2020.01.31 2022.12.20

変形労働時間制とは

変形労働時間制とは

変形時間労働制とは、労働時間を法定労働時間で決められた1日8時間にするのではなく、月や年単位で調整することで、繁忙期や閑散期などに対応していく労働時間制度です。

変形労働時間制を用いれば、1日10時間労働でも残業していないこともありますし、6時間労働が定時となる場合もあります。

時期によって変動していくので、どこから残業になるのかが難しくなりますが、変形労働時間制でも残業と残業代は発生します。

今回は、変形労働時間制の仕組みと問題点などについてご説明します。
 

変形時間労働制とは?変形時間労働制の仕組み

冒頭でもご説明したように、変形時間労働制とは、労働時間を『1日8時間/1週間40時間』の法定労働時間ではなく、月/年単位で管理する労働時間制です。

例えば、上の図では①と④が法定労働時間の『1日8時間/1週間40時間』の法定労働時間を超えています。しかし、③を1日6時間の労働時間にすることで、月合計で165時間の労働時間としています。

これによって、後述する月単位の法定労働時間をクリアできるようになります(月29日以上の場合)。

月末月初で決算業務等が増えるような職場では、このような変形労働時間制を導入して効率よく働いてもらうことが可能となります。
 

月/年単位で労働時間を管理する

変形労働時間制は通常、『月単位』『年単位』のいずれかの期間で設定します。それぞれの期間で所定労働時間を決める場合、以下の法定労働時間内に収めて決めていく必要があります。
 

1ヶ月単位の変形労働時間制

1ヶ月の日数 法定労働時間
28日 160.0時間
29日 165.7時間
30日 171.4時間
31日 177.1時間

 
1ヶ月単位での法定労働時間は、上記の通りです。月ごとに日数が違いますので、日数に応じた法定労働時間以内に収めて労働時間を組んでいきます。

上の図でご紹介した例の労働時間は月合計165時間となっていましたので、1ヶ月29日以上の月であれば問題ありません。

月単位の変形労働時間制に関しては、労働時間の詳細を就業規則に明記することで導入が可能となります。
 

1年単位の変形労働時間制

1ヶ月の日数 法定労働時間
365日 2085.7時間
366日(閏年) 2091.4時間

 
年単位での法定労働時間は上記の通りです。例えば、年間通して繁忙期と閑散期が顕著に訪れる事業などでは導入を検討しても良いでしょう。

ただし、年単位の変形労働時間制を導入する場合には、労使協定を結び、その内容を労働基準監督署へ提出する必要があります。
 

変形時間労働制のメリット

上記でも簡単に触れましたが、変形労働時間制の大きなメリットは、業務が多くなる時期、少なくなる時期それぞれに分けて、効率良く働いてもらうことができることです。

特に企業側のメリットが大きいでしょう。無駄なく働いてもらうことで、余計な人件費(残業代)を抑えることが期待できます。

一方、労働者からしてみても、忙しい時にはしっかり働き暇な時には早く退社できて、メリハリがある働き方ができます(後述する問題も起こり得ますが…)。
 

変形時間労働制について就業規則で明記する必要がある

このような変形労働時間制ですが、「明日、多く注文が入ったから10時間労働にしてくれ」と、直前に労働時間の長さを決めることはできません。

変形労働時間制で設定した労働時間は、予め就業規則に明記しておく必要があります。

  • ・始業時間
  • ・終業時間
  • ・労働時間が変わる日

 
就業規則に書いておく内容は主に上の内容です。労働者がいつから何時間働くのかが事前に分かるようにしておく必要があるのです。
 

変形時間労働制でも残業が発生する

変形労働時間制でも就業規則に書かれている労働時間以上働いたのであれば、残業代が発生します。

例えば、上の図で青色部分が変形労働時間制で決めた労働時間だとします。そのうち黄色部分が超えて働いた時間になり、これは残業時間となります。

特に③は法定労働の1日8時間以内でも残業が発生していることとなります。後述しますが、変形労働時間制では1日の労働時間が変わりますので、残業代未払い問題が起こり得る要因でもあるのです。
 

変形時間労働制の問題点

上でも簡単に触れましたが、変形労働時間制での問題点についてご紹介します。
 

残業代の未払い問題

変形労働時間制だから残業が発生しないなどといったことは一切ありません。例えば、変形労働時間制で1日10時間労働が設定されている会社で、さも当たり前のように「うちの会社では10時間労働が定時」などと、言われている会社があったとします。

仮に10時間労働で20日出勤したとすれば、合計で200時間となり、月単位での法定労働時間を優に超えていることになります。

この場合、そもそも変形労働時間制が適切に設定されていないか、月/年単位の法定労働時間を超えて働いた残業代が未払いになっていることが考えられます。
 

長時間労働問題

また、長時間労働の要因になり得るケースも考えられます。先ほどと同じく、変形労働時間制の誤った解釈で、1日10時間労働が当たり前の会社があったとします。

この労働時間で25日働くと、月250時間労働となり、1ヶ月の法定労働時間から80時間程度超えて働いていることとなります。

80時間を超える残業は、『過労死ライン』とも言われており、過労死と労働時間の関係性が高まるほどの長時間労働です。

変形労働時間制はあくまでも、忙しい時期と暇な時期にメリハリを持たせる労働時間制であって、1日当たりの労働時間を伸ばせるものではありません。このような問題を抱える会社でお勤めの方は、一度弁護士や労働基準監督署へ相談されることをおすすめします。
 

まとめ

変形労働時間制を取り入れることで、『1日8時間/1週間40時間』の法定労働時間を超えて働いてもらうことも可能です。

ただし、月/年単位での法定労働時間に収めて労働時間を設定し、所定労働時間を超えた場合にはきちんと残業代も支払う必要があります。

繁忙期と閑散期が明確な会社では、変形労働時間制が取り入れられている場合がありますが、正しい設定や運用がされていないようであれば、残業代未払い問題なども考えられます。

「常に法定労働時間(1日8時間)を超えて働いている」「毎日長く働いているのに残業代が払われない」このような状況に置かれている方は、一度弁護士や労働基準監督署へ相談するようにしましょう。

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