2020.03.27 2022.12.20

退職勧奨された場合にも残業代請求はできますか

退職勧奨された場合にも残業代請求はできますか

退職勧奨とは

退職勧奨(退職勧告)とは,使用者が労働者に対して自己都合退職を進めることです。使用者が,労働者を解雇したいが,突然解雇するのではなく,労働者側から退職の申し出をさせるように勧めるという方法です。
使用者が労働者を解雇するためには,①客観的に合理的な理由があり,社会的相当性があること(労働契約法第16条),②就業規則や労働協定に定めている解雇事由に従って解雇していること,③法令で定められている解雇禁止事由に該当しないこと,④30日以上前に解雇の予告を行うか,予告に代わる解雇手当を支払うことという高いハードルが定められています。そのため,退職勧奨を利用して,労働者を自発的に退職させるようとするのです。
 

どのように退職勧奨は行われるのか

退職勧奨の方法としては,早期退職者を募集したり,個別の労働者に対して面談等で退職条件を提示するなどの方法があります。
なお,使用者が労働者に対して執拗に辞職を求めるなど労働者の人格的利益を侵害する態様で退職勧奨が行われた場合には,労働者は使用者に対し不法行為(民法第709条)として損害賠償を請求することができます。近時の裁判例では,繰り返し執拗に退職勧奨が行われ,その際に「自分で行先を探してこい」,「ラーメン屋でもしたらどうや」,「管理職としても不適格である」など労働者の名誉感情を不当に害する屈辱的な言辞が用いられた事案で,社会的相当性と認められる範囲を超えた不当な退職勧奨であるとして,退職勧奨を行った理事および使用者の不法行為責任が肯定されています。
 

退職勧奨には応じないといけない?

退職勧奨に応じるか応じないかは,労働者の自由です。ですので,退職勧奨に応じたくなければ,拒否したうえで勤め続けることができます。
労働者側としても,上記のように,無理やり退職勧奨に応じさせるような言動をすることは違法です。
 

退職勧奨された場合,残業代はどうなる?

退職勧奨された場合でも,それに応じて退職しない限りは,労働者であることに変わりはないので,当然残業代を請求することができます。
残業代とは,法定労働時間を超えて働いた場合に支払われる割増賃金のことをいいます。時間外手当とも呼ばれます。
 

所定労働時間とは

労働契約において,労働時間の開始時と終了時を示すものとして,「始業時」,「終業時」が定められることとなります。労働契約というのは,一定の時間によって表わされる労働者の労務の提供に対して,使用者が,その対価である賃金を払うという関係であるから,何らかの形での賃金の対価となる労務提供の「始業時」,「終業時」が契約上定められているのが通常です。そして,労働契約によって定まる「始業時」から「終業時」までの時間が「所定就業時間」,そこから契約によって定まる休憩時間を差し引いた時間が「所定労働時間」となります。
 

労働時間の上限

労働基準法は,休憩時間を除いて一日に8時間を超えて労働させてはならず,1週間に40時間を超えて労働させてはならない旨を規定しています(労働基準法32条)。これを「法定労働時間」といいます。この法定労働時間の制限を超えて労働者を労働させる場合あるいは休日に労働させる場合を「時間外労働」,「休日労働」となります。
労働者に時間外労働あるいは休日労働をさせた場合には,使用者は,労働基準法37条に規定された割増賃金の支払い義務が生じます。
 

退職勧奨で不当な扱いを受けたら弁護士に相談を!

退職勧奨を執拗に受けている場合や,残業代がつかないなどの不利益な取扱いを受けている場合には,まずは弁護士にご相談ください。

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