2019.05.15 2022.12.20

不当解雇の証拠となるのはこんなもの

不当解雇の証拠となるのはこんなもの

不当解雇(ふとうかいこ)とは、解雇条件を満たしていなかったり、解雇の手続きが正確ではなかったりするのに、使用者が労働者を一方的に解雇することを指します。日本の労働者は「クビ」を宣告されたとき、自分が悪いと思い込んでしまう傾向があるため、不当解雇に気が付いていないことが多いようです。不当解雇は「証拠」がしっかりとそろっていれば、会社側と争って解雇の撤回を求められます。さらに、本来なら受け取れたであろう賃金の請求も可能なのです。まず、何が不当解雇の証拠になるかをしっかり把握して、自己の利益を守るための準備をしておきましょう。

不当解雇の証拠になるもの

一般的に不当解雇の証拠としては、次のようなものが考えられます。

  • ・雇用契約書や就業規則
  • ・解雇通知書
  • ・解雇理由証明書
  • ・人事評価書,勤務成績表
  • ・タイムカードや勤怠システム入力システムの履歴
  • ・解雇を言い渡されたときの録音やメールなど
  • ・仕事に関するメール
  • ・賃金規定、給与・賞与明細
  • ・解雇に関して会社側とのやり取りしたことがわかる書面

この中で、特に重要なのは「解雇理由証明書」でしょう。例えば、会社から「退職を考えてほしい」「この仕事は向いていないのではないか?」「自分が役に立っているのか考えろ」などと言われた場合には、解雇通知なのか、 自発的退職を促しているのかを判断できません。往々にして、会社側はこういった言い回しを使いがちですが、よくよく確認すると「解雇通知」であることがあります。

ただし、口頭でのやり取りは「言った・言わない」の争いに発展しやすく、不当解雇として断定することが困難になる可能性もあります。そこで、「会社側からの解雇であること」を証明するための書類として、解雇理由証明書が必要なのです。

不当解雇で必ず取得すべき「解雇理由証明書」とは?

解雇理由証明書は、会社側に請求しなければ発行してもらえないのが一般的でしょう。解雇通知書に解雇理由が書かれていることもありますが、これとは別に請求すべきです。また、法律遵守の意識が低い企業の中には、「解雇理由証明書の発行を行っていない」と断られることもあります。しかし、これは会社側の勝手な言い分であり、法律上は「交付の義務」があります。もう少し具体的に言うと、「解雇理由証明書は、労働者からの請求があったときは遅滞なく交付しなければならない」というルールがあるのです。これについては、労働基準法第22条にしっかりと明記してあります。

“労働基準法 第22条 (退職時の証明)
1.労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。”

ちなみに、解雇理由証明書には、労働者が請求していない項目を記載することができません。つまり、労働者側から「この内容を書いて交付してください」と指定できるのです。解雇理由証明書に記載を求めるべき項目は、次のとおりです。

○解雇理由証明書に記載を求めるべき事項

  • ・使用期間
  • ・業務の種類
  • ・当該事業における地位
  • ・賃金
  • ・退職の事由

最後の「解雇の理由」については、「自発的な退職ではなく、会社側からの解雇であることがわかるように」書いてもらうことを忘れないようにしましょう。また、解雇の種類についても判断できるように記載を求めたいところです。

一般的な解雇の理由としては「労働者の能力や適性を理由とした普通解雇」「業績不振などによる整理解雇」「規律違反や法律違反による懲戒解雇」などがあります。解雇理由は、これらのうちどの類の解雇であり、どういった背景があるのかを確認するために必要です。
その後の交渉や裁判における労働者側の主張に影響するため、必ず何度も確認して記載してもらうことをおすすめします。

また、Eメールや電子ファイルによる発行でも問題ありません。会社が発行したドキュメントであることがわかれば、証拠として扱うことができます。

不利な立場だからこそ証拠を準備して相談を

不当解雇の問題は、どうしても労働者側が不利な立場に置かれがちです。これは、会社側と労働者側の情報格差から生じているといえます。会社側は勤怠データをはじめとして多くの証拠を持つ一方、労働者に公開される情報はごく一部です。だからこそ、実際に解雇を告げられる前に多くの証拠を収集していくことが重要なのです。

また、労働者が単独で会社と交渉・争いを続けるには、膨大なエネルギーが必要ですから、専門家のサポートは必須になるかもしれません。個々の状況によって不当解雇の証明に必要な書類は変わるため、解雇理由証明書を含めて「何が必要か」を弁護士に確認してみてください。

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