交通事故 休業損害 示談
2020.07.30 2024.04.25

交通事故に遭って有給休暇で治療したら休業損害は受けられるか知りたい。

交通事故に遭って有給休暇で治療したら休業損害は受けられるか知りたい。

交通事故後、怪我の治療のために通院をした際、仕事を休まざる得なくなる場合もあります。

交通事故の場合、給与に影響が出た減収分は、加害者の保険会社へ請求をします。

この減収分の損害を受け取るには、被害者は指定の書類を提出する必要があり、すぐに受け取れるものではありません。

そのため、有給を使用し、治療に当たる方もいらっしゃいます。

ここでは有給使用における休業損害を中心にご説明をいたします。

交通事故後の治療期間

有給休暇利用

交通事故にて怪我を負った場合、病院へ通うためや療養の為に、仕事を欠勤する方も少なくありません。

その結果、給与は減ってしまうため、被害者の中には、経済状況により、収入が減ることを避けるために、有給を使用する方もいらっしゃいます。

さて、この有給休暇分は休業損害として受け取れるのでしょうか?

結論から申し上げると、有給を使った場合でも、休業損害は基本的には支払われます。

休業損害を請求するための条件は、【怪我の治療のため、もしくは休養のために仕事を休むことにより生じた、得られるはずだった収入の得られなかった分】となります。

さて、有給休暇を利用した場合、仕事を休んだとしても給与に影響はありません。そうなると休業損害ではないのでは?と疑問をもつ方も多くいらっしゃるでしょう。

では、何故有給休暇は休業損害として請求できるのでしょうか?

被害者は、本来自由に有給休暇を使用できます。しかし、交通事故が原因で使用することにより、有給休暇を取得するという労働者の有する権利を被害者は失っているといえます。

結果、被害者には損害が発生していると考えられ、損害賠償を請求できるということになります。

休業損害を受けられ療養で休む場合の注意

1日、半日など短期のケース

交通事故において、有給休暇は休業損害として請求できる、と述べてきましたが、有給休暇の休業損害は必ず認められるものとして、被害者は認識していいのでしょうか?

結論、有給休暇にて、休業損害を請求した際に、認定されないケースはあります。

身体に痛みがあり、完全に仕事を休まなければいけない状態である場合は、認定がされるケースとされます。医師の診断書の診断書があり「自宅療養が必要である」と記載されていれば、

あがり認定される可能性は上がります。

では、認定されない場合はどういった時なのでしょうか?

たとえば、病院への通院のために、有給を1日だけ使用したとします。

この場合、保険会社は否定をしてくる可能性があります。

「果たしてこれは、1日休む必要があったのか?」

「手術等であればまだしも、通院だけであれば、遅刻や早退で対応できたのでは?」

保険会社は以上のように考え、結果丸1日の有給休暇を取得は不要と考えられ、支払いを拒否することがあります。

また、長い治療期間の中で、1度だけ1日ないしは半日や短期間のみ有給休暇を使用し、他の通院日は一切欠勤、遅刻、早退をしていない場合も否定されやすいです。

保険会社は、他の日は問題なく通院できているのになぜこの時だけ有給休暇を使用しているのか?と考え、有給休暇は個人的な都合で使用したものであり、交通事故が原因と考えにくいとし、否定をしてくる可能性があります。

しかし、被害者側にも、半日有給制度がない勤務先であったり、医師の都合で診察時間に時間がかかりやむを得ず1日休まなければいけなくなったりと、様々な事情があるかと思います。

保険会社に支払いを否定された場合は、否定をされた理由を確認の上、事情を説明することが必要です。

欠勤と有給休暇の違い

それぞれの定義

欠勤と有給休暇はどのように定義づけされているのでしょうか?

欠勤とは

欠勤は、労働者が労務義務のある日に、勤務を全くしないことで、【給料が全く支払われない休み】とされています。

法律上では明確に定義はされていませんが、雇用主と労働者の間の労働契約上で考えると、労働提供義務の不履行といえます。

有給休暇

有給休暇は、労働基準法第39条にて認められている権利です。労働者がこの権利を行使することで、労務義務のある日に、勤務を全くしないが、【給料をもらうことができる休み】とされています。

有給休暇は一般的に、入社半年後に一定の日数が労働者に与えられます。

扱いの相違点

欠勤と有給休暇の大きな違いは【給与が出るか出ないか】となります。

では、交通事故の場合、有給休暇の使用か、欠勤かどちらが得なのでしょうか?

有給休暇の場合、使用すると、自身の有給休暇所得日数が減ります。金銭面からみると、会社からは有給休暇分の給与が支払われます。

欠勤の場合は、有給休暇所得日数は減りませんが、保険会社からしか減収分の休業損害は支払われません。

どちらが得か否かは個人の価値観に寄りますが、できる限り自由に有給を使いたい方にとっては、交通事故で有給を使用することは損と感じられるでしょうし、金銭面でいうと有給を使用したほうが多くもらえますので、得と考える方もいらっしゃるでしょう。

有給休暇と休業損害

いずれかしか受けられないケース

有給休暇と保険会社からの休業損害、いずれかしか受け取れないケースがあります。

つまり、会社が有給休暇を使用して給与を支払わないということはありませんので、【保険会社が休業損害として認めず、支払わないという場合】です。

先ほども述べたように、有給休暇を使用する必要性が問われ、認定が下りないケースの他、以下の場合も休業損害として認められないことがあります。

・交通事故から期間が空いた有給休暇。

・有給休暇を取得した日に、病院へ入院・通院をしていない。

・医師から「自宅療養が必要」と診断をなされていない。

有給休暇を使用しての、休業損害を請求するためには、必ず実際に通院をすること、自宅療養の場合は、医師に診断書を書いてもらうようにしましょう。

慰謝料で考慮したケース

珍しいケースではありますが、慰謝料で有給休暇の休業損害を考慮した判例があります。

この判決は、以下のように判決を下しました。

「交通事故によって負った傷害の治療に要した通院のために、10.5日間の有給休暇を使用したこと、有給休暇のため給与の減額はなされなかったことが認められるが、実際の収入は減少していないことからすると、休業損害は認められない」

「治療のために有給休暇を使用しなければ、被害者は有給休暇を自己都合で有効に使用することができたと考えられることから、有給休暇を使用したことについては入通院慰謝料において考慮する」

つまり、有給休暇は休業損害としては認めないが、被害者が受けた精神的苦痛として慰謝料を支払うという内容です。

(大阪地方裁判所 平成15827日判決)

会社に提出する必要な書類

休業損害証明書

休業損害証明書とは、被害者が給与所得者であり、交通事故が原因で仕事を休むことにより、収入が減ってしまった場合、その減収分=休業損害を対外的に証明し、加害者に請求するための資料です。

この証明書は、被害者自身で作成するのはなく、勤務先をしてもらいます。

主にこの書類を使用する方は、会社員(正社員)や公務員、パート、アルバイトの方となります。

基本的に、休業損害証明書は加害者の保険会社から取り寄せることができ、各保険会社で多少のフォーマットは異なりますが、記載する内容は同じです。

記入例も基本はありますので、保険会社に休業損害証明書を送ってもらう際は、記入例も併せてもらうと、勤務先の方も書きやすいかと思います。

書き方

休業損害を請求する目的は、あくまでも実際に減った収入を補填することとなります。

普段の勤務状況と休業の状態がわかることが証明書においてポイントとなります。

休業損害証明書には以下の項目があります。

・被害者の氏名、職種役職、採用日

・休んだ期間、その内訳(欠勤、年次有給休暇、早退、遅刻)

・休んだ日(早退、遅刻を含む)と勤務先の所定の休日を記載する表

・休業分の給与を支給したか否か(支給または減額した場合の計算式)

・事故前3か月間の支給された月例給与(賞与は除く)

・勤務先の情報と証明書作成年月日(勤務先の所在地、商号または会社名、代表者氏名、社印欄、電話番号、作成担当者氏名、作成担当者連絡先)

 

賞与については、もし事故の影響にて減額された場合は別途、賞与減額証明書を勤務先に発行してもらうようにしましょう。

 

源泉徴収票

休業損害を請求するには、休業損害証明書だけではなく、交通事故の前年度分の給与所得の源泉徴収票が必要となります。

もし、源泉徴収票が紛失した場合は勤務先に再発行してもらいましょう。

そもそも源泉徴収票がない場合の方は、事故発生前3か月分の賃金台帳のコピーや所得証明書、雇用契約書が必要となります。

この書類の提出は、被害者が事故前に収入があったことを証明し、休業損害証明書に書かれている内容と、年間の収入内容に相違がないかを裏付けるためとなります。

休業損害についてのご相談は、大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイへ!

有給休暇を使用しての休業損害の請求についてご説明をさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか?

有給休暇を含めた休業損害について保険会社と争っている、休業損害として支払ってもらえない等、お悩みがある方はまずは弁護士に相談をしましょう。

有給休暇のタイミングによっては、交通事故の因果関係が否定されることは少なくないです。

しかし、弁護士が交渉に入ることで、認定されることもあります。

適正な休業損害を受け取るためにも、法律の専門家である弁護士に相談することを選択肢の一つに入れてみてはいかがでしょうか。

「休業損害が発生しているのに払ってもらえない…」

「休業損害が支払われたけど、この金額が適正なの?」

こういったお悩みの他、休業損害についてお悩みの方は、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。

このコラムの監修者

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