- 1.退職後に前職の未払い残業代に気付いた
- 2.在職中には言い出せなくて退職後に請求する覚悟を決めたなど
退職後に残業代請求を考えている方も多いと思います。
もちろん、退職後でも残業代請求は可能ですが、残業代請求の証拠が集めにくかったり、時効があったりなど、在職中の残業代請求より難しいポイントがあります。
今回は、退職後の残業代請求にフォーカスを当ててご説明していきます。繰り返しますが、残業代請求には2年の時効がありますので、お早めに行動に移すことをおすすめします。
退職後の残業代請求の方法
まずは、退職後の残業代請求の方法を、順を追ってご説明します。先にお伝えしますが、退職後でも在職中でも、残業代請求の方法に大きな違いはありません。
ただし、すでに退職しているということで、少し事情が変わることがあります。そちらも併せてご説明します。
証拠を揃える
証拠の種類 | 証拠の例 |
---|---|
労働契約の内容が分かる物 | 雇用契約書 就業規則 |
実際の残業が分かる物 | タイムカード 出退勤時間が分かる物 |
残業の経緯が分かる物 | 指示書 上司からのメール |
実際の支払われた金額が分かるもの | 給与明細 源泉徴収票 |
残業代請求をするにあたって、証拠の存在が非常に重要になります。会社に直接請求するにしても、証拠がないことで反論される余地を作ってしまいますし、裁判ともなれば証拠がないことで主張が認められないこともあります。
退職後であっても、上記のような証拠であれば集めておくことができる物もいくつかあると思います。ただ、すでに退職後で証拠を揃えることが困難な場合も多いかと思いますので、そのような方は後述する内容も参考にしてみてください。
内容証明郵便による請求
まずは、退職した会社に直接請求する方法があります。方法は内容証明郵便によって請求することをおすすめします。内容証明郵便とは、郵便局が書類の内容や送った日時を証明してくれるサービスで、送り先が「そのような書類は知らない」と、言い逃れをすることを防ぎます。
ご自身だけで請求する書面の内容を作成し送ることもできますが、正直に申し上げると、元従業員自らの請求に応じる会社も少ないです。
「残業代は発生していない」と反論されるか、「どうせ何もできないだろう」とぞんざいに扱われることが考えられます。
そこで、可能な限り弁護士に依頼して弁護士名義で請求してもらうことをおすすめします。弁護士名義で請求することで、会社側も相当なプレッシャーを感じ、未払い残業代の事実があれば素直に応じてくれることも考えられます。
依頼する場合、獲得できる残業代の割合によって決まることが多いので、費用倒れする心配も少ないです。無料で相談できる弁護士が多いので、相談だけはするようにしましょう。
労働審判の申立て
会社に直接請求しても応じてくれない場合、労働審判によって解決させる方法があります。
労働審判とは、裁判所を介した手続きで、当事者に審判官と審判員の第三者を加えて話し合いを行います。訴訟に比べて解決までの期間が短く(おおむね3ヶ月程度)、手続きも簡単ですので、まずは労働審判から始めてみるのもおすすめです。
ただし、第三者が話し合いに加わりますので、客観的にも残業があったと分かってもらう証拠の存在がより重要になります。
労働審判でも弁護士に依頼することで、手続きや話し合いを代理で行ってもらうこともできます。労働審判に関して不安がある方も一度相談してみましょう。
訴訟を起こす
上記の方法を取って解決しない場合、訴訟によって白黒ハッキリさせてもらえます。裁判で認められれば、仮に会社側が残業代の支払いを拒否していても支払う義務が出てきます。
裁判でも当然証拠が大事になりますね。また、期間も長い場合には1年以上かかることがあり得ます。手続きも複雑になりますので、弁護士への依頼も必須と言えるでしょう。
デメリットも多いので、上記の方法でどうしても解決しなかった場合の奥の手と捉えておきましょう。
退職後に残業代請求の証拠が揃わない場合の対処法
上記でも簡単に触れましたが、退職後に集められない証拠もあると言えます。証拠がないことで残業代請求も断念せざるを得ない状況になってしまうのでしょうか…?
退職後に証拠がない状態でも、以下の方法を取れば証拠の確保ができるケースがあります。いずれにしても交渉や手続きも難しくなりますので、弁護士に相談の上、実行を検討しましょう。
会社に開示請求を行う
会社は労働に関する重要書類を3年間保存する義務があります。「タイムカードや勤怠管理の情報が手元にない」という方でも、勤めていた時の情報を開示してもらうように請求できます。
ただし、このような証拠の開示請求を行うということは、残業代請求をされる前兆とも言えますので、会社が開示請求を拒否してくることも考えられます。そのような場合は以下の方法を取ります。
裁判所に証拠保全の申立てを行う
会社が開示請求に応じてくれない場合、『証拠保全』という裁判所の手続きがあります。証拠保全とは、裁判等で使う証拠を裁判所が直接確保してくれます。
退職後で証拠がない状態でも、このような方法を使うことで証拠の確保が可能です。「証拠がないから…」と諦めないでください!
退職後の残業代請求には時効に注意!
退職後の残業代請求でもう一点気を付けることは、時効の存在です。現在(2020年2月)の残業代請求の時効は2年間となっており、2年以上前の残業代に関しては請求しても相手が時効を理由に拒否すれば請求できないこととなります。
退職したのであれば、過去分の残業代はどんどん消滅していくことにもなります。転職等でお忙しいこともあるでしょうが、なるべく早くに残業代請求の行動を起こすようにしましょう。
時効の延長が濃厚|いずれにしても請求はお早めに!
残業代請求の時効に関しては、2020年4月の法改正によりに延長されることが濃厚になっています。延長の結果、原則的に時効が5年間、当面は3年間になるようです。
ただし、時効が延びたからといってのんびりして良いものではありません。時間の経過とともに証拠も集めにくくなりますし、会社側も「なぜ今さら」と請求に応じにくくなります。
いずれにしても残業代請求は退職後すぐに行うことを心がけましょう。
退職後の残業代請求では遅延損害金も一緒に請求する
退職後に残業代請求をするなら特に、遅延損害金も請求することを忘れてはなりません。本来、残業代は残業をしたその月に支払われるべきもので、未払い残業代があると言うことは支払いが遅れていることになります。
在職中であれば、支払期日の翌日から年6%、退職日の翌日以降は年14.6%の遅延損害金を請求することができます。
残業代そのものの計算に合わせて遅延損害金の計算も加わりますので、残業代の計算は結構複雑になります。相談でもある程度の情報が分かれば、ある程度具体的な金額を計算してくれる弁護士もいます。まずは残業代請求の専門家に相談してみてください(思った以上の残業代が残っていることが多いです)。
まとめ
退職後でも残業代請求は可能です。ただし、証拠が集めにくいことも考えられますので、必要に応じて弁護士の力も借りて下さい。
また、残業代請求には時効もあります。退職して時間が経てば、過去分の残業代は請求できなくなってきますし、証拠も集めにくくなります。こちらの記事をご覧の方で、すでに退職しているのであれば、なるべく早くに行動を起こすことをおすすめします。