2020.04.21 2022.12.20

翌月払いされる残業代

翌月払いされる残業代

残業が多かった月など、会社から残業代だけ翌月払いに遅らせることができないか提案されることがあるかもしれません。しかし、残業代だけを翌月以降にずらして支払うことは、違法である可能性が高いです。

今回は、残業代の翌月払いの違法性と、正しく残業代が支払われない場合の対処法についてご説明します。なお、あらかじめ支払サイクルを「当月分を翌月払い」に決めておくことは問題ありません。残業代の支払いだけを翌月以降に繰り越す場合についてご説明します。
 

残業代の翌月払いは違法|根拠法令や罰則について

冒頭でもお伝えしたように、残業代のみを翌月払いにすることは違法であると言えます。違法と言える根拠法令や罰則についてご説明します。
 

翌月払いが違法とされる根拠

残業代を翌月払いにする行為は、以下の労働基準法に違反していると考えられます。
 

支払期日が過ぎたら未払いになる

残業をした場合の残業代(割増賃金)には、支払い義務があります。本来残業代を支払うべき期日を過ぎてしまった場合、一時的であれ残業代の未払いとなり、労働基準法第37条の割増賃金を支払う義務に反したこととなります。
 

賃金は全額払いをする必要がある

労働基準法第24条には、賃金の全額払いの原則があります。ですので、基本給も残業代も一緒に支払わなければなりません。もし、残業代だけを翌月払いにするのであれば、労働基準法第24条に違反していることが考えられます。
 

違法行為に対する罰則

上記の労働基準法違反になってしまうと、以下の罰則を受ける可能性が出てきます。1度の違反でいきなり刑事罰を受ける可能性は低いのですが、労働基準監督署の注意を受けてなお改善されない場合などには刑事罰もあり得るでしょう。
 

労働基準法第37条|割増賃金未払いに対する罰則

6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金

労働基準法第37条違反の罰則は上の通りです。翌月払いにして支払いが1ヶ月遅れただけで、ただちに罰則を受ける可能性は低いのですが、違反であることには違いありません。

また、残業や休日出勤などで本来発生している割増賃金を支払っていない場合も、当然ながら、労働基準法第37条違反として上記の罰則を受ける可能性があります。
 

労働基準法第24条|全額払い違反に対する罰則

30万円以下の罰金

労働基準法第24条の違反に対する罰則は上の通りです。賃金の全額払いをせずに、繰り越しや分割払いをしている会社は上の罰則を受ける可能性があります。

こちらも、ただちに刑事罰を受ける可能性は低いのですが、このような刑事罰が用意されている違反行為であることは覚えておきましょう。
 

支払期日を過ぎた残業代は遅延損害金が適用

さらに、支払期日を過ぎて支払われる賃金に対しては、遅延損害金も発生していることとなります。遅延損害金の年利は6%(退職後は14.6%)です。

例えば、数万円の残業代を1ヶ月支払い遅れしたとしても、利息が数百円程度と、微々たるものですが、支払う期間が遅れたり、未払い残業代が累積していけば遅延損害金だけでも数万円してくることがあります。
 

支払いサイクルを「当月分を翌月払い」にすることは問題なし

最初にも簡単に触れましたが、今回お伝えしているケースは、「残業代のみ翌月払いに遅れさせる(繰り越す)」ようなケースです。

残業代について就業規則で「当月分を翌月払い」と定めることは、繰越処理の問題ではなく単なる支払サイクルの定めであるため、何の問題もありません。
 

残業代が翌月払いされる時の相談先や対処法

このように、残業代のみを翌月払いにすることは違法性があると考えられます。

1度の支払い遅れであれば、ある程度寛容に受け入れても良いと思う方も多いでしょうが、1回あることは2回目もあると思いますし、そもそも目先の残業代も支払えない状況になっているということは、会社の経営状況も厳しくなっているとも考えられます。

残業代の翌月払いが繰り返される場合や、働く会社の経営状況が良くない場合の相談先や対処法についてご説明します。
 

労働基準監督署に相談・報告|残業代の未払いが続くケース

残業代を翌月払いとして遅れて支払うことは労働基準法違反になりますので、労働基準監督署が動いてくれる内容です。

ただし、労働基準監督署は他の相談も多く受けており、そもそもの残業代が払われていないようなより深刻な問題を優先的に動く傾向にあります。

よって、相談は受けてくれますが、対応は遅くなることも考えられます。まずは相談する感覚で連絡してみるのも良いでしょう。何度も支払い遅れが続くようでしたら、残業代が支払われていない情報(給与明細や就業規則など)を持って相談に行くことで早く対応してもらえることが期待できます。
 

未払賃金立替制度の利用|倒産により会社を辞めた場合

残業代が払えないということは、経営状況も良くないと考えられます。もし、会社の経営難で事業停止になってしまった場合、支払われていない給与や残業代を立て替えてくれる制度があります。

独立行政法人の『労働者健康安全機構』では、未払賃金の立替払事業を行っており、未払い賃金の8割を補償してくれます。

ただし、あくまでも会社が倒産した時に利用できる制度ですので、会社が存続している間の利用はできません。賃金の未払いが続いて会社も倒産するようになった時の手段として覚えておきましょう。

参考:「未払賃金の立替払事業|労働者健康安全機構」
 

ハローワークでの雇用保険給付|退職後に受け取れる保険金

こちらも退職後に利用できる制度ですが、ハローワークで失業保険の手続きをしましょう。会社が残業代や給与を遅れて支払うことが理由の退職は、場合によっては会社都合退職として扱われ、失業保険を受けられる条件が緩和されます。

従業員への残業代支払いが滞る会社に見切りをつける方も多いでしょうが、失業保険も利用しながら、少ない影響で退職・転職できるように準備しておきましょう。

参考:「雇用保険手続きのご案内|ハローワークインターネットサービス」
 

まとめ

残業代が払えないからと言って翌月払いにずらすことは、全額払いの原則に反し、未払い賃金が発生している状態であると言えます。1度であれば寛容に受け入れてしまいそうですが、あまりにも続くようでしたら、会社そのもの経営状況が悪いと疑われます。

早々に見切りを付けて転職を考えても良いですし、もし未払い賃金がどんどん増えていくようであれば、労働基準監督署や弁護士への相談で解決させることもできます。また、退職後に利用できる制度もいくつかあります。

「会社の状況が悪いから仕方ない」と諦めるのではく、ご自身に損がないようにできることをしっかりやっておきましょう。

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