2020.04.28 2022.12.20

運送業(トラック運転手)の残業代とは

運送業(トラック運転手)の残業代とは

トラックの運転手は、長時間拘束されて過酷な現場が多いといわれており、実際にトラック運転手で過労死ラインとも言われる月に80時間以上残業している方も多いで一定数いるのではないでしょうか。

長時間労働でも、しっかり残業代までもらえていれば百歩譲れますが、中には働いた分の残業代を貰えていない方も多いです。そのような方は、残業代請求で高額な未払い残業代を取り返すこともできます。

今回は、トラック運転手の残業代事情や、未払い残業代を取り返す方法についてご説明します。
 

トラック運転手の残業の実態

まずはトラック運転手の残業事情についてご説明します。先にお伝えすると、運送業全体で長時間労働が問題視されており、トラック運転手も例外ではないでしょう。
 

運送業は残業が多くトラック運転手はその筆頭


参考:「運送業における労働時間と働き方に関する調査|厚生労働省」

こちらは、厚生労働省が運送業界(バス・タクシー・トラック)の平均的な残業時間を、運送会社約500社にアンケートした結果です。残業時間の長さに応じて色分けしましたが、平均で月に45時間以上残業している会社が30%以上ある結果となりました。

残業時間の上限以内【月45時間以内】 63.8%
残業時間の上限を超える【月45~80時間】 25.7%
過労死ラインを超える【月80時間以上】 5.9%


 
調査期間が少し古く、働き方改革関連法が施行される以前のものですが、2020年2月現在は45時間を超える残業は原則的にさせてはならない上限となっています(中小企業は2020年4月から)。

全体の30%の会社が原則的な残業時間の上限を超えていることになりますので、運送業は残業が多いと断言することができますね。
 

トラック運転手の残業が多い理由

トラック運転手の残業が長い理由は、以下のことがあるからです。
 

固定残業代が間違われた解釈で利用されている

一般的な会社員とは違い、トラック運転手は常に外で業務を行います。実労働時間の管理が難しくなるので、固定残業代制を導入している運送会社が多いです。

固定残業代とは、あらかじめ働く予定の残業時間に対する残業代を先に固定で払っておく制度です。

後述しますが、固定残業代制を間違って導入している会社も多く、「すでに残業代を払っているからいくらでも働かせてよい」と、長時間労働の原因にもなっています。
 

渋滞や荷待ちに影響されやすい

トラック運転手は、渋滞や荷待ち時間などの外部の状況に大きく影響を受けることが多いです。結果的に長時間労働にも繋がってしまいます。

例えば、事故による渋滞に遭遇してしまえば、簡単に何時間もの時間がかかってしまいます。また、荷待ち時間として待機させられることも多く、こちらも数時間単位の荷待ち時間が生じることのしょっちゅうあります(後述しますが、荷待ち時間も労働時間になり得ます)。
 

トラック運転手によくある未払い残業代問題の種類

長時間労働になりがちなトラック運転手の運転手ですが、きちんと残業代が支払われていればまだ良いでしょう。しかし、残業が多いゆえに本来払われるべき残業代がうやむやにされている方も多いです。

こちらでは、トラック運転手によくある未払い残業代問題の種類についてご説明します。
 

固定残業代の間違った認識

すでにお伝えしているように、固定残業代制を導入している会社でも間違っている認識で導入している所も多くあります。会社としては「払っているつもり」でしょうが、未払い残業代が残っているケースも多いです。

固定残業代制とは、『45時間分7万円の固定残業代を含む』などと、給料にあらかじめ残業代が含まれている契約です。

しかし、上の例では固定残業代になるものはあくまでも45時間分の残業代だけで、実際45時間以上残業をすれば、45時間を超えた残業代は追加で支払われるべきです。
 

歩合で残業代の代わりにされている

固定残業代制ではなく、歩合によって残業代の代わりにされていることがあります。こちらも上記と同じで、実際に働いた分の残業代以上歩合が出ていれば代わりにもなり得ますが、実際には微々たる歩合給が残業代の代わりとして済まされていることが多いです。
 

待機時間が労働時間になることもある

トラック運転手は荷待ち時間も多いですが、待ち時間として拘束されている場合には労働時間になる場合があります。

本来、休憩時間は労働から完全に開放されている時間です。待機時間も場所や行動がある程度していされていて、いつでも業務に戻らざるを得ない状況であれば労働時間とも考えられます。

もともとの労働時間が長いことに合わせて、待機時間の問題でも未払い残業代があると考えられます。
 

トラック運転手のための未払い残業代の請求方法

トラック運転手の長時間労働に対する未払い残業代問題は、年間で100万円を超える高額になるケースも多いです。

こちらでは、トラック運転手の方が未払い残業代を取り返す方法についてご説明します。
 

実労働時間や契約内容などが分かる証拠を集める

証拠の種類 証拠の例
労働契約の内容が分かる物 ・雇用契約書
・就業規則
実際の残業が分かる物 ・タイムカード
・出退勤時間が分かる物
残業の経緯が分かる物 ・指示書
・上司からのメール
実際の支払われた金額が分かるもの ・給与明細
・源泉徴収票


 
残業代請求において証拠の存在は重要です。あなたが「未払い残業代がある」と主張しても、証拠がないことで会社から反論を受ける可能性が高くなりますし、裁判官などの第三者にも認められないことになります。

まずは、今後の残業代請求を有利に進めるためにも上記の証拠をできるだけ多く揃えておきましょう。
 

【会社に直接請求】交渉や内容証明郵便を送る

残業代をなるべく早くに済ませるには、会社と直接解決させる方法が良いでしょう。会社と直接交渉したり、内容証明郵便での請求を行います。ただし、会社が応じるかどうかは任意ですので、拒否される可能性も考えられます。

上記の通り、証拠と根拠をきちんと持って請求し、弁護士に代理で交渉・請求してもらうことで会社側が応じる可能性も高くなるでしょう。
 

【裁判所を介した話し合い】労働審判を申し立てる

当事者同士では解決できない場合、労働審判によって残業代請求を行うこともできます。労働審判とは、裁判所を介して話し合いを行うことです。第三者が話し合いに加わりますので、当事者同士で解決できなくても、労働審判でなら結論が出ることも多いです。

訴訟に比べて解決までの期間が短く(おおよそ3ヶ月以内)、手続きも簡単ですので個人だけでも申立てが可能です。
 

【判決による決定】裁判を起こす

上記の方法でどうしても解決しない場合、訴訟を起こすことも未払い残業代請求の方法の1つです。判決で決まった内容には、会社側も従う必要がありますので、きちんと決着を付けたいのであれば、訴訟も検討すべきでしょう。

ただし、裁判官は客観的にしか判断しません。上記でお伝えした証拠が無いと、裁判で残念な結果になることも起こり得ます。また、手続きも難しくなり、期間も1年程度かかることもあります。ご自身だけで裁判に挑むとなると、相当な労力を要しますので、弁護士に依頼することが通常です。
 

まとめ

トラック運転手は長時間労働や未払い残業代が多く残っているとも考えられます。多い方では、100万円を超える未払い残業代があってもおかしくないでしょう。

まずは、労働契約内容や実労働時間などが分かる情報を持って、弁護士に相談されてください。労働問題に力を入れている弁護士であれば、ある程度の情報で未払い残業代の額を教えてくれるでしょう。

具体的な金額が分かってくれば、次に取るべき行動も分かってくるはずです。決して泣き寝入りすることなく、働いた分はきちんと払ってもらうようにしましょう!

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