2020.04.03 2022.12.20

残業代が50時間を超えた場合

残業代が50時間を超えた場合

残業50時間は平均よりも長く、残業代として10万円を超えることも十分に考えられるでしょう。また、50時間超の残業が毎月のように続くのであれば、働き方改革関連法で決められた残業時間の上限を超えていることも考えられます。

50時間を超える残業は十分に長いと言えますので、長時間残業が続く会社で働いていて一向に改善される見込みがない場合、労働基準監督署への通報などのしかるべき対応や転職も考えて良い段階です。

今回は、50時間を超える残業がどれほど長いのか?違法になるのか否か?などについてご説明します。
 

50時間を超える残業は長い?平均残業時間との比較

まず、50時間を超える残業が客観的に見てどれほど長いのかを、平均残業時間と比較しながらご説明します。
 

残業時間の平均は30~45時間程度

まず気になることが、50時間の残業が平均よりも長いのかどうか。結論を言えば、50時間超の残業は十分に長いです。

転職サービス関連のサイトを運営している『doda』が15,000名に行ったアンケートによると、平均残業時間は24.9時間となっていました。参考:「残業時間ランキング2019|doda」

他にも平均残業時間に関するアンケート調査はいくつもありましたが、どれを見てみても平均残業時間はだいたい30~45時間程度となっています。

平均残業時間と比べてみると、50時間の残業は多いことが分かります。
 

原則的な残業の上限時間は45時間

2019年に施行された『働き方改革関連法』によって残業時間の上限時間が明確に決まり、1ヶ月で従業員にさせられる残業は原則的に45時間までとなりました。つまり、50時間を超える残業は法律で決められた残業時間の上限を超えていることとなります。

上限には一部例外があり、繁忙期やトラブル発生時など臨時的な場合には1ヶ月100時間未満まで残業時間の上限を伸ばすことができますが、あくまでも臨時的な場合に限ります。毎月のように50時間を超える残業をしている場合、後述する労働基準法違反に該当することも考えられます。
 

50時間残業は1日2時間以上の残業

1ヶ月50時間を1日の残業時間で考えてみましょう。1ヶ月20~25日出勤すると想定すれば、1日2時間以上は残業していることとなります。

そうなると、途中の休憩込みで1日11時間は会社に居ることになります。さらに、準備や通勤も考慮すれば、15時間程度は仕事に関する行動を取っており、睡眠や食事などの生活に必要最低限の行動に時間を引けば、1日のうち残りの1~2時間程度しか自由な時間は作れないこととなります。

50時間を超える残業では、仕事がある日にこのような毎日が繰り返されることとなります。仕事とプライベートのバランスが良いとは到底思えません。
 

50時間残業の残業代の計算方法と計算例

実際に50時間を超える残業をしている場合、目安としてどれくらいの残業代が支払われるべきなのでしょうか?こちらでは基本的な残業代の計算方法と50時間残業した場合の計算例についてご説明します。
 

基本的な残業代の計算方法


まず、残業代の計算方法を簡単にまとめると上のようになります。
 

1時間当たりの賃金の求め方

1時間当たりの賃金は、就業規則等に載っている『基本賃金』÷『平均所定労働時間』で求めることができます。一般的に平均所定労働時間は160~170時間になることが多いです(8時間×20日出勤程度)。

例として、『基本賃金【30万円】』『平均所定労働時間【150時間】』にすると、【2,000円】が1時間当たりの賃金となります。
 

残業代には割増率をかける

残業時間に対しては割増賃金を加算して支払う必要があります。残業(時間外労働)に対する割増率は1.25倍です。
 

労働時間の内容 割増率
残業時間(時間外労働) 1.25倍
深夜労働 1.25倍
深夜残業 1.5倍
休日残業 1.6倍

 
また、深夜労働(22時~翌5時)や休日労働に対しても割増率が適用され、その場合に残業していればさらに割増率も高くなります。

1ヶ月で60時間を超える残業は割増率も上がる

今回は1ヶ月50時間の残業としてご説明していますが、1ヶ月に60時間を超えた残業についてはさらに高い1.5倍の割増率が適用されます。

  • 60時間まで=1.25倍
  • 60時間超=1.5倍(中小企業は2023年3月末まで1.25倍)

こちらの内容は現在大企業のみで、中小企業は2023年4月から適用となります。
 

50時間の残業した場合の計算例

それでは、実際に数字を当てはめてみて残業代を計算してみましょう。

  • 残業時間=50時間
  • 1時間当たりの賃金=2,000円
  • 割増率=1.25倍

 
これを計算すると、50時間残業での残業代は12万5,000円となります。

実際には基本給や就業規則に書かれている内容などで違いは出てきますが、50時間も残業しているとなれば、残業代だけで10万円を超えることは十分に考えられます

もし、50時間を超える残業を続けていても少額の残業代しか払われていない、もしくは払われていないようであれば、未払い残業代が残っている可能性が十分に考えられます。

1ヶ月の残業代でも10万円程度する状況で何ヶ月も未払いが続いていれば、合計で100万円を超える未払い残業代もあり得るでしょう。少しでもおかしいと思った方は、一度弁護士に相談することをおすすめします。
 

毎月50時間の残業が続くようならば違法もあり得る

「50時間の残業は十分に長い」とお伝えしましたが、さらに言えば、50時間の残業が毎月続くような場合、働き方改革関連法で決められた残業時間の上限を超えている可能性も考えられます。

残業時間の上限は原則的に月45時間以内です。繁忙期など特別な事情がある場合のみ45時間を超えても良いケースがありますが、それでも毎月50時間以上の残業が続くようであれば、労働基準法違反も考えられます。

タイムカードや就業規則などの長時間労働が行われている証拠を持って、労働基準監督署へ相談/通報することも検討しましょう。残業時間の改善を期待することができます。
 

残業代未払いにも要注意

もう1つの違法性として、長時間残業が蔓延している会社では同時に未払い残業代が生じているケースが多いと考えられます。繰り返しますが、50時間の残業では残業代だけで10万円を超えていることも十分に考えられます。

しかし、会社としてみれば、10万円の残業代は人件費として会社の負担となります。就業規則や労働契約の内容などによって残業代を減らそうと試みる会社がありますが、間違った導入の仕方で違法に残業代を払っていないことも多いのです。

50時間も残業をしているのにも関わらず、ほとんど残業代が支払われていないような方は、まずは弁護士に具体的な状況を相談してみてください。

相談だけでもある程度の未払い残業代を計算してくれますし、未払いとなっている残業代は取り返すことができます。決して泣き寝入りせずに、働いた分の賃金はきちんと払ってもらいましょう。
 

まとめ

50時間の残業は十分に長く、何ヶ月も続くようであれば、会社の違法性も考えられます。長時間残業をしているのにわずかな残業代しか貰えていない場合、未払い残業代が発生している可能性も考えられます。

長時間労働や未払い残業代でお困りの方は、一度弁護士や労働基準監督署へ相談するようにしましょう。

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