交通事故 交通事故基礎知識 慰謝料
2024.02.26 2024.06.07

まるっと解説!妊婦の方が交通事故に遭った場合の慰謝料相場は?

まるっと解説!妊婦の方が交通事故に遭った場合の慰謝料相場は?

妊婦の方が交通事故に遭うと,お腹の子への影響が1番心配でしょう。

また,お腹の子に障害が残っていたら相手方に損害賠償請求できるのかなども気になるでしょう。

当コラムでは,妊婦の方が交通事故に遭った場合の慰謝料請求についてご説明いたします。

1 妊婦の方が交通事故に遭った場合に請求できる慰謝料と相場

妊婦の方が交通事故に遭うと,本人分の慰謝料を請求することができます。

これに加えて,胎児の慰謝料なども請求することができるのでしょうか。

⑴交通事故の慰謝料とは

交通事故の慰謝料には,被害者が死亡した場合の死亡慰謝料,後遺障害が残った場合の後遺障害慰謝料,入通院した場合の入通院慰謝料の3種類があります。

交通事故の慰謝料は,基準額が決められており,

自賠責基準
任意保険基準
弁護士基準

の3種類があります。

自賠責基準とは,自賠責保険が慰謝料額を算定するための基準です。

任意保険基準とは,任意保険会社が慰謝料額を算定するための基準です。

弁護士基準とは,弁護士や裁判所が慰謝料額を算定するための基準です。

この中では,弁護士基準が最も高額な基準で,自賠責基準が最も低額な基準です。

任意保険基準は,任意保険会社内部の支払基準なので,非公開です。

⑵妊婦の方が交通事故に遭った場合に請求できる慰謝料と相場

①胎児に影響がなかった場合

この場合,通常の交通事故と同様の慰謝料を請求することになります。

妊婦の方が怪我を負ったり後遺障害が残っていると,入通院慰謝料や後遺障害慰謝料を請求することができます。

(ア)後遺障害慰謝料
後遺障害等級自賠責基準弁護士基準
要介護1級1650万円2800万円
要介護2級1203万円2370万円
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円
(イ)入通院慰謝料

・自賠責基準

1日につき4300円

・弁護士基準

通常の弁護士基準による入通院慰謝料の表(単位:万円)

   入院1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月13月14月15月
通院B\A53101145184217244266284297306314321328334340
1月2877122162199228252274291303311318325332336342
2月5298139177210236260281297308315322329334338344
3月73115154188218244267287302312319326331336340346
4月90130165196226251273292306316323328333338342348
5月105141173204233257278296310320325330335340344350
6月116149181211239262282300314322327332337342346 
7月124157188217244266286304316324329334339344  
8月132164194222248270290306318326331336341   
9月139170199226252274292308320328333338    
10月145175203230256276294310322330335     
11月150179207234258278296312324332      
12月154183211236260280298314326       
13月158187213238262282300316        
14月162189215240264284302         
15月164191217242266286          
(右へスクロールできます)

むちうち症で他覚症状がない場合に適用される入通院慰謝料表(単位:万円)

   入院1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月13月14月15月
通院B\A356692116135152165176186195204211218223228
1月195283106128145160171182190199206212219224229
2月366997118138153166177186194201207213220225230
3月5383109128146159172181190196202208214221226231
4月6795119136152165176185192197203209215222227232
5月79105127142158169180187193198204210216223228233
6月89113133148162173182188194199205211217224229 
7月97119139152166175183189195200206212218225  
8月103125143156168176184190196201207213219   
9月109129147158169177185191197202208214    
10月113133149159170178186192198203209     
11月117135150160171179187193199204      
12月119136151161172180188194200       
13月120137152162173181189195        
14月121138153163174182190         
15月122139154164175183          
(右へスクロールできます)

②胎児に後遺障害が残った場合

妊婦の方が怪我を負ったり後遺障害が残っていると,妊婦自身の入通院慰謝料や後遺障害慰謝料を請求することができます。

それに加えて,子どもが生まれたあと,子ども本人が後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求することができます。

③中絶・流産した場合

胎児は,生まれるまで法律上「人」とはされません。

そのため,胎児が中絶・流産した場合,胎児に対する慰謝料を請求することはできません。

もっとも,妊婦の方が子どもを失ったことを理由に,妊婦の方に別途慰謝料が支払われる可能性があります。

胎児死亡による慰謝料請求が認められるためには,交通事故と中絶・流産に因果関係があると判断されなければいけません。

交通事故と中絶・流産の因果関係が認められるには,事故後すぐに病院を受診して,交通事故が胎児に与えた影響を記録に残しておくことが有用です。

(ア)大阪地判平8・5・31 交民29・3・830
事故の衝撃により妊娠2ヶ月の胎児が死亡したとして,入通院慰謝料や後遺障害慰謝料とは別に150万円の胎児死亡による慰謝料が認められました。
(イ)東京地判平11・6・1 交民32・3・856
妊婦が受傷したことにより正常に生まれる蓋然性の高い妊娠36週の胎児が死亡したとして,母700万円,父300万円の胎児死亡による慰謝料が認められました。
(ウ)大阪地判平13・9・21 交民34・5・1298
25歳主婦が正面衝突事故に遭い,事故により胎児(18週)が死亡しました。
被害者の妊婦が事故当時シートベルトを着用しており,事故の衝撃でシートベルトが腹部に食い込む状態となっていたこと,事故後再び妊娠することを待ち望んでおり,産婦人科に通院して排卵誘発剤等のホルモン投与を受けているが,いまだ妊娠するにはいたっていないことなどの事情を考慮して,350万円の胎児死亡による慰謝料が認められました。
(エ)大阪地判平18・2・23 交民39・1・269
41歳主婦が受傷により妊娠12週未満の早期流産をしたとして,200万円の慰謝料が認められました。
なお,妊婦が交通事故に遭い,整骨院で治療を受ける際の注意点については当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。
妊婦が交通事故に遭い整骨院を利用するケース

2 妊婦の方が交通事故に遭った場合の慰謝料の請求方法と注意点

⑴妊婦の方が交通事故に遭った場合の慰謝料の請求方法

①胎児に影響がなかった場合

妊婦の方自身の慰謝料しか請求しないので,以下のように,通常の交通事故と同じ方法で慰謝料を請求します。

(ア)病院を受診

通常,交通事故に遭えば整形外科を受診しますが,妊婦の方は整形外科と産婦人科の両方を受診して,お腹の子の状態を確認しましょう。

妊婦が受けることのできない検査もあるので,最初に行った病院で妊婦であることを必ず伝えてください。

(イ)入通院

治療をするために,入通院を行います。

(ウ)症状固定または完治

完治した場合は,(オ)示談交渉を開始します。

怪我が完治することが望ましいですが,完治しなければ主治医から症状固定だと判断されます。

症状固定だと判断されると,いわゆる後遺障害が残ります。

(エ)後遺障害申請手続き

後遺障害に関する補償を受けるには,後遺障害の認定を受けなければいけません。

後遺障害申請手続きを行って,後遺障害等級の認定を獲得しましょう。

(オ)示談交渉

加害者側と示談交渉を行います。

加害者が保険に加入している場合は,保険会社と示談交渉を行うことになります。

(カ)示談成立

示談内容に双方が合意すると,示談が成立し,後日示談金が支払われます。

②胎児に後遺障害が残った場合

上記で説明したように,子ども本人が自分に残った後遺障害に関する補償を請求することができます。

まずは,ご両親が赤ちゃんを病院に連れて行って,治療を受けさせましょう。

そして,入通院を続けて症状固定だと診断されたら後遺障害申請手続き・示談交渉を行うことになります。

しかし,生まれたばかりの赤ちゃんが後遺障害申請手続きや示談交渉を行うことはできません。

そこで,赤ちゃんの両親が赤ちゃんに代わって後遺障害申請や示談交渉を行います。

③中絶・流産した場合

妊婦の方(場合によっては父親も)のみが慰謝料請求することができます。

そこで,①と同様の方法をとりましょう。

⑵妊婦の方が交通事故に遭った場合に慰謝料を請求するうえでの注意点

①示談交渉を始めるタイミング

赤ちゃんが生まれるまでは,胎児にどのような影響があったのか分かりません。

そのため,中絶・死産の場合を除き,出産が終わってから示談を開始するべきです。

相手方から示談交渉を催促されても,妊娠していることを伝えて,出産まで示談交渉を待ってもらうよう伝えてください。

ただし,時効期間を経過しないように注意しましょう。

②仮渡金などの制度を利用する

妊婦の方が交通事故に遭うと,治療費や通院交通費などの支出が増えます。

そのうえ,仕事を休むことになってしまうと収入が減ってしまいます。

出産まで示談を待っているとお金に困ることもあるでしょう。

お金のやり繰りが苦しくなったら,一時金や仮渡金を受け取ることを検討してみてください。

なお,交通事故の一時金や仮渡金については,当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。

交通事故の慰謝料一時金をもらうにはどうすればよいか?

交通事故の「仮渡金」制度とは?使うメリット・デメリット

3 妊婦の方が交通事故に遭った場合,弁護士に依頼すべき?

妊婦の方が交通事故に遭った場合,弁護士に依頼することをお勧めします。

交通事故の対応には大きなストレスがかかります。

妊娠中は,ストレスで流産してしまうことがあるので,妊婦の方が後遺障害申請や示談交渉などを行うことは避けるべきです。

弁護士に依頼すれば,妊婦の方に代わって必要書類の収集や保険会社とのやり取りを行ってもらえるので,ストレスを減らすことができます。

また,残念なことに中絶・流産してしまった場合には,せめて妊婦の方が受け取る慰謝料を増額したいです。

中絶・流産したことを理由とする慰謝料請求が認められるためには,交通事故と中絶・流産に因果関係があることを論理的に主張しなければいけません。

弁護士は交渉に慣れているので,交通事故対応の経験豊富な弁護士に依頼すべきです。

4 まとめ

妊婦の方が交通事故に遭った場合は,ご自身の身体の健康とお腹の赤ちゃんの無事が1番です。

適切な慰謝料を獲得することも重要ですが,生まれてくる子どものためにも,母体にかかるストレスは減らすべきです。

そのため,妊婦の方が交通事故に遭った場合は,弁護士に相談するべきです。妊娠中に交通事故に遭われて,相手方に慰謝料を請求したいと考えておられる方は,大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。

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