求人情報を閲覧していると給与の額のところに「固定残業代〇万円を含む」という記載している会社があります。固定残業代は一定時間の時間外労働があったとみなされた上で支給されることから「みなし残業代」と呼ばれ、多くの企業でこの制度を導入しています。しかし、このみなし残業代の制度を悪用して残業代を支給しないケースも見られます。
みなし残業代の本当の意味とは
固定給にプラスして時間外労働一定時間分の割増賃金をあらかじめ含んだ金額を定額で支払う制度が「みなし残業代」です。毎月決まった金額の残業代が支給されることから「固定残業代」とも呼ばれています。
みなし残業代が支払われる職種として、事業所外で仕事をする営業職や、結果が求められる研究職やデザイナーなどがあります。実労働時間の把握が難しかったり、固定の基本給だけを支払う計算方法がそぐわなかったりする職業でみなし残業代が支払われているようです。
残業代の計算が容易になる点は会社側にもメリットがあるほか、従業員も規定のみなし残業時間よりも少ない残業時間だったとしても、みなし残業代が減額されることはありません。
例えば、毎月20時間の残業時間を含んだ金額を支給している会社で、実際の残業時間が月20時間を超えていなくても20時間分の残業代が支給されます。そして、20時間を超えて残業した場合はその超過分の残業代を別途支払わなくてはなりません。
ところが、一部の会社の中にはみなし残業代の制度を悪用して「残業代は固定給に含まれている」といい、みなし残業代の分しか支給しないところがあります。
本来ならみなし残業時間を超えた残業時間については割増賃金が支払われます。超過分の残業代が未払いの場合は、会社に対して残業代を請求できます。
なお、どれくらいの残業時間を「みなし残業」とするかは会社によって異なります。月に10時間~45時間くらいまで設定しているところが多いようです。
みなし残業代を支払うための条件
みなし残業制を導入する場合、次の条件をすべて満たす必要があります。
①みなし残業の時間と金額を明確にすること
求人情報に書かれた給与額の中にみなし残業代が含まれている場合、「どれくらいの残業時間」を想定して「どれくらいの金額」を支給しているのかを記載しなければなりません。そして、残業時間とみなし残業代として設定した金額の根拠を明示することが求められます。
②固定給の金額を明示
みなし残業代とは別に固定給の金額も明示する必要があります。例として
※みなし残業時間月30時間を含む。30時間を超える場合は超過分を別途全額支給
というように記載しなければなりません。
③時間超過分は別途支給する旨明示
みなし残業時間を超えて残業した場合、その超過分については別途残業代を支給する旨を記載する必要があります。
そして会社はこれらの情報を求人情報だけでなく、就業規則や雇用契約書にみなし残業代が支払われるよう取り決め、従業員にも広く周知することが義務付けられています。
みなし残業代を超えた残業代を請求するには
このように、みなし残業代は残業時間全部に対する残業代ではなく、想定の残業時間を超えた場合には、会社側は超過分の割増賃金を支払わなければなりません。
一定の残業時間を超えているにもかかわらず、会社から残業代の支払いを拒まれた場合は弁護士に相談することをおすすめします。弁護士が従業員に代わって会社と交渉を進められるほか、交渉が難しくなったときは労働審判や裁判を起こすこともできます。そして実際に超過分の残業代の支払いが認められた例もあります。まずは労働問題に詳しい弁護士にお気軽にご相談ください。