2020.06.23 2022.12.20

新型コロナで休業した場合の従業員の給与は?

新型コロナで休業した場合の従業員の給与は?

新型コロナで従業員に休業をさせる場合、給料の60%以上の休業手当を支給することになります。ただ、休業手当の支給が義務付けられるのは、会社都合によって休業が命じられる場合です。新型コロナによる休業は、企業からすれば不可抗力であるので、会社都合には当たらない可能性もあります。

この記事では、新型コロナで従業員に休業をさせる場合の休業手当や、休業が必要な場合に利用できる給付金などについてご説明します。
 

新型コロナで従業員に休業をさせた場合の給与と休業手当について

結論からお伝えすると、新型コロナで従業員に休業させる場合は、賃金の60%以上の休業手当を支給するのが無難です。また、やむを得ず休業手当を支給できない場合は、休業を回避するための具体的努力を使用者が実行している必要があります。
 

必ずしも給与の全額を支給する必要はない

新型コロナで休業要請を受けて従業員を休ませるようなケースでは、必ずしも賃金の100%を支給する必要がありません。『使用者の責に帰す事由』によって従業員に休業をさせる場合、使用者は平均賃金の60%以上の手当を支給しなければなりません。

なお、就業規則で休業手当を60%以上の任意の割合で定められている場合は、就業規則に沿った休業手当が支払われることになります。

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
引用元:労働基準法第26条
 

緊急事態宣言下での休業は会社都合にあたるのか

上記の条文には、手当を支払う前提条件として『使用者の責に帰すべき事由による休業』をあげていますが、緊急事態宣言下において、『使用者の責に帰すべき事由』に当たらないものとして次の2点が考えられます。

  • 1.従業員が自主的に休業する場合
  • 2.休業要請がなされて従業員を休業させた場合

1についてですが、例えば新型コロナに感染した従業員が自主的に休業を申し出てきた場合は、従業員の自己都合にあたります。したがって、通常の休暇と同じように有給休暇を取得するか、欠勤扱いにするかのいずれかになります。なお、新型コロナに感染して休業をした場合、要件を満たしていれば各種保険の傷病手当金を受け取ることが可能です。

2についてですが、新型コロナのような感染症による休業は、使用者にとっては『不可抗力』であるため、『使用者の責に帰すべき事由』がないと考えることもできます。

確かに新型コロナによって休業を余儀なくされた場合は、経営者のせいではないですし、労働基準法の額面通りに考えれば、休業手当の支払い義務がないようにも思えます。

ただ、今回の件では使用者に休業手当の支払い義務がないとは言い切れません。なぜなら、現段階では政府や厚生労働省などによって、不可抗力と会社責任の範囲が明確に定義されていないためです。

例えば『新型コロナによる休業は不可抗力である』という旨の内容が法律の条文や判例に明示されていれば休業手当を支払わないという判断もしやすくなりますが、現状はそうではないので、後に新型コロナによる休業が会社都合であるとの見方が強まれば、賃金未払いになってしまうことも考えられます。
 

不可抗力の要件を満たすには、休業を回避するための努力をする必要がある

「新型コロナによる休業は不可抗力で会社都合ではないから、休業手当は支払わないでいいのではないか」という見方もあるかと思いますが、厚生労働省では不可抗力の要件に次の2点をあげています。

不可抗力の要件

  • 1 事故の原因が事業の外部にあること
  • 2 事業主が最大の注意を尽くしても避けることのできない事故であること

上記要件を満たさない休業は、会社都合になる可能性があります。新型コロナは①に該当しますが、②については、休業をさせないで済むよう、使用者が具体的な努力を講じる必要があります。

例えば、在宅勤務や在宅での研修の導入をする、労働者側と協議をする、といった対応を検討する必要があります。

上記でもお伝えしたように、新型コロナが不可抗力にあたるかどうかは各事業の状況によって異なってくるため、会社都合ではないからと休業手当を支給しないのは、後々問題になりかねません。
 

新型コロナに関する支援や給付金について

とはいえ、新型コロナという外部要因が原因で、休業手当を支給するのは使用者側にとっては財務的に苦しいものです。ここでは、新型コロナに関する政府の支援や給付金についてご紹介しますので、必要に応じて活用を検討してみてください。
 

労災保険の休業補償給付

従業員が新型コロナに感染し、賃金を得られなかった場合は労災保険の休業補償給付を受け取ることができます。

休業補償給付の受給要件は次の3点です。

  • ・業務上の事由で病気や怪我を負い、療養している
  • ・療養のために仕事ができない
  • ・療養期間中、給与の支払いがない

休業補償給付を申請する際は、『休業(補償)給付 傷病(補償)年金の請求手続|厚生労働省』をご参照ください。
 

雇用調整助成金の特例措置

雇用調整助成金とは、経済上の理由で事業縮小を余儀なくされた事業者が、労働者に対して一時的に休業や出向などをして雇用の維持を図った場合に、休養手当や賃金の一部を助成するものです。

支給対象になる事業主は、次のとおりです。

  • 1.新型コロナウイルス感染症の影響により経営環境が悪化し、事業活動が縮小している
  • 2.最近1か月間の売上高または生産量などが前年同月比5%以上減少している
  • 3.労使間の協定に基づき休業などを実施し、休業手当を支払っている

引用元:雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)|厚生労働省

上記に当てはまる場合は、『雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)|厚生労働省』を参照に支給申請を進めましょう。
 

新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金

子供の小学校が新型コロナ感染拡大防止のために臨時休校し、親である労働者が休暇を取得することが必要になった場合に利用できる助成金です。

令和2年2月27日から9月30日までに取得した休暇が給付の対象となります。また、4月1日以降に取得した休暇については、1日あたりの上限額が8,330円から15,000円に引き上げられます。

詳細は、『小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援のための新たな助成金を創設しました|厚生労働省』をご覧ください。
 

働き方改革推進支援助成金(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)

リモートワークを新規で導入する中小企業事業主に対して、テレワークのための通信機器の導入や運用、就業規則や労使協定などの作成や変更などに対して助成するための制度です。

補助率は1/2となっており、最大100万円まで助成を受けられます。テレワークの導入を検討している場合は、『働き方改革推進支援助成金(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)|厚生労働省』をご参照ください。
 

持続化給付金

新型コロナの感染拡大で大きな影響を受けている事業者に対して、事業の継続を支えるために支給される給付金です。

給付の対象となるのは、以下の要件を満たす事業者です。

  • 1.新型コロナウイルス感染症の影響により、ひと月の売上が前年同月比で50%以上減少している事業者。
  • 2.2019年以前から事業による事業収入(売上)を得ており、今後も事業を継続する意思がある事業者。
  • 3.法人の場合は、
  • ①資本金の額又は出資の総額が10億円未満、又は、
  • ②上記の定めがない場合、常時使用する従業員の数が2000人以下
  • である事業者。

引用元:持続化給付金|経済産業省

詳細は、『持続化給付金|経済産業省』をご確認ください。
 

まとめ

新型コロナによる休業をする場合は、賃金の60%以上の休業手当を支給するか、休業が回避できるよう使用者が努力をする必要があります。不可抗力だからと賃金を支給しない選択肢もあるかもしれませんが、それでは新型コロナが収束した後の信頼関係にヒビが入ることは避けられません。政府による給付金や支援を活用し、被害を最小限に抑えられないか検討してみてください。

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