退職は心身共に多くのエネルギーが必要な手続きであり、思うように言い出せない方は珍しくありません。一方、現代の日本では転職が当たり前になり、退職を検討する方は増えています。そこで生まれたのが退職代行サービスなのですが、これは弁護士以外に依頼するのはおすすめできません。ここでは、なぜ弁護士に退職代行を依頼すべきなのか、そのメリットを整理して紹介します。
退職代行を弁護士に依頼すべき3つの理由
退職代行を弁護士に依頼すべき理由は、以下3点です。
非弁行為に該当するリスクがゼロである
退職代行業者は、「非弁行為」に該当する行為を行っているケースがあります。非弁行為とは、「弁護士以外の人間が営業として行うことを禁止されている行為」です。
例えば示談交渉や賃貸物件の家賃支払いの督促を代行して報酬を受け取ると、非弁行為と判断されがちです。退職交渉も依頼者の法的な権利を主張して報酬を受け取るわけですから、本人と弁護士以外の人間が行えば、非弁行為に該当します。弁護士法の第72条では、非弁行為を禁止しており、これに違反した場合は2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科されます。
“弁護士法第72条 (非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。”
もし非弁行為に該当すると相手方が判断すれば、強硬な態度を崩さなくなり、結果的に退職手続きが進まないという結果になりかねません。
未払い賃金の清算を含めた手続きを”全て”任せられる
弁護士は、依頼者の第人として、退職交渉や社会保険・雇用保険などの手続きを代行できます。また、未払い賃金・残業代の請求・回収、ハラスメントの慰謝料請求も依頼できます。さらに付け加えると、勤務中に仕事が原因で発生した病気・怪我に対する労災認定の手続きも依頼できます。これは、弁護士に強力かつ広範囲な代理権が認められているからです。
無資格の退職代行業者は、いわゆる「伝言」レベルの業務しか請け負うことができず、結局は労働者本人が会社と接触する必要が出てきます。退職代行を検討するレベルなら、会社の人間とはなるべく接触したくないというのが本音ではないでしょうか。心理的な安心と労力・手間の削減を目的とするなら、弁護士への依頼がベストです。
失敗の可能性が非常に小さい
弁護士は依頼者の話をきき、希望の条件などを全て把握したうえで、会社側と交渉する力を持っています。また、会社側の主張が法的に正しいかどうかを判断し、もし違法であれば指摘して改善を求めるノウハウもあります。
よくある例としては「急な退職は認めない、うちのルールでは2か月前に申し出て上司の承認を得ることになっている」といった会社側の誤解に対し、法律が認めている本来の権利を主張することができます。つまり、「退職は労働者の一方的な意思表示で効力が発生するため、会社の承認は必要ない。期間も2週間前で十分である」という反論を述べるわけです。
こういった反論は弁護士以外の人間でも可能ですが、実務経験と知識を持つ弁護士が発することで、会社側への脅威となります。したがって、依頼者の希望通りに退職手続きが進みやすくなるのです。
労働審判や訴訟まで一貫した対応が期待できる
労働問題のこじれは、最終的に労働審判や裁判によって解決しなくてはなりません。どちらも、弁護士の専門知識によるサポートが必須です。自治体に設置されている労働局でもトラブルの解決をサポートしてくれますが、あくまでも「あっせん」や「助言」の意味合いが強く、相手方にとって脅威とはなり得ないでしょう。100%確実に退職までサポートをうけたいならば、弁護士がおすすめです。
費用以上のメリットがある弁護士の退職代行
このように弁護士に退職代行を依頼することで、「確実に」「安心して」「手続きの全てを任せられる」というメリットを享受できます。たしかに、費用は数万円かかります。しかし、退職交渉に要する手間やエネルギーを考えれば、それほど高額ではないと考えられます。また、未払いの残業代・退職金・労災認定など、退職交渉で得られる金銭的利益があれば、十分相殺できるレベルでしょう。
退職時のストレスや手間を減らし、次の仕事へスムーズに移っていくためにも、ぜひ弁護士への依頼を検討してみてください。