交通事故 交通事故基礎知識
2020.07.06 2024.04.25

交通事故の高齢者問題について

交通事故の高齢者問題について

近年、高齢者の運転の問題について話題になっています。実際交通事故の相談の中にも被害者の方より「(加害者が)年配の人だった、ブレーキとアクセルを間違えたらしい」と聞くことがあります。また、「その場で迎えに来た息子に免許を返納するよう約束させた」と高齢ドライバーにあまり良い印象を持っていない、否定的な方も多くいらっしゃいます。ここでは交通事故における高齢者の問題についてご紹介します。

高齢ドライバーとは?

a.高齢ドライバーの定義

高齢ドライバーとは、いったい何歳を指しているのでしょうか?意外に知られていないのですが、警察庁の交通事故統計は【65歳以上】とされています。ただし、高齢者が車両に貼るもみじマーク、いわゆる【高齢者マーク】は、70歳以上の方が車を運転する際には、貼り付けることを推奨されています。そもそも、高齢者マークは1997年の道路交通法改正に基づき、導入されました。その際は75歳以上の高齢者ドライバーは貼り付ける、といったものでしたが、2002年に70歳以上の高齢者ドライバーと年齢が引き下げられました。
なお、70歳以上のドライバー全員が、高齢者マークをつけなければいけないわけではありません。70歳以上75歳未満の場合は「加齢に伴って生ずる身体の機能の低下が自動車の運転に影響を及ぼすおそれがあるとき」とされる際は、高齢者マークを貼り付けるようと言われています。そして、75歳以上のドライバーに関しては、全員が高齢者マークを付けることを言われています。よって、世間的には高齢ドライバー=【75歳以上】で認識されている方が多いでしょう。なお、マークを貼っていなかった場合ですが、現状、罰則はありません。これは、高齢者マークは【義務】【努力義務】とされているからです。

b.ドライバー数、過去との比較

高齢化が進むことで、高齢ドライバーは増えています。平成28年末の運転免許保有者の数は、全国では約8,221万人となります。これは平成27年末に比べると6万人が増加しました。そのうち、75歳以上については、約513万人となります。なお、75歳以上の人口から約3人に1人は免許を保有していることとなります。平成27年末に比べると約35万人が増加しています。その後も増加をたどっています。

高齢者の事故割合について

a.高齢ドライバーによる交通事故発生率

高齢ドライバーの交通事故発生率は増加しており、運転免許保有者10万人あたりの交通事故発生件数を20~74歳、75歳以上とで比べた際は、75歳以上のドライバーは約1.2倍、発生件数は増えます。さらに、死亡事故になると2~3倍ともいわれており、非常に重大な事故が多いです。
全体として、75歳以上の運転による死亡事故は、件数は横ばいで推移はしていますが、死亡事故件数が全体で減少していく中では、全体に対する構成比は高く、また上昇をしています。

b.人身事故、物損事故、それぞれのケース

人身事故は先ほど述べたように死亡事故が比較的に多いですが、物損事故はどういったものがあるのでしょうか?物損事故の場合は、追突事故やハンドル操作ミスによる、電信柱や壁、商店への激突などがありますが、「高齢者だから多い物損事故」というのはないように思えます。しかし、高齢者の人身事故を起こした方の中には、物損事故を何度か起こしていたことが過去にあるという方も少なくないです。「あの時、免許を返納させとければよかった」とご家族が悔やむこともあります。
ここで、一つ言えることは、物損事故はたまたま対象が「物」だっただけで、「人」に対して起こした事故と危険性は変わらないということです。たまたま、人が怪我をしたり、亡くなったりしなかっただけです。人身事故を起こしていないから、大丈夫という認識は誤りです。事故であることは変わりません。

事故原因はいったい?

a.運転操作ミス,遅れ

高齢者の事故の原因に多いのは、身体の衰えによる運転操作ミスや遅れ等があげられます。たとえば、動体視力の低下、複数の情報を同時に処理できないこと、さらに瞬時に判断する能力の低下です。こういった身体能力の低下が、ハンドルやブレーキの操作にミス、遅れが出ることの原因となり、事故が起こりやすくなります。

b.信号無視、一時不停止

高齢ドライバーの中には、残念なことに運転が自分本位になる方も増えてきています。身体の衰えはあるものの、運転の経験が長ければ長いほど「自分は安全運転をしている、問題ない」と自信が生まれます。結果、周囲に対しての注意力が欠け、交通環境を客観視することができず、信号無視や一時不停止等といった、交通違反が事故の原因となることがあります。

弁護士への相談事例について。

a.免許の自主返納が難航している理由。

高齢者の運転免許返納は、返納は進んでいないのが現状です。特に地方は首都圏に比べて、公共交通機関が充実していないので、なかなか自動車離れをすることは難しいです。また、事故原因の際に述べましたが、高齢者の方の事故の原因は【自分は運転が問題なくできている】という自信です。そうなると、免許を返納する=自信を喪失するということとなり、なかなか抵抗感が大きいことが現実にはあります。実際に、高齢となる母のいる女性が、大きな事故を起こした母に免許の返納することを求めたが、受け入れないということも耳にしたことがあります。

b.高齢ドライバーの事故、加害者のケース

高齢ドライバーの加害者のケースで多いのは、死亡事故です。そして本人だけでなく、免許返納をさせることができなかった、家族も罪の意識を抱えることが特徴です。実際に原則としては、本人である高齢者が刑事責任、行政責任を負いますが、民事責任については、本人に責任能力がないと判断された場合は、損害賠償責任を負わなくなるため、被害者が保護できなくなります。そこで「責任無能力者の監督義務者責任」として、家族が損害賠償責任を負うことがあります。さらに、責任能力があったとしても、監督義務者が監督を怠ったことにより事故が発生したと考えられる場合は、被害者に対して、独自に不法行為責任を負うとされています。実際は非常に厳しい要件の場合のみ責任を負うこととなりますが、しかしそれでも、責任を問われる可能性があることは事実です。

c.高齢ドライバーの事故、被害者のケース

高齢者の場合、自動車運転手での被害者事故よりも、歩行者や自転車での被害者事故が圧倒的に多く、死亡事故が大きく割合を占めています。その原因の一つが高齢者自身の法令違反となります。これは事故原因でも述べたように、一時不停止や信号無視が目立ち、かつ年齢が高くなるにつれて、増加する傾向があります。
高齢者の方の事故の場合、加害者であっても、被害者であっても弁護士に相談をすることをおすすめします。前者の場合は、死亡事故となると個人で行うには限界があります。おそらく被害者側も弁護士を入れることが多いので、加害者側も入れるようにするとよいでしょう。また、被害者である場合も、事故原因によっては大きく過失を争う可能性があります。実際に、高齢者の方が信号無視をして亡くなった案件では、相手の加害者側の保険会社より「過失が被害者の高齢者の方が大きいので、慰謝料関係は一切払いません。」と言われたとしてご相談に来られ、過失について大きく争われました。

まとめ

近年、高齢ドライバーによる痛ましい事故を目にすることが増えています。2019年4月19日に池袋にて起きた母親と幼いお子様が犠牲になった事故は、記憶に新しいかと思います。この事故がきっかけで、免許の返納をしている高齢者の方も多くいらっしゃるでしょう。しかし、先ほど述べたように、地方に住んでいるお年寄りの方にとっては、自動車は生活する足として必要であり、なかなか返納ができない現実問題があります。高齢化が進む場合、今後何かしらの対策をしていかなければいけないのは確かです。自分の父親や母親、祖父母の方が高齢ドライバーである、もしくは自分自身がそうである方は、取り返しのつかない事故が起こる前に、今一度家族で話し合い、運転の仕方を見直してみましょう。

万が一高齢ドライバーの運転により、交通事故に巻き込まれた場合は、一度弁護士に相談するようにしましょう。
高齢ドライバーが原因での交通事故問題については、大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。

このコラムの監修者

カテゴリ一覧

アクセスランキング

新着記事

CONTACTお問い合わせ

ご相談など、お気軽に
お問い合わせください。

電話アイコンお電話でのお問い合わせ

06-4394-7790受付時間:8:30〜19:00(土日祝日も可)

メールアイコンwebフォームよりお問い合わせ