【弁護士・修習生の方向け】弁護士業務は、新たな出会いと別れの繰り返し(代表弁護士 田中今日太)
皆さま,こんにちは。
弁護士の田中です。
以前にも書きましたが,弁護士の仕事は一生かけてやる価値のある仕事,だと私は考えています。
では,一生,弁護士を続けるためには,どうすればよいのでしょうか?
これは,求人票にも記載している内容なのですが,せっかくなので,求人票よりも詳しく書きます。
その答えは,①仕事にやりがいを感じること②仕事とプライベートの時間を適切に取れること③人間関係が楽しいこと④適切な待遇・報酬が得られること,です。
①仕事にやりがいを感じること
これは,前回の以前の記事にも詳しめに書いたので,そちらをご覧ください。
もう少し補足すると,「全ての分野」に熟達するには,時間はいくらあっても足りない,ということです。
そもそも論として,すべての分野について熟達する必要があるのか?というか無理でしょ,と人によっては考えるかもしれません。
しかし,私は,人によっては,すべての分野のスペシャリストになっていただいて全然かまわないと思っています。
すべての分野のスペシャリストを目指す場合には,膨大な時間と努力が必要になりますから,あっという間に一生が終わると思います(笑)。
そういう高みを目指す方にとっては、仕事にやりがいを感じなくなるということはないでしょう。
他方で,そこまでの努力ができない,という方であっても,弁護士という業務の「性質」を理解していれば,十分にやりがいを感じていただけると思います。
この性質を理解していない,あるいは,理解してもそれを当たり前だと思えない人は,弁護士業務をしんどい,もうやってられない,一生やれる仕事ではない,と考えたりします。
では,弁護士という業務の性質について詳しく説明しておきます。
1 弁護士の業務には,依頼者と相手方の存在があること
まず,弁護士の業務には,関係者がいます。
一つは,依頼者,一つは,相手方,です。時に利害関係のある第三者も混じってくるケースがありますが,基本的には,依頼者と相手方です。
そして,弁護士は,依頼者の利益を最大化することを目指す存在です。裏を返すと,相手方の利益を最小化するとも言えます。
他方で,交渉で話をまとめようとする場合には,相手方も自身の利益が最小化することを防ぐため,反論をしてくることになります。
そこで,依頼者の利益を最大化することを考えつつも,依頼者に譲歩を求めて説得していく作業,また相手方に対しても譲歩を求めて説得していく作業が必要になります。
つまり,弁護士は,依頼者と相手方の板挟みに立たされていることになります。
しかし,弁護士が依頼者と強い信頼関係があれば,依頼者から弁護士へのプレッシャーは減少するので,相手方への対応に注力していけばよいということになります。
そして,弁護士としての力量や人間力が上がれば,依頼者との信頼関係は築きやすくなります。
ですから,弁護士の力量や人間力が上がれば上がるほど,相手方への対応に注力すればよいことになり,精神的に仕事がやりやすくなります。
しかし、残念ながら、新しく弁護士になった方や弁護士になっても年数や経験をあまり経ていない方は、依頼者との信頼関係が十分に築くことができていない結果,
板挟みの関係になって,精神的に追い詰められてしまうことがあります。
ですから、新しく弁護士になった方、あるいは年数や経験を経ていない弁護士の方は、まずここの「下積み期間」をしっかり忍耐して、頑張っていただく必要があります。
依頼者と十分な信頼関係を築くだけの実力や能力、人間力が身につけば、後は相手とのやりとりだけですから、そこまでしんどくありません。
ただ、ときに、依頼者の方と対立して、言い合いになることもあります。しかし、そのような場合であっても、冷静さを保ち、最大限理解を得られるよう誠実に対応するのです。
結果、言い合いになった依頼者の方も理解してくれることも多いです。
(残念ながら理解を得られず、辞任又は解任になることもあります。
しかし、あなたが誠実を尽くした結果であれば、きっとあなた自身が納得できる結論のはずです。)
ですから、まずは、あなた自身に依頼者と十分な信頼関係を築くだけの実力や能力、人間力が身につけましょう。
そして、それは、一朝一夕でできることではなく、ある程度の年数をかけて身につけていくことであることも知りましょう。
一朝一夕で、依頼者と十分な信頼関係を構築できる実力、能力が身につけられるというのは大きな誤解です。
一朝一夕で出来ることは、大したことではありません。依頼者を口先だけ上手になって丸め込むなんてことを考えないでください。
しっかり、自身に実力、能力、人間力を身につけて、本当の意味で依頼者の信頼を勝ち取れるよう努力してください。
2 弁護士は、新たな事件を処理し続けなければならないこと
弁護士は、弁護士を続けている間、新たな事件を処理し続けなければなりません。
新たな事件を依頼いただけなければ,その弁護士は、いずれ生活に窮して経済的に破綻してしまいます。
(最近、成年後見人で横領したお金を事務所経費に使ったという理由が多いのは、こういう理由かと思います。)
新しい事件なので、自分がやったことのあるような事件類型であることもあれば、全くやったことのない事件類型もあります。
自分がやったことのない事件類型は、物理的にも精神的にも負担があります。いつも以上に頭を使わなければなりません。
新たな知識を得るために、文献や判例にあたりインプットをする必要があります。
そのうえで、書面を作成するためにすぐにアウトプットに移らなければなりません。
学んで終わり,という学生のようなことはできません。
すぐに成果物(それは往々にして「書面」であったり、依頼者への「報告」)が求められます。
さらに、新しい事件なので、当然ですが、依頼者も相手方も変わります。
あなたが、過去に事件処理をして信頼関係を築いた依頼者の方ではありません。また新たに信頼関係を築かなければなりません。
このように,弁護士は,弁護士である間は,一生,新たな出会いと別れを繰り返し,新たな知識をインプットしてアウトプットしつづけなければならないのです。
こう聞くとしんどく感じるでしょうか?
実は,これと似た仕事があります。それは,保険営業マンです。
保険営業マンの仕事は,新たな顧客に保険の契約を続けてもらわなければなりません。
そのために,様々な営業手法を用いて,契約を得続けることになります。
既存顧客を満足させることで,新たな顧客を紹介してもらう,という紹介営業の手法を用いることもあります。
それは、弁護士が目の前の事件を一生懸命こなすことで,新たな顧客を紹介してもらう,ということと似ています。
しかし,紹介営業を用いる保険営業マンも,常に新たな出会いを求め続けています。
それは,紹介を待つだけでは足りない,ということを知っているからです。
保険営業マンは,初めて会う人であっても,コミュニケーション力によって徐々に信頼関係を築いていきます。
そして,それを繰り返し続けているのです。
また,優秀な保険営業マンは,常に情報をインプットすることを怠りません。
保険商品自体に関する勉強はもちろんのことですが,経営、政治経済、スポーツなどなど。
顧客が興味を持ちそうな事柄については,一通り勉強し続け,顧客の話題について行けるよう努力しています。
そうでなければ,いずれ話題が尽きて顧客から飽きられてしまいます。顧客から飽きられれば,いずれ必要とされなくなり,保険の相談や依頼も来なくなります。
このように保険営業マンと弁護士の仕事は似ていると私は考えています。
他にも新たなインプットとアウトプットをし続ける仕事はありますので弁護士特有の特徴だとは思いません。
特に、これからの時代はそういうことができる人が、どのような職業、職種にあっても必要とされていくことも忘れてはいけません。
そして、弁護士にあっても同じです。
弁護士がやることは,顧客からの依頼を続け,信頼関係を築き,新たにインプットとアウトプットを繰り返して事件処理をこなし続ける。
顧客との出会いと別れを繰り返す。
それを一生続ける。
そういう仕事だと理解してください。
ずっと同じクライアントとずっと一緒に仕事をする、そんなことはまずありません。
この弁護士の仕事の性質を知っていれば、一生頑張らなければならない仕事であると自覚することができ、忍耐して頑張ることもできます。
また、逆に自分に向いているかどうかも自然と分かります。
しかし、自分に向いているかどうかも、「全力」で取り組んでみて分かるものです。
全力で取り組めば、自分がそれに向いているかどうかは分かります。
私は、まずは弁護士になったなら、とりあえず弁護士としての「基本業務」に全力で取り組んでみることを勧めています。
当事務所の基本業務とは、離婚・不倫の慰謝料・子の親権などの家事事件,むちうちや後遺障害の申請も含む交通事故案件,示談活動を含む刑事事件,破産・個人再生などの債務整理案件などです。
ここからスタートしてどんどん専門性を磨いていっていただくことが成長にとって良いと考えています。
そして、全力で取り組めば、上記に書いた大変そうに見える弁護士の仕事が、一定ラインを超えれば、案外そうでもないと感じることもできます。
私も、弁護士を始めて数年は不安でした。
お客さんに依頼をしてもらえるのか、信頼して仕事を任せてもらえるのか、それをずっと継続することができるのか。
そうした不安は私もありました。
しかし、全力で取り組み続けた結果、今後も継続して行けるとの自信を持つに至っています。
ですから、全力で取り組み続ければ、自分が自信がないとか、不安だと思っていることも、乗り越えていくことができると信じています。
皆さんもどうか、焦らず、じっくりと、そして全力を尽くして、自分の実力を伸ばすことを心がけてください。
当事務所の弁護士は、皆、そのように弁護士として成長を続けるつもりです。
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