2023.02.02 2023.02.02

サービス残業とは

サービス残業とは

使用者は労働者を原則として,休憩時間を除いて1日8時間,1週間に40時間(法定労働時間)を超えて,労働させてはいけません(労働基準法32条)。使用者が労働者を法定労働時間を超えて働かせた場合は,残業代を支払わなければなりません。
しかしながら,法定労働時間を超えて残業した場合でも残業代を労働者に対し支払わない企業も多くあり,サービス残業が社会問題となっています。
すなわち,サービス残業とは,時間外労働・深夜労働・休日労働に対して,適切な賃金が支払われない場合をいいます。
ここでは,サービス残業が起こる原因とサービス残業になりやすい勤務形態について解説していきます。

サービス残業が起こる原因

・労働者の意識

他の労働者も残業しているので自分も残業しなければならない,残業代を請求すれば自分の地位が危うくなるという意識が,労働者が残業をしても残業代を請求せず,その結果サービス残業を助長する原因の一つであるといえます。

・法的知識の不足

労働者を残業させた場合,残業代を支払わなければならないということを使用者が知らない場合や,残業代を支払わなくても大丈夫であろうと誤った認識を持つことが,サービス残業を助長する原因であるともいえます。

・使用者側のコストカット

使用者側が残業代を無駄なコストと解釈し,残業代を支払わないこともサービス残業の原因の一つといえます。

サービス残業になりやすい勤務形態

・年俸制の場合

企業の中には,賃金を1年間にいくらという形で年俸契約している場合があります。そして年俸の中に残業代が含まれているとして,残業代が支払われず,その結果,サービス残業となることがあります。
例えば,Aさんは,X社の従業員で,年俸が400万円である場合を考えます。X社はAさんに何時間も残業をさせていますが,Aさんに対して年俸の400万円を超える賃金を一切支払わない場合が考えられます。
しかしながら,年俸制だからと言って,残業代を一切支払わなくてよいというわけではなく,従業員が時間外労働を行った場合は,残業代を支払わなければなりません。
上の例でも,Aさんは時間外労働をしている場合には,X社は残業代を支払わなければなりません。

・残業時間の上限・下限が定められている場合

企業によって毎月の残業時間の上限を定めて,その上限までは残業代を払うがそれ以上は支払わないとして,上限を超えた部分についてサービス残業になる場合が考えられます。
X社は月15時間の残業を認めており,それを超える部分については残業代を支払わないとしている場合を考えます。X社の従業員であるAさんは,ある月20時間の残業をしましたが,X社から15時間分しか残業代が支払われず,それを超える5時間分の残業代が支払われないことになります。
逆に,企業によって毎月の残業時間の下限を定めて,下限に達しない限り残業代を支払わないとして,下限までの残業部分についてサービス残業になる場合が考えられます。
X社は月15時間の残業までは,残業代を支給しない場合を考えます。X社の従業員であるAさんは,ある月10時間の残業をしましたが,15時間に満たないためX社から残業代が支払われないことになります。
しかしながら,従業員が残業時間の上限や下限に同意していたとしても,時間外労働については残業代を支払わなければなりません。
上の例だと,X社が月15時間の残業時間を上限としている場合で,Aさんが20時間残業をした場合には,X社は,Aさんに対し,15時間を超えた5時間分の残業代も支払わなければなりません。逆にX社が月15時間の残業までは,残業代を支給しないとして下限を設定したとしても,月10時間の残業をしたAさんに対して,10時間分の残業代を支払わなければなりません。

・固定残業代の場合

企業の中には,固定残業代のみを支給し,残業時間にかかわらず固定残業代以上の残業代を支払わない企業もあります。固定残業代が予定している残業時間の範囲内で残業した場合には,固定残業代のみを支払えば問題ありませんが,固定残業代が予定している残業時間を超えた残業をした場合には,固定残業代だけでなく別途残業代を支払わなければなりません。

・管理監督者ではない役職者に対する場合

従業員がある役職についている場合で,毎月一定額の役職手当が使用者から支給されていることを理由に,その従業員がいくら残業をしようとも残業代を一切支払わない企業も中にはあります。
AさんはX社の従業員で,ある役職についており,役職手当として月5万円が支給される場合を考えます。Aさんは,ある月20時間の残業を行いましたが,月5万円の役職手当を支給されていることを理由に,X社はAさんに残業代を支払いません。
しかしながら,実質的に管理監督者の権限がない場合には,役職についていたとしても残業代を支払わなければなりません。
上の例で,Aさんが実質的に管理監督者ではない役職者であるとすれば,20時間分の残業代を月5万円の役職手当以外に請求することができます。
「名ばかり管理職」サービス残業も社会問題となっていますが,法律上の管理監督者でなければ残業代の支払いを請求することができます。
なお,法律上の管理監督者であれば残業代の支払は請求することができません。これについては,「残業代が請求できない場合」をご覧ください。

・労働時間が正確に把握できない場合

従業員の労働時間を正確に把握できないために,把握していない部分の残業代を支払わない企業も中にはあります。
しかしながら,事業場外労働など労働時間を正確に把握できない業務の特性に対応した労働時間制度でない限り,従業員の労働時間を正確に把握できないことを理由に残業代の支払いを拒むことはできません。

おわりに

労働者が残業を行った場合には原則として使用者は残業代を支払わなければなりませんが,残業代が支払われずサービス残業となっている場合も多くあります。
サービス残業は労働者の意識や使用者側の法的知識の不足や認識の誤りが原因となっています。
サービス残業になりやすい勤務形態も複数あるので自分がどのような勤務形態か,残業代が支払われているかを確認する必要があります。
当事務所では,残業代請求に関し経験豊富な弁護士が在籍しております。残業代請求を検討されている方は,当事務所の弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

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