残業をしているにもかかわらず、会社から未払いの残業代があるという方は少なくないでしょう。
未払いの残業代を請求するためにはいくつかの手続きがあります。
しかしいざ残業代を請求しようと考えていても残業代をどうやって請求したらいいのか分からない方も多く見られます。また、手続きをした後の弁護士費用がいくらかかるのか不安の方も多いでしょう。
そこで今回は、残業代請求の基本的な流れや弁護士費用の相場などをご紹介します。
残業代請求の基本的な流れ
残業代請求の基本的な流れは、証拠集めをしてから示談交渉、労働審判、労働訴訟と進んでいきます。残業代請求をするにあたって、一番重要になってくるのが「証拠」です。
証拠がないと、企業との示談交渉も裁判も受け付けてくれないので注意が必要です。
残業代請求の基本的な流れは、証拠を集めてから示談交渉、労働審判、労働訴訟と進んでいきます。
①証拠集め
まず残業代を請求するためには、証拠が必要です。会社側からしてみると、未払いの残業代を請求されることは大きな問題になります。
なぜなら、当人への残業代を支払ったら他の従業員の残業代も支払うことになり、結果経営破綻する可能性があるからです。そのため、事実を裏付ける証拠がない限り、会社は支払いに応じてくれません。
会社に残業代を請求するには、まずはタイムカードや業務日報、就業規則など物理的証拠を集めておくことが重要です。他にも、証拠の補強となる家族や同僚からの証言なども持っておくと安心でしょう。
しかし中には、既に退職している人やタイムカード、業務日報などの証拠が会社にあるという方もいるはずです。そのような方は先に弁護士に相談してから開示請求を行いましょう。
会社が開示請求に応じない場合、裁判所に赴き証拠保全手続きを行うと安心です。証拠保全手続きでは、裁判官もしくは裁判書記官自らが出向いて開示請求を行います。
しかし証拠保全手続きを行うには、裁判官に説明をしたり重要な証拠を開示したりしなければいけないので、弁護士に依頼すると良いでしょう。
②内容証明郵便を発送
証拠を集めたら、会社側へ内容証明郵便を発送します。就業規則や雇用契約書、タイムカードなどからどのくらい残業代が支払われていないのかを計算し、その計算した内容を内容証明郵便に記載して会社へ送ります。
弁護士に依頼しない場合は請求者自身で未払いの残業代を計算し、内容証明郵便を用意して送付しなければなりません。そのため、最初から弁護士に未払い残業代のことを相談すると良いでしょう。
③示談交渉
示談交渉では、請求者が納得できる金額の未払い残業代を支払ってもらえるように会社と交渉します。弁護士に依頼せずに交渉する場合、費用は掛かりませんが会社側から無視されることが多いです。
早期解決したいのであれば、弁護士に相談して示談交渉してもらうと良いでしょう。示談交渉にかかる時間が事情により異なりますが、2~3ヶ月程度が多いです。
相手の会社がコンプライアンスを重視している場合は、示談交渉のみで支払いを行ってくれる場合があります。
示談交渉で未払いの残業代を払ってもらえる場合は、守秘義務契約を結んで解決します。
④労働審判
示談交渉で会社と合意に至らなかった場合や会社から無視された場合は、裁判所で労働審判を行います。
労働審判とは、解雇や給料の未払いなど事業主と労働者との間の労働に関するトラブルを解決するための法的手続きです。
表沙汰にしない非公開の手続きで、基本的には話し合いでの解決を目指しますが、話がまとまらない場合は審判によって解決案が提示されます。
弁護士に任せていれば書面作成などの作業をする必要もなく、1~3回程度裁判所へ赴くだけです。労働審判は通常2ヶ月半~4ヶ月程度で終了します。
⑤労働訴訟
労働審判の結果について請求者か会社側のどちらかが合意しなかった場合は、裁判所で労働訴訟となります。
労働訴訟とは一般的な裁判と同じく、原告である残業代請求者と被告の会社側が対立して裁判を行います。残業代が60万円以下であれば少額訴訟を行う手もあるので、残業代に応じて対応すると良いでしょう。
ちなみに少額訴訟とは、少額の残業代に対して1日で判決が出る簡単な裁判です。
少額訴訟は弁護士だけでなく個人でも提起できるので、弁護士を雇いたくないという方も利用できます。
しかし少額訴訟を提起するには金銭のみの請求など条件があるので注意してください。
残業代請求に掛かる弁護士費用
弁護士に支払う料金は、主に相談料、着手金、報酬金の3つです。
ここではそれぞれの料金相場についてご紹介します。
相談料
相談料とは、弁護士に相談をした時に支払う料金で30分もしくは1時間単位で料金が出ます。
昔の日本弁護士連合会の基準では、30分5,000円~25,000円と決められていましたが、現在は弁護士ごとに異なります。なるべく料金を安く済ませたい場合は、初回の相談料が無料の弁護士事務所を選ぶと良いでしょう。
着手金
着手金は、弁護士に仕事を頼む時点で支払う初期費用なものです。経済的利益が300万円以下の場合請求額の8%と定められていますが、相談料と同様に弁護士ごとに異なります。
残業代請求では着手金を無料にしている事務所もあるので、費用を抑えて弁護士に依頼したい方は着手金が無料の事務所を選んでみると良いかもしれません。
報酬金
報酬金とは依頼が終了した後に支払う金額で、基本的に定められている金額は300万円以下で16%となっています。
しかし成功報酬のみのところもあれば、決まった金額に加えて成功報酬として定めている弁護士事務所もあります。
こちらも弁護士ごとに異なるので、弁護士に依頼する前にどの弁護士が良いのかきちんと見極めてから依頼すると良いでしょう。
残業代請求の手続きに必要な書類はあるの?
残業代請求をするためにはいろいろな手続きがありますが、手続きに必要な書類はあるのでしょうか?
弁護士に依頼した場合、残業代請求の手続きに必要な書類は、勤務先のタイムカードや業務日報、就業規則などの最初に集める証拠だけです。
証拠さえあれば弁護士が残業代を計算して会社と交渉し、労働審判申立書作成などを行ってくれます。
しかし弁護士に相談せず自分で交渉から裁判まで行う場合は、様々なものを用意しなくてはなりません。
最後は、手続きに必要な書類をご紹介します。
証拠書類
証拠書類は、会社に示談交渉で残業代を請求した時に必要となる書類です。
証拠書類がたくさんあればあるほど有利になりますが、相手が弁護士を雇っている場合はこちらも弁護士を雇っていないと不利になります。
しかし証拠書類は最低限必要になるので、必ず証拠となるものがあればコピーしておくようにしましょう。
労働審判申立書
示談交渉が決裂した場合は労働審判申立書を用意して、労働審判手続きを裁判所で行う必要があります。
労働審判申立書は、正本1通と写しが相手方の数+3枚必要になるので注意しましょう。
訴状
労働審判も決裂した場合は、通常裁判へと移行します。
通常裁判では、訴状が必要となりますが、正本と副本のどちらも必要になるので注意しましょう。
まとめ
残業代請求をするには様々な手続きが必要になり、それと同時にたくさんの書類も必要になります。
しかし弁護士に相談して依頼すると、証拠の書類だけ必要となり他は弁護士に任せられるので便利です。
また個人で示談交渉や労働審判を行うとなると、ある程度の専門知識が必要となります。専門分野で働いていない一般の人からしてみると、難しい内容ばかりなので不安な方は弁護士に相談してみると良いでしょう。