2020.06.02 2022.12.20

残業代は請求の可否(管理職)

残業代は請求の可否(管理職)

お店の店長や課長職など、部下を管理・指示する立場の管理職の人が残業代の支給を受けられないケースが相次いでいます。これは労働基準法(以下、「労基法」)41条の「管理監督者については残業代が支給されない」という規定があり、管理職という肩書きを与えることで残業代の支払いを免れようとしているのです。実際には、管理職でも一定の基準を満たせば残業代を支払ってもらうことができます。

「管理職=管理監督者」ではない

管理監督者は労働時間、休憩、休日の制限を受けないという規定があるために、課長職以上には残業代を支払わなくてもいいという風潮があります。

しかし、労基法でいう「管理監督者」が、一般的に広く使われる「管理職」のことを指しているわけではありません。「管理監督者」に該当するかどうかは、役職名ではなく、業務内容や権限、勤務態様等の実態に即して判断されるべきとされています。
 

管理監督者の判断基準

労働基準法における「管理監督者」に該当するには、次に紹介する基準をすべて満たす人とされています。
 

①経営者と一体的な立場にあり、重要な職責と責任がある

会社の経営に関与している、経営者から重要な責任と権限をゆだねられている状態がこれに該当します。労働時間等の規制を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していなければ、管理監督者にはあたりません。
 

②出社、退社時間について、本人に裁量権があること

管理監督者は会社で決められた労働時間に拘束されず、自らの裁量で労働時間を決められます。労働基準で定められた労働時間や休憩、休日の制限を受けません。会社の就業規則に従う立場にはないためです。「課長」「リーダー」という役職名があっても、就業規則の勤務時間に従ったり、上司の決定を仰ぐ必要があったりする場合は管理監督者とは言えません。
 

③その地位と権限にふさわしい給与や待遇を受けていること

管理監督者でない労働者と明らかに給与や待遇に差があります。残業代の支給を受けなくてもいいほど十分な給与が支払われていることがこれに該当します。

このように、管理監督者に該当するかどうかは厳格な基準で判断されます。ところが、上記の基準を満たしていないにもかかわらず、管理職というだけで労働基準法における「管理監督者」と同義とみなされ、残業代の支給が受けられないことがあります。いわゆる「名ばかり管理職」問題といい、人件費節約のため管理監督者の制度を悪用して残業代を支払わないと主張するケースが後を絶たないのです。

なお、管理監督者ならすべての残業手当を支払わなくてもいいわけではありません。深夜労働(22~翌5時まで)をした場合、深夜手当が支給されます。当然ながら、残業代の支払いがないからといって健康を害するような長時間労働をさせることは認められません。
 

管理職でも残業代は請求できる

管理監督者の基準をまとめると、

  • ・経営方針の決定に参加できるほどの幹部ないし役員クラスの従業員
  • ・社員の人事考査や昇給・処分を決定できる立場にある
  • ・出勤・退勤時間を自由に決められる
  • ・部下と比較してかなり高額な給与を支払われている

 
これらに該当しなければ管理監督者には当たりません。肩書きではなく、あくまで実態で管理監督者の基準を判断します。

自ら労務管理を行う責任と権限を有していない、勤務時間に厳格な制限を受けている、賃金等でふさわしい待遇がなされていなければ、「管理監督者」には該当せず、残業代の支給を受けることができます。

管理職になったからと言って残業代を諦める必要はありません。残業代の請求を検討されている方は労働問題に詳しい弁護士にぜひご相談ください。

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