交通事故 交通事故基礎知識
2020.06.23 2023.08.25

交通事故で起訴されるケース、対処法など知りたいです。

交通事故で起訴されるケース、対処法など知りたいです。

交通事故において加害者は被害者に対して損害賠償金や慰謝料を支払います。
これは民事上の加害者の負う責任となります。
では刑事上の加害者の処分はどうなるのでしょうか?ここでは交通事故における刑事処罰についてご説明をします。
また被害者はどうすべきなのか対処方をお伝えします。
 

交通事故で起訴されるときについて

a:人身と物損

交通事故の発生件数は年々減っているとはいえ、年間で50万件以上とまだまだ多くの事故が発生しています。
こういった背景により、交通事故の加害者が起訴されることは非常に少ないです。
人身事故のすべてを起訴していると処理が追い付かないという理由があるからです。
また起訴をされたとしても正式裁判にはならず、罰金刑のみで終わることが多いです。
なお、交通事故には人身事故と物損事故がありますが、刑事責任が問われるのは人身事故のみで、基本的には物損事故では問われません。
ただし、交通事故により他人の家や店を傷つけた場合は道路交通法第116条に基づき、刑事責任が発生します。
 

b:交通事故で可能性のある罪

交通事故で可能性のある罪で代表的なものは、過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪といったものです。
「過失」と「危険」のみ異なるこの罪名の違いですが、相手を負傷または死亡させてしまったという事実に加えて、特に悪質だと判断された場合はより思い刑事罰を科せられる危険運転致死傷罪となります。
具体例を上げると、正常な運転ができない状態(薬物使用や飲酒)での運転や、法定速度を大幅に無視したスピード違反の運転、故意だと判断される危険な運転といった状態です。
なお、過失運転致死傷罪は7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金、危険運転致死傷罪の場合は15年以下の懲役、相手を死亡させた場合には1年以上の懲役刑が科されます。
他にも救護義務違反(いわゆるひき逃げ)は5年以下の懲役または50万円以下の罰金刑となります。
警察に事故の遭った事実を報告しない事故報告義務違反については3ヶ月以下の懲役、または5万円以下の罰金刑が科されます。
 

起訴とは?

a:意味

起訴とは検察官が刑事事件について裁判所の審判を求めることをいいます。
起訴の権限は検察官のみが持っており、検察官に起訴されると、捜査の段階から裁判の手続きへと移ります。
加害者=被疑者はこの段階で【被告人】という立場になります。
 

b:種類

起訴には3つの種類があります。
起訴(正式起訴)、略式起訴、不起訴です。
上記に述べたように起訴は検察官が裁判所に被告人の処罰を求めることをいい、刑事裁判が一般にも公開されるものとなります。
不起訴については、検察官が審判を求める必要はないと判断した場合をいいます。
不起訴には嫌疑なし、嫌疑不十分、起訴猶予等20種類ほどあります。
ここでは主なものを紹介します。

嫌疑なし:捜査をした結果、証拠がないことや人違いと分かり疑いが晴れた場合をいいます。
嫌疑不十分:立証するための証拠が不十分であり、疑いは晴れてはいませんが、裁判で有罪を証明するのは難しいという場合です。
起訴猶予:罪を犯したことは間違いなく、証拠もありますが、犯罪の内容や被疑者の性格や更生可能性等を考慮して検察官が不起訴とする場合です。
比較的に軽い罪や被害者と示談が済んでいる場合は起訴猶予になるケースが多いです。

略式起訴については後程詳しくご説明をさせていただきます。
 

c:誰がいつどのタイミングで判断する?

起訴か不起訴かについては、すべて検察官が判断します。
刑事事件において公訴権は検察にしかありません。
検察は捜査を行い、これ以上の証拠は出ないと判断した段階で裁判を求めます。
 

d:交通事故における起訴になる判断材料

交通事故において起訴になる判断材料は、いかに悪質で重大であるかがポイントです。
ひき逃げや飲酒運転、大幅に法定速度を無視したスピード違反や死亡事故の場合は起訴となり懲役刑や禁固刑となる場合があります。
ただ、多くの交通事故の場合は正式起訴とはならず、起訴されたとしても略式起訴で終わることが多いです。
 

略式命令とは?

a:意味

裁判の正式な手続きをせずに、検察官が書類を提出します。
その提出された書類に基づいて被疑者の処罰を決定する手続きを「略式起訴」といいます。
これにより裁判所から出される命令を「略式命令」といいます。
 

b:おもな罰則

略式命令は被疑者から異議がなければ、100万円以下の罰金で事件が終了となります。
 

c:審理の流れ

交通事故の場合は在宅捜査(加害者が逮捕されない)が多いので、手続きが比較的に他の刑事事件に比べてゆっくりと進みます。
検察官は十分な捜査を終えた段階で、被疑者に以下2点のことを伝えます。

  • ①罰金だけで済む代わりに公開裁判を省略すること。
  • ②裁判所から略式命令が言い渡されてから14日以内であれば公開裁判に切り替えられること。

この点を理解したうえで被疑者に異議がなければ検察官は裁判所へ略式起訴を求める書類を提出します。
その後裁判所は検察官から提出された書類を元に、被疑者へ罰金を支払うよう命じる「略式命令」を書類にて言い渡します。
被疑者が期限までに罰金を納付した段階で、刑事上の手続きは終了となります。
なお、略式起訴は有罪判決の一つです。
よって前科がつくことには変わりありません。
 

正式裁判とは?

a:意味

正式裁判とは国が加害者を訴えて、裁判所が有罪か無罪かを判断し、有罪の場合は量刑を決めるものです。
原告は国を代表して検察官がなり、加害者=被疑者は被告人として出廷します。
公開の法廷で、検察官が主張、立証しようとする事実が認められるか否かの審理が行われ、証拠の取り調べなどが行われます。
 

b:おもな罰則

有罪判決の場合、懲役刑もしくは禁錮刑、罰金が言い渡されます。
懲役刑の場合は執行猶予が付かない場合は刑事施設に収容されます。
なお、判決内容に不服がある場合は弁護士を通して「控訴」することもできます。
 

c:審理の流れ

検察官は裁判所へ起訴状を提出(公訴提起といいます)します。
これにより刑事裁判が開かれることが決定します。
公訴提起から約1か月後に第一回の裁判が行われます。
最初に裁判官は被告人へ氏名や年齢、住所等を聞き本人であることを確認します。
これを人定質問といいます。
次に検察官より起訴状を読み上げられます。
審理の対象となる公訴の事実とこの犯罪に対して適用すべき法律の条文と罰則が起訴状には記載されています。
起訴状の読み上げが終わると裁判官は被告人へ黙秘権があることを伝えます。
その上で裁判官から被告人へ内容について間違いがないか確認をされます。
被告人はそこで間違いがなければないと回答、事実無根であれば、身に覚えがないと回答、もしくは黙秘権を行使することもできます。
その後、検察官からは犯行事実について説明が行われます。
これを冒頭陳述といい、起訴状の内容よりさらに詳しい内容で説明が行われます。
検察官はこの冒頭陳述を裏付ける証拠を提出します。
なお、この証拠は被告人の弁護人へ先に告知しておかなければいけないことになっています。
また証人尋問もこのタイミングであります。
検察官と弁護士が交互に尋問します。
証拠の提出が終わり、審理が終了となると、裁判の総括に入ります。
検察官からは事件を総括し、意見を述べます。
これを論告といいます。
論告の後にどのような刑罰に処すべきかの意見を述べます。
これを求刑と言います。
弁護人はそれを受け最終弁論=被告人を擁護します。
そして最後に被告人本人から最終意見陳述を行い、審理は終了となります。
裁判所が十分な審理がされたと判断した場合は有罪、無罪かの判決がなされます。
 

まとめ

最後になりますが、被害者は加害者により重い刑事罰を与えたい場合、どうすればいいのでしょうか?
略式起訴となり、手続きが終了すると、被害者がどんなに訴えてもどうにもなりません。
加害者が全く反省していない、誠意がないとなった場合、刑事罰が100万円以下の罰金程度では気持ちがついていかない被害者は多くいらっしゃいます。
交通事故の起訴について多くのことを述べましたが、被害者は刑事手続きにおいては、加害者の略式起訴が決定する前に動くことが重要です。
正式裁判を行うために、上申書など送ること、また直接担当検察官に面会に行くことで、起訴を訴えることが必要となります。
しかしこの場合、被害者一人の力ではなかなか厳しいのが実情です。
相手を罰したいという感情だけでは検察官は動きません。
弁護士に相談し、法律的に訴えることが大事です。

このコラムの監修者

カテゴリ一覧

アクセスランキング

新着記事

CONTACTお問い合わせ

ご相談など、お気軽に
お問い合わせください。

電話アイコンお電話でのお問い合わせ

06-4394-7790受付時間:8:30〜19:00(土日祝日も可)

メールアイコンwebフォームよりお問い合わせ