という誤解に繋がり、長時間労働の要因となっています。
 

渋滞や荷待ちに影響されやすい

運送業(特にトラック運転手)は、渋滞や荷待ち時間などの外的要因に大きな影響を受けて、結果的に残業時間が増えることも多いです。

例えば、事故による渋滞に当たってしまえば、数時間単位の残業が簡単に起こってしまいます。

また、荷待ち時間として待機させられることも多く、こちらも数時間単位の荷待ち時間が生じることがザラにあります(後述しますが、荷待ち時間も本来は労働時間です)。
 

運送業でよくある残業代の未払い問題

残業が多い運送業界ですが、百歩譲ってきちんと残業代が出ていればそれでも良い方も多いでしょう。しかし、中には違法に残業代を払っておらず、未払い残業代が生じている運送会社も少なくありません。

こちらでは、運送業界のよくある未払い残業代問題についてご説明します。

固定残業代の間違った解釈によるもの

上記でもお伝えしましたが、固定残業代制を導入しているものの、間違った認識で導入されており、結果的に未払い残業代が発生しているケースがあります。

固定残業代制とは、『45時間分7万円の固定残業代を含む』などと、給料にあらかじめ残業代が含まれている契約です。

しかし、上の例で固定残業代になるものはあくまでも45時間分の残業代だけで、仮に実際45時間以上残業をしたのであれば、45時間を超えた残業代は追加で支払われるべきです。

このように、実際の労働時間がみなし残業時間を超えていて残業代未払いになっているケースが多くあります。

歩合給でも残業代の代わりにはならない

また、固定残業代ではなく、歩合給として残業代の代わりにしているケースもあります。しかし、残業代と歩合はもともと性質が違うもの、「歩合があるから残業代はない」などと言う言い分は通用しません。

待機時間も労働時間になる

トラック運転手は、荷待ちによる待機時間がある場合があります。この待機時間が休憩と処理され、未払い残業代の要因になっているケースが考えられます。

本来、休憩時間とは労働から完全に解放されていて、居場所や行動が指定されるものではありません。場所や行動が指定されるようであれば、待機時間でも労働時間と考えられます。

もともとの労働時間が長いことに併せて、このような理由で未払い残業代問題も起きやすいと言えますので、運送業界で働く方は高額な未払い残業代が残っている可能性も十分に考えられるのです。
 

運送業で働く人が未払い残業代を請求する方法

長時間労働に対する未払い残業代問題は深刻で、年間で数十万~100万円程度の未払い残業代が発生していることが考えられます。

こちらでは、運送業の方が未払い残業代を取り返す方法についてご説明します。

実労働時間や契約内容などが分かる証拠を集める

証拠の種類 証拠の例
労働契約の内容が分かる物 ・雇用契約書
・就業規則
実際の残業が分かる物 ・タイムカード
・出退勤時間が分かる物
残業の経緯が分かる物 ・指示書
・上司からのメール
実際の支払われた金額が分かるもの ・給与明細
・源泉徴収票

残業代請求において証拠の存在は重要です。ご本人が「正しく残業代が支払われていない!」と思っていても、証拠がなければ会社側の反論の余地を与えてしまいますし、裁判官などの第三者にも事実を分かってもらうことができません。

まずは、今後の残業代請求を有利に進めるためにも上記の証拠をできるだけ多く揃えておきましょう。

【会社と交渉】交渉や内容証明郵便を送る

残業代請求を手早く簡単に済ませるのであれば、まずは会社との交渉や内容証明郵便による残業代請求から行います。ただ、この方法には法的効力がありませんので、会社側が応じないケースも十分に考えられます。

上記の通り、しっかり根拠と証拠を持って請求し、場合によっては弁護士に代理で交渉・請求してもらうことで会社側が応じる可能性も高くなるでしょう。

【裁判所を介した話し合い】労働審判を申し立てる

当事者同士では解決できない場合、労働審判によって残業代請求を行うこともできます。労働審判とは、裁判所を介して話し合いを行うことです。第三者が話し合いに加わりますので、当事者同士で解決できなくても、労働審判でなら結論が出ることも多いです。

訴訟に比べて解決までの期間が短く(おおよそ3ヶ月以内)、手続きも簡単ですので個人だけでも申立てが可能です。

【判決による決定】裁判を起こす

上記の方法でどうしても解決しない場合、訴訟を起こすことも未払い残業代請求の方法の1つです。判決で決まった内容には、会社側も従う必要がありますので、きちんと決着を付けたいのであれば、訴訟も検討すべきでしょう。

ただし、裁判官は客観的にしか判断しません。上記でお伝えした証拠が無いと、裁判で残念な結果になることも起こり得ます。また、手続きも難しくなり、期間も1年程度かかることもあります。ご自身だけで裁判に挑むとなると、相当な労力を要しますので、弁護士に依頼することが通常です。
 

まとめ

運送業の方は長時間労働や未払い残業代が多い業界だと言えます。多い方では、100万円を超える未払い残業代があってもおかしくないでしょう。

まずは、労働契約内容や実労働時間などが分かる情報を持って、弁護士に相談されてください。労働問題に力を入れている弁護士であれば、ある程度の情報で未払い残業代の額を教えてくれるでしょう。

具体的な金額が分かってくれば、次にどのような方法を取るべきか、見えてくるはずです。決して泣き寝入りすることなく、働いた分はきちんと払ってもらうようにしましょう!

このコラムの監修者

カテゴリ一覧

アクセスランキング

新着記事

CONTACTお問い合わせ

ご相談など、お気軽に
お問い合わせください。

電話アイコンお電話でのお問い合わせ

06-4394-7790受付時間:8:30〜19:00(土日祝日も可)

メールアイコンwebフォームよりお問い合わせ