2020.04.14 2022.12.20

残業代の切り捨てについて

残業代の切り捨てについて

タイムカードや勤怠管理システムなど、会社によって残業時間の管理は様々ですが、特にタイムカードなどのアナログな方法で勤怠管理をしている会社では、残業代計算を楽にするために30分単位(もしくは1時間など)で切り捨てをされている会社もあると思います。

残業時間を切り捨てて、残業代計算して良いものなのでしょうか?

答えは、1日当たりは分単位で計算する必要があり、1分でも切り捨てれば違法です。月単位では30分以上の切り捨てが違法になります。

今回は、残業代の切り捨てに関する知識や切り捨てされている場合の対処法についてご説明します。
 

残業代の切り捨ては違法

冒頭でもお伝えしましたが、残業時間を切り捨てて残業代を計算することは違法である可能性が高いです。
 

残業代を計算する期間で切り捨てできる単位が決まる

残業代を切り捨てて計算できる単位は、残業代を計算する期間によって変わってきます。どの単位で切り捨てすることが違反になるのかから知っておきましょう。
 

原則的に残業代は1分単位で計算する

まず、残業代を切り捨てて計算することは原則的にできません。ですので、1分でも切り捨てがあれば違法の可能性が出てきます。厳密に言えば、1日に1時間1分残業をして、この1分を切り捨てて計算しているだけでも違法行為となります。

これは、残業以外の場面でも適用されることとなり、例えば、昼の1時間休憩を上司の指示で20分早めに切り上げて業務に戻った場合、本来であればこの20分も労働時間に含まれる必要があります。
 

1ヶ月の残業代は30分単位で計算が可能

一方、1ヶ月での残業代計算については、『30分未満の切り捨てを行っても労働基準法違反にならない』という内容の行政通達がありました。

1か月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。
引用:「労働基準法関係解釈例規について」

この内容によって、30分未満が切り捨て、30以上は1時間に切り上げて計算することができるようになりました。言い換えれば、残業代計算の行政通達は、上記の内容しかありませんので、1日の計算を1分でも切り捨てできないという裏付けにもなります。
 

切り上げは問題なし

ちなみに、切り捨てに関しては、違法性が問われますが、切り上げる分には何ら問題はありません。というのも労働基準法は労働者を保護するための法律です。

そもそも残業時間を切り上げることは、労働者にとってプラスになることとなるので、何も問題が無いのです。「計算が手間」という理由で、残業代計算の際にはすべての端数を1時間に切り上げて計算している会社もわずかながらあることでしょう。
 

残業代切り捨てで該当する違反行為と罰則

残業時間の切り捨ては違法だとお伝えしましたが、実際にどのような違反行為と罰則になるのかもお伝えします。
 

労働基準法第37条|残業代の未払いに該当

労働基準法第37条では、時間外労働に対する残業代(割増賃金)の支払額が義務付けられています。切り捨てられた残業代も未払いとなりますので、労働基準法第37条に違反しています。

労働基準法第37条違反に対する罰則は【6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金】です。
 

労働基準法第24条|全額払いの原則に違反

また、労働基準法第24条では、賃金を労働者に直接全額支払う『全額払いの原則』が決められています。もし残業代を切り捨てているのであれば、残業代の一部を支払っていないことになりますので、労基法第24条にも違反しています。

労働基準法第24条違反に対する罰則は【30万円以下の罰金】となります。
 

残業代が切り捨てられている場合の対処法

このように、数分の残業代でも切り捨てされていれば違法である可能性が高いと言えます。実際仮に毎日15分の残業時間が切り捨てされていて、1ヶ月(20日出勤)続くと1万円前後の残業代が切り捨てられていると考えられます。

もし、これが1年続けば10万円以上の未払い残業代があることになりますし、今後も改善されずに未払いが続いて同じ会社に居続けるとなると、その額も相当なものになると言えるでしょう。

なるべく早くに手を打って改善してもらえるような対処法を取っていきましょう。
 

証拠を揃えておく|証拠があることで相談先も対応してくれやすい

 

証拠の種類
証拠の例

労働契約の内容が分かる物
雇用契約書
就業規則

実際の残業が分かる物
タイムカード
出退勤時間が分かる物

残業の経緯が分かる物
指示書
上司からのメール

実際の支払われた金額が分かるもの
給与明細
源泉徴収票

 
後述する、会社や労基署に相談するにしても、実際に働いた時間や残業時間切り捨ての事実を分かってもらわないと、なかなか話が進まなかったり具体的なアドバイスがもらえないことにもなり得ます。

証拠は過去の未払い残業代を請求することになっても必要になる物ですので、準備しておいて損はありません。
 

会社に直接相談する|穏便に解決したい場合

本来は許されることではないのですが、「知らなかったから」「従業員が指摘しなかったから」残業代切り捨てを行っている会社もあります。

会社にきちんと改善を求めることで、良い方向に向かうことも期待できます。今の会社を続ける方で穏便に解決させたいのであれば、まずは試していただきたい方法です。

社内の相談窓口や労働組合がある場合は、残業代が切り捨てられているという問題を提起しましょう。1人だけでの問題提起に不安があるなら、同じ不満を持っている従業員で結託するのも良いです。
 

労働基準監督署に相談する|社内だけでの解決が難しい場合

会社が話を聞き入れてくれない場合、労働基準監督署に報告・相談をすることも1つの方法です。お伝えの通り、残業代の切り捨ては労働基準法違反が考えられますので、労基署も働きかけてくれる内容です。

ただし、きちんと残業代の切り捨てがある事実を証明できないと、なかなか行動にまで移ってくれません。上記でお伝えした証拠を揃えて相談するようにしましょう。

労働基準法違反の疑いがあると分かった場合、労基署は会社に対して調査を行い、違反の事実がある場合には注意指導を行ってくれます。
 

弁護士に相談する|残業代請求を考えている場合

1日十数分の残業代切り捨てでも積み重なれば10万円以上になってきますし、他にも未払い残業代の疑いがある場合には一緒に請求するべきです。残業代請求をするなら、弁護士に頼ることが一般的です。

弁護士に相談すると当然弁護士費用はかかってしまいますが、まずは無料で相談を受けてくれる弁護士が多くいます。相談だけでも、いくらくらいの未払い残業代があるのかを教えてくれたり、具体的にどのような方法で残業代を獲得するかを教えてくれます。

個別に相談できる点が非常に魅力で、より具体的なアドバイスを受けることができるでしょう。不安・疑問が多い方はぜひ一度弁護士相談も利用してみてください。
 

まとめ

残業代の切り捨ては違法の可能性が高いと考えられます。本来は1分でも労働時間を切り捨ててはなりません。一方、1ヶ月での残業代計算においては30分未満の切り捨てが認められています。

たかが1日10分程度の残業代切り捨てでも、1ヶ月、1年と続けば何万、十何万円の未払い残業代になってきます。

まずは社内での解決を図ってみて、それでも改善されない場合には、労基署や弁護士に相談してみてください。また、他の未払い残業代も考えられる方は、積極的に弁護士に相談してみて、残業代請求も視野に入れておきましょう。

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