新型コロナを理由として解雇された場合の対応としては、次のようなものが考えられます。
- ●解雇の有効性を検討する
- ●有効な場合は、失業保険の申請をする
- ●無効な場合は、解雇撤回の要求や未払い賃金の請求をする
この記事では、解雇が有効であるか判断するために必要な知識と、解雇をされた場合の対応などについて解説します。
解雇が有効であるため要件とは
ここでは、解雇の有効性を判断する上で理解しておきたい用語について解説します。
解雇とは
解雇とは、使用者が労働者に合意を得ることなく、一方的に労働契約の解除をすることです。解雇をするためには、『客観的に合理的な理由』と『社会通念条相当』であることが必要です。
解雇には、懲戒解雇と整理解雇と普通解雇の3種類があります。新型コロナによる業績悪化を理由とする解雇は整理解雇にあたるため、この記事では整理解雇の話を中心に解説を進めていきます。
整理解雇が有効であるための要件とは
整理解雇とは、不況や経営難を理由に、人員削減を目的として行う解雇のことを言います。あくまで使用者の都合による解雇であるため、有効性が認められるためには以下の要件を満たす必要があります。
- 1. 人員削減の必要性
- 2. 解雇回避の努力
- 3. 人選の合理性
- 4. 解雇手続きの妥当性
・1.人員削減の必要性
経営状態が危機的状況にあり、解雇をしなければ倒産の可能性があるような場合は、整理解雇が認められることがあります。
・2.解雇回避の努力
使用者は、解雇をしないで済むような努力をする必要があります。具体的には、役員報酬の削減や新規採用の停止、出向、一時的な休業などがこれに当たります。
・3.人選の合理性
例えば勤務態度やパフォーマンスなど、客観的合理的な基準で人員が選定されている必要があります。
・4.解雇手続きの妥当性
使用者は、労働者に対して人員整理の人数や解雇回避努力の内容、選定基準などを説明する必要があります。このような手続きをすることなく一方的に解雇を告げると、不当解雇になる可能性があります。
雇い止めとは
雇い止めとは、契約期間満了によって労働契約が終了することです。したがって必ずしも違法とはいえないものの、満了期間前の契約終了や、更新が期待されるような言動があった場合など、状況によっては雇い止めが無効になることもあります。
契約内容別|新型コロナを理由とする解雇への対応
ここでは、新型コロナを理由とする解雇への対応を契約内容ごとにご説明していきます。
無期契約で解雇された場合
感染症によるリストラの場合であっても、整理解雇の4要件を満たすことは簡単ではありません。4要件のうち満たしていないようなポイントがあった場合は、話し合いの場を設け、使用者に対して説明を求めましょう。また、このときの内容によっては不当解雇の証拠になるため、念のため録音をしておくといいでしょう。
有期契約で期間の途中に解雇された場合
使用者は、やむを得ない事由がなければ、契約期間が終了するまで労働者を解雇できません。途中で解雇した場合でも、使用者は契約期間満了まで賃金の支払い義務があります。新型コロナによる解雇の場合は、本人に原因がないため、やむを得ない事由があったと認められるのは難しいでしょう。契約期間満了までの賃金は受け取れるよう、交渉を進めていきましょう。
有期契約が満了し、雇止めをされた場合
契約期間が終了している場合、基本的に違法性はありませんが、契約更新を繰り返しており実質的に無期契約と等しいような場合や、契約更新を期待させるような言動があった場合などは雇い止めができなくなることがあります。
派遣契約を結んでいた場合
契約期間が終了する前に、派遣先の企業に派遣切りをされた場合は中途解除となり、契約期間が終了するまでの間は、派遣会社との雇用契約が続きます。この期間の途中で契約が解除されれば解雇に、契約が更新されなければ、雇い止めにあたります。解雇をされた場合は整理解雇の要件を満たしているか確認し、十分な説明を求めましょう。
新型コロナを理由として解雇された場合の対応
ここでは、解雇を認めない場合の対応・認める場合の対応についてご説明します。
解雇を認めない場合の対応
解雇を認めない場合は不当解雇を主張します。不当解雇を主張する際は、解雇撤回や未払い賃金の請求をすることになります。
・解雇撤回を求める
労働審判や通常訴訟によって、解雇が無効であることが認められれば、以前の職場に復帰できます。ただ、不当解雇を証明する際は法律の知識が必要になってくるため、弁護士への依頼を推奨します。
・未払い賃金を請求する
不当解雇が認められた場合、解雇通知を受けてから現在までも雇用が続いていることになるので、この間に雇用が続いていれば発生していたであろう賃金を未払い賃金として請求できます。
例えば、解雇があった半年後に不当解雇が認められた場合は、半年分の未払い賃金を請求できます。
解雇を認める場合の対応
解雇を認める場合は、失業保険給付の手続きを受けましょう。会社都合である場合は、手続きをした7日後から給付が開始されます。会社都合の離職によって失業保険を受け取る場合、自己都合よりも給付のタイミングが早くなったり、給付の期間が長くなったりといったメリットがあります。
具体的に手続きを進める場合は、『雇用保険手続きのご案内|厚生労働省』をご参照ください。
新型コロナを理由として解雇された場合の相談先
最後に、新型コロナを理由として解雇された場合の相談先を3つご紹介します。
各都道府県の労働局
労働局とは、厚生労働省が管轄する行政機関です。新型コロナにより不当解雇を受けたことを相談することで、企業と労働者の間に入って和解を斡旋する業務や、労働法違反行為の摘発業務などを行っています。
『新型コロナウイルス感染症の影響による特別労働相談窓口一覧|厚生労働省』には、各都道府県の労働局と電話番号が掲載されています。
労働組合
解雇や雇い止めをされた場合、労働組合に加入し、相談をすることで、団体交渉によって解雇の有効性について争うことができます。
『労働相談ホットライン|全国労働組合総連合』などから、お住まいの地域の労働組合を探し、相談をしてみてください。
弁護士
弁護士に相談をすることで、解雇の有効性を判断できます。不当解雇の可能性が高い場合は、依頼者に変わって解雇無効の主張や、未払い賃金の請求を行います。新型コロナで業績が悪いことを理由に解雇されるようなケースでは、この記事でお伝えしたような解雇の要件を満たしていないことも考えられます。泣き寝入りをする前に、一度ご相談ください。
まとめ
上記でお伝えしたように、日本では労働者を解雇するのは簡単ではありません。例え新型コロナによって業績が悪化した場合であっても、整理解雇の要件を満たさないような解雇は不当解雇となります。この記事でお伝えしたような状況に思い当たる節がある場合は、一度弁護士にご相談ください。