- 残業代が支払われていないから請求したい
- 残業代請求するときには、何から手をつければ良いのか?
有利に残業代請求を進めるためには、適切な方法・流れを理解しておく必要があります。
以下で残業代請求の手順・流れをみていきましょう。
1.証拠を集める
残業代を請求するには、まずは証拠集めが必要です。証拠がない状態で企業側へ支払いを求めても拒絶されるおそれが高いからです。
就業規則や給与明細書、タイムカードやシフト表、業務日報、業務用パソコンのログインログオフ記録など、残業代請求ではさまざまな資料が必要です。
ご自身で何を集めたらよいか分からない場合、弁護士がアドバイスしますのでお気軽にご相談下さい。
なお退職後の残業代請求などの事案で、自分では証拠を集めるのが困難な場合や会社による隠蔽のおそれが高い場合、弁護士が証拠保全を申し立てて証拠を入手することも可能です。
2.残業代を計算する
資料が手元に集まったら、残業代の計算をしましょう。
残業代を計算するときには、1時間あたりの基礎賃金額と残業時間、割増賃金率を明らかにして以下の計算式にあてはめます。
1時間当たりの基礎賃金額×残業時間×割増賃金率
割増賃金率は時間外労働、休日労働、深夜労働などの状況によって異なるので、それぞれ別途計算して未払い分を合計しましょう。
残業代請求権の時効は2年なので、請求できるのは過去2年分の未払い残業代です。
3.会社へ通知する
残業代の計算ができたら、会社へ未払い残業代の請求書を送付しましょう。
このとき「内容証明郵便」の利用をお勧めします。内容証明郵便とは、郵便局と差出人の手元に控えが残り、後々になっても郵便局が文書内容を証明してくれる郵便です。
請求した証拠を残せますし、普通郵便よりも会社側へ強いプレッシャーをかけられます。
弁護士が弁護士名で内容証明郵便の請求書を送ると、労働者ご本人が対応するよりもなおさら強いインパクトを会社側へ与えられますので、よければご検討ください。
また内容証明郵便には残業代の明細書をつけることができないので、残業代を計算した明細書は普通郵便などで別送すると良いでしょう。
4.交渉する
内容証明郵便で残業代の請求をしても、会社側が労働者側の請求額をそのまますぐに支払うケースはレアです。通常は、会社と残業代の支払いについて交渉しなければなりません。
残業代がいくら発生しているのか、そのうちいくらをいつまでに支払うのかなどを取り決めます。
5.合意書(和解書)を作成する
交渉によって残業代の支払い額や支払い方法に合意できたら、その内容を「合意書(和解書)」にまとめます。
口頭で確認しただけでは相手が約束通りに支払わなかったときに追及しにくくなるため、必ず書面化しましょう。
和解書には、企業が残業代支払い義務を認めること、支払われることとなった残業代の金額、支払期日、支払い方法などを書いて企業と労働者が双方署名押印します。
2通作ってお互いが一通ずつ所持しましょう。
6.労働審判を申し立てる
企業側と残業代についての話し合いをしてもお互いに合意できない場合があります。内容証明郵便などで請求をしても、企業側が無視したり「払うつもりはない」などと開き直ったりして一切対応しないケースもあるでしょう。
その場合、裁判所で「労働審判」を申し立てるようお勧めします。
労働審判は、残業代請求や解雇トラブルなどの労使間トラブルを解決するための裁判手続きです。通常訴訟よりも手続きが簡易でスピーディに解決できるメリットがあります。
当初の3回は話し合いをしますが、話し合いで解決できなければ審判によって審判官が解決方法を決定します。
労働者側がきちんと未払い残業代を証明できれば、裁判所が会社側へ支払い命令を下します。
ただし当事者が異議を申し立てると審判の効力は失われます。
7.労働訴訟を提起する
労働審判でも解決できなければ、通常の訴訟を申し立てましょう。
訴訟は複雑な対応が必要で時間もかかり、弁護士によるサポートなしで進めるのは困難です。ただし判決になると「遅延損害金」や「付加金」もつけてもらえるので、交渉や労働審判よりも高額な支払いを受けられる可能性が高く、デメリットばかりではありません。
残業代請求をするときには、当初の証拠集めの段階から弁護士によるアドバイスを受けていると適切に対応できて有利に進められる可能性が高くなります。また弁護士が代理で会社へ内容証明郵便の請求通知を送ると、会社側が真摯に対応するのできちんと残業代が支払われるケースが多々あります。
未払い残業代問題でお困りの方がいらっしゃいましたら、お早めにご相談下さい。