会社に対して未払い残業代を請求する場合、どのくらい過去にさかのぼって請求できるでしょうか。実は、際限なく請求できるわけではなく、労働基準法により時効が定められています。
2年までさかのぼって請求できる
未払い残業代は、本来の支払い日から2年で時効を迎えます。
例えば、「毎月末締め翌月25日払い」の会社で2018年3月1日から20年3月31日の未払い残業代を請求するとします。2018年3月分の給与は本来2018年4月30日に支払われるべきものです。ここから2年経過すると、残業代の請求権が時効によって消滅することになります。
よって、2018年3月分の残業代を請求する場合、2020年4月30日までに請求しなければなりません。
民法改正により時効が「2年」から「3年」に延長
ただ、2020年4月の民法改正により、残業代請求の消滅時効は2年から3年に延長することが決まりました。
この度の民法改正で基本的な債権の消滅時効が5年になったことにより、労働基準法における賃金請求権の時効も5年にすべきという議論がありました。しかし、経営者側の負担が増えることを考慮し、改正労働基準法では「当面の間」3年間に延長という運びになりました。
時効の起算点は、従前と同様に「給料を請求できるときから3年」になります。2020年4月に未払い残業代を請求する場合、3年さかのぼって2017年3月分の給料が支払われる2017年4月分から請求が可能です。
正確な消滅時効を確認したい方は弁護士に相談のうえ、未払い残業代の請求手続きを進めると良いでしょう。
時効を中断させるには「催告」をする
未払い残業代を請求するのはある程度の時間がかかります。労働審判かもしくは調停・裁判などによって数ヶ月先になることも珍しくありません。その請求手続きをしている間も時効は進行してしまうので、時効を中断させるに「催告」の手続きを行います。
ここでいう催告とは、「未払い残業代を支払いなさい」と会社に対して意思表示することで、進行している時効を中断させることができます。
上記の例で言えば、2018年3月分の未払い残業代の請求権は2020年4月30日で時効を迎えますが、催告をすると2020年4月30日を過ぎても請求できるようになります。
内容証明郵便で催告の手続きをすること
催告は口頭ですることもできますが「言った・言わない」の争いを招く恐れがあるので、書面で、なおかつ内容証明郵便で送る方が賢明でしょう。
内容証明郵便は「いつ、誰が、誰に宛てて、どのような内容の郵便物を発送したか」を証明できるものです。書面で催告しても「届いていない」「紛失した」と言われてしまう可能性があるためです。確実に相手方に催告したことがわかる内容証明郵便の方が、こうした事態を未然に防げます。
未払い残業代を請求する場合、弁護士に相談しよう
残業代の請求は、労働者に認められている権利です。とはいえ、在職中に未払い残業代を請求すると、人件費を節約したい会社側と少しでも残業代がほしい従業員との間でトラブルに発展する可能性が高くなります。
そのため、未払い残業代は「在職中は請求しづらいから退職後に請求しよう」と考えている方が多いかもしれません。2年の時効を迎えていなければ、退職後でも請求はできるので、できるだけ早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。もちろん在職中からのご相談でも対応できます。在職中でも必要となる証拠の準備や残業代の計算だけでなく、未払い残業代請求の手続きを進めることはできます。
未払い残業代の請求手続きは、会社側との交渉がうまくいかなければ労働審判または裁判になることもあるので、労働問題に詳しい弁護士に任せた方が、解決がスムーズになります。まずはお気軽に弁護士にご相談ください。