2020.03.19 2022.12.20

保育士の残業代

保育士の残業代

保育士は人手不足もあり、一人当たり負担(すなわち長時間労働)が問題視されています。さらには、長時間労働をしてもきちんと残業代を支払ってもらえない『未払い残業代問題』も多くあると考えられます。

今回は、保育士の方の残業事情や未払い残業代問題、残業代をしっかり請求する方法についてご説明します。
 

保育士の残業事情

まずは、保育士の残業の実態についてご紹介します。

 

多くの保育士が毎日残業をしている

参考:「現役保育士、見合わない給料・ゆとりない保育環境のギャップが浮き彫りに|保育士バンク!」

『保育士バンク!』が、保育士500名に行ったアンケートによると、1日の残業時間について上図の結果が出ています。

『残業なし』という回答はなく、少なからず残業を強いられている保育士の方がほとんどのようです。多くの方が1日1~2時間残業という結果でしたが、それでも毎日続けば、月20~40時間程度の残業になります。

さらには、1日3時間以上残業している保育士の方も1割以上いるようです…。もし、3時間残業が毎日続けば、月に60時間以上は残業することとなり、明らかな長時間労働だと言うことができます。
 

持ち帰り仕事も多い


参考:「現役保育士、見合わない給料・ゆとりない保育環境のギャップが浮き彫りに|保育士バンク!」

さらには、現場での残業だけではなく、工作などの仕事を持ち帰ってしている方も8割以上いるとの回答がありました。

もともと工作は好きでやっていた方も多いでしょうが、「やらなくてはならない」と義務的になったり、仕事から帰ってきた後の作業となるとかかってくる負担も大きいです。

週の半分以上は持ち帰り仕事をしている方がいるようで、これも見逃されがちな未払い残業代の1つになり得ると考えられます。
 

保育士不足も深刻

「厚生労働省」によると、9割超の都道府県で求人募集に対して応募が下回っている結果になり、保育士の人材不足も起きていると言えます。

人手不足は結果として今いる保育士の方の業務負担を増やし、長時間労働の要因にもなっています。

それでいて、給与が低い職業でもあるので、『応募は少ないが離職も多い』という悪循環も生まれてしまっています。
 

保育士によくある未払い残業代問題

こちらでは、保育士によくある未払い残業代問題についてご説明します。
 

元々の給与が低い上に残業代が未払いになっていることも多い


参考:「現役保育士、見合わない給料・ゆとりない保育環境のギャップが浮き彫りに|保育士バンク!」
同じく、『保育士バンク!』によるアンケートでは、保育士が職場に求める改善点として上記の結果が出ました。

上で簡単に触れたように、多くの保育士の方が給与面での不満を持っているようです。これは、単に「基本給が低い」という思いが強いでしょうが、「残業代がきちんと支払われていない」と受け取ることもできます。残業代がしっかり払われていれば、月に数万円程度の手取りは増えますからね。

このように、給与面や労働時間での不満がある保育士の方が多いでしょうから、未払い残業代請求をすることで改善されることもあるかと思います。
 

サービス残業が当たり前のようになっている

人手不足の保育業界では、サービス残業が横行しており、断りにくくなっていることが未払い残業代問題の大きな要因となっています。

特に保育施設では、通常の子どもを預かっている時間帯のみを労働時間と考え、それ以外の業務にかける時間はないがしろにされていることも多いです。
 

《未払い残業代がある保育園で労働時間に含まれないことがある業務》
  • 延長保育
  • ミーティング
  • 工作
  • 保護者対応

 
上記の業務は、通常子ども達が帰った後に行いますが、その頃にはすでに1日の所定労働は過ぎているので、サービス残業として扱われていることがあります。

当然ながらこれらの仕事もれっきとした労働であり、労働時間として換算されるべきでしょう。

仮にタイムカードなどで早めに退勤を申告していたとしても、実際に上記のような業務を続けて行っていれば、サービス残業として未払い残業代の可能性が高いです。
 

持ち帰り仕事も残業になり得る

上記で持ち帰り仕事をしている方も多いとお伝えしましたが、持ち帰り仕事も残業となり、未払い残業代が生じていることも考えられます。

残業と判断できるポイントとしては、保育園から持ち帰って仕事を済ませておくように指示された場合や、職場だけで終わらせることは到底無理で持ち帰って仕事せざるを得ない状況にある場合などが挙げられます。

自発的に持ち帰り仕事をしている方でも無い限り、残業と考えられる可能性が高いですので、思い当たる方は一度弁護士に相談されることもおすすめします。
 

保育士が未払い残業代を取り返す方法

もともと給料が低いと思っている保育士の方でも、きちんと残業代を支払ってもらえるだけで経済状況も大きく変わるものです。未払い残業代がある方は、月に数万円、多い方で10万円以上あると考えられます。

最後に、保育士の方が未払い残業代を取り返す方法についてご説明します。
 

実労働時間や契約内容が分かる証拠を集めておく

証拠の種類 証拠の例
労働契約の内容が分かる物 雇用契約書
就業規則
実際の残業が分かる物 タイムカード
出退勤時間が分かる物
残業の経緯が分かる物 指示書
上司からのメール
実際の支払われた金額が分かるもの 給与明細
源泉徴収票


 
残業代請求において重要になるものが証拠の存在です。会社と直接交渉するにせよ、裁判所の手続きを取るにせよ、証拠が少なければ望まぬ結果にもなりやすくなります。

実際に働いたことが分かる証拠だけではなく、上記のような様々な情報が分かる証拠を複数用意しておくと良いでしょう。
 

交渉や内容証明郵便を送る

なるべく短期間で簡単に残業代請求をするなら、会社に直接残業代請求を行います。ただし、法的効力がないので、会社が応じてくれない可能性も十分に考えられます。

上記の証拠を揃えて根拠を持って請求したり、弁護士に介入して交渉・請求してもらったりすることで、会社が応じてくれる可能性も高くなります。
 

労働審判を申し立てる

当事者同士で解決が難しい場合、労働審判という方法があります。労働審判とは、裁判所を介した手続きで、審判官や審判員の第三者を交えた話し合いです。

第三者がいることで話もまとまりやすくなりますが、客観的に残業代未払いを理解してもらう必要がありますので、証拠の存在がより大事になります。
 

裁判を起こす

上記の方法でも解決が難しければ、裁判によって残業代請求を決めてもらうことが可能です。会社側が残業代の支払いを断固拒否していても、裁判での結果(判決)が出れば応じる必要があります。

ただし、裁判ともなれば解決までに1年以上かかることもありますし、手続きも難しく弁護士への依頼は必須になってきます。上記の方法でも解決できない場合の最終手段とお考えください。
 

まとめ

保育士の方は、長時間労働や持ち帰って仕事など、過酷な労働環境にあると言えます。それに対して給料が低いことに不満を感じている方が多いようです。

もともとの給料が低い方もいるかもしれませんが、中にはきちんと支払われるべき残業代が支払われていない保育士の方も多いです。

今回の内容を参考にしていただき、ご自身に未払い残業代があるようでしたら、弁護士に相談してみて具体的な解決策のアドバイスをもらってください。

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