交通事故 交通事故基礎知識 示談
2020.09.26 2024.04.25

交通事故の示談が決裂したらどんな手続きをすればいいのか?

交通事故の示談が決裂したらどんな手続きをすればいいのか?

交通事故は、被害者と加害者、もしくは加害者の加入する任意保険会社での示談交渉を行い、お互いに合意できた場合において、示談成立となり、被害者は加害者より損害賠償金を受け取ります。

全体の9割以上がこの示談交渉での段階でお互いが合意し、解決に至っていると言われています。

しかし、残念ながら示談交渉をしても、当事者間で合意ができず、示談が決裂することもあります。

ここでは、示談交渉が決裂した場合において、どのような手続きがなされるのかをご説明させていただきます。

示談が決裂した場合の対処法

示談が決裂した場合にできる手続き

示談が決裂した場合、被害者の取れる手続きは3つあります。

・調停

・示談あっせん(ADR)

・訴訟

この3つについては、後程1つずつご紹介をさせていただきます。

示談には時効がある

交通事故の示談には「時効」があることを被害者の方は忘れてはなりません。 示談交渉は損害賠償請求の手続きであり、この損害賠償請求権には時効があります。人身事故の場合は5年、物損事故の場合は3年、後遺障害が残った場合は症状固定から5年、死亡事故の場合も死亡してから5年とされています。

※ただし令和2年4月1日以前は人身事故についても物損事故と同じく3年とされています。

なお、時効は更新されることもあるため、起算日は案件によって異なります。時効が迫っている方、事故から数年経過している方は、弁護士に相談するようにしましょう。

調停

調停とは

調停とは、簡易裁判所にて、相手と話し合いをし、解決をしていく手続きです。 裁判所の調停委員が当事者の間に入り、話を進めていきます。その為、当事者間で話すよりも解決はしやすいとされます。 事件ごとに調停官(裁判官)が関与しますので、法律的に妥当な判断で解決を図ることができます。

また、調停委員会より解決のための提案があります。この提案に双方が受け入れた場合において、調停が成立したとされ、「調停調書」がなされます。

調停調書には強制執行力があるため、万が一相手が支払わない場合においては、強制執行し、相手の財産を差し押さえるという方法をとることができます。

相手が保険会社の場合は、調停で決まった内容について支払わないということは基本的にはありませんので、被害者の方は確実に損害賠償金を受け取ることができます。しかし、加害者本人の場合はたとえ調停で決まっていたとしても、支払わないことはよくあります。 この時、調停による強制執行力は、被害者の方にとっては非常に大きな安心材料となります。

調停は、話し合いで解決をする手続きですので、双方が合意しない限りは解決とはなりません。平均的には、調停が開始されてから解決までは、3ヶ月~6ヶ月と言われております。調停を重ねても問題が解決しない場合においては調停不成立になります。

調停のメリット・デメリット

では、調停にはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?

調停のメリット

まず、相手との力の差を解消することができます。 交通事故問題において、示談交渉が難航する理由の一つに、相手の保険会社が大きな企業であるということがあります。対する被害者の方は、交通事故の問題において、全くの素人であり、個人であることが多いです。 その結果、相手の保険会社から一方的に不当、不利な条件を突き付けられることもあります。

調停を使用すれば、間に調停委員会が入るため、法律的な解決方法で話を進めてくれます。つまり、被害者の方は、相手との力関係の問題は解消され、法律的知識が無くても、妥当な解決を図ることができます。

次に、相手と直接話をしなくて済みます。 交通事故問題を解決するにあたり、被害者の方に大きな精神的負担になる一つの要因が「相手との交渉」です。 保険会社は、営利企業です。そのため、時には被害者の方に対して信じられないような高圧的な態度であったり、一方的な物言いであったりします。 被害者の方は、ただでさえ交通事故の怪我にて大変な思いを身体的にしているにも関わらず、精神的な負担まで背負うことになります。

しかし、調停を利用するとそういった面のストレスは解消されます。 調停は相手と直接話すことをしなくても良いです。被害者の方と加害者側の間には、調停委員が入ってくれます。被害者の方が伝えたい内容は、調停委員が相手に伝えてくれますし、相手の意見も調停委員より聞くことになります。 つまり、相手と直接顔を合わせることも、話すこともなく、話を進めていくことが可能です。

最後に、費用の面です。 調停は、相手への請求額にも寄りますが、印紙代については訴訟の場合の半額であり、後は、数千円の郵便切手代と裁判所までの交通費が主な費用です。 先ほども述べたように、調停は【話し合い】の手続きです。その為、専門性も要求されませんので、弁護士を立てずとも申し立てることも可能ではあります。そのため、費用面では、被害者の方にとっては安く済むといえるでしょう。

調停のデメリット

1つ目に、終局的な解決にならない可能性、時間が無駄になるということがあるということがあげられます。 調停は、何度も申し上げますが「当事者間の話し合いの手続き」です。 その為、調停委員が間に入ったとしても、片方の主張を片方に押し付けることはできません。 最終的に当事者間で納得がされない場合は、残念ながら調停は「不成立」となり、問題は解決されないままとなります。 つまり、不成立の場合においては、調停をした意味がなくなるため、時間が無駄にかかったということになってしまいます。結果論とはなりますが、それであれば初めから訴訟をすればよかったと思う方もいらっしゃいます。

2つ目に、手間と時間がかかります。 調停は、専門的かつ複雑な手続きではないのですが、調停申立書を作成し、裁判所に持参する、もしくは郵送をする必要があります。また、月に1度の頻度で調停が開かれますので、その都度裁判所に行かなければなりません。1度の調停には、2~3時間ほどかかり、また平日の昼間ということで会社にお勤めの方は、休まなければならない場合があります。つまり、手間と時間がかかり、被害者の方によっては、面倒と感じられるでしょう。

最後に、自身の主張を上手くできない場合は不利になる可能性があります。 難しい書面の作成や相手と直接話す必要はありませんが、被害者の方は、調停委員に自身の主張として、意見や希望を上手く伝えて、相手を説得してもらう必要があります。 自分の意見を話すことが苦手な方、説明が上手くできない方など、話すことに自信がない方にとっては、かなり苦戦をすることになるでしょう。調停委員に話を分かってもらわなければ、自身の主張を通すことは難しくなります。

以上のように、調停は被害者の方にとって非常に有効な手続きではあるのですが、デメリットも大きいです。 このデメリットを解消するには、弁護士に依頼をすることがおすすめです。 弁護士に依頼をすれば、書面の作成や裁判所の手続き関連も代わりにしてもらえます。また調停に関しては、弁護士が一緒にきてくれますので、説明が苦手な方も安心できます。

調停をお考えの方は一度弁護士に相談することをおすすめします。

示談あっせん

示談あっせんとは

示談あっせんとは、裁判外で紛争を解決する方法をいい、ADRともいいます。 基本的に争いが発生した場合は裁判で解決することが多いです。しかし、裁判所以外でも交通事故にはいくつかのADR機関があり、そこでの紛争解決を目指すこともあります。 代表的な例でいうと、交通事故紛争処理センターや日弁連の交通事故相談のセンターのADRがあげられます。

ADR機関を利用する場合は、まず相手と話し合いをします。この際に、担当者である弁護士が、話し合いを主導して進めてくれます。 話し合いにより解決が可能となれば、調停と同じく、被害者の方は損害賠償金を受け取ることが可能となります。

話し合いを行っても、合意ができない場合があります。その際に、ADR機関では仲裁決定を行ってもらうことができます。 これにより、一定の解決方法がADR機関より示されるので、当事者同士がその内容を受け入れたら、被害者の方は損害賠償金を受け取ることができます。

しかし、被害者の方が、仲裁決定の内容に不服申し立てを行った場合、仲裁の効力は失われ、訴訟に移行されます。 示談あっせんにかかる期間は、開始から終了までおおよそ4ヶ月程度です。

示談あっせんのメリット・デメリット

・示談あっせんのメリット

まず、調停と同じく、相手との力の差を解消することができます。ADRの担当者は交通事故問題に詳しい弁護士です。よって、法的な観点をもって話を主導してくれます。 また、相手の保険会社と直接やりとりをする必要もないので、話はしやすく、ストレスも軽減されます。

次に、妥当な内容で解決ができ、万が一合意ができなかったとしても、仲裁決定を受けることができます。 この点も調停と同じように、弁護士が間に入ることで、裁判所の法的な考え方や経験において、法律的に妥当であると考えられる内容での解決案が提示されます。この解決案は、「裁判をした時に予想される判決」と同じものといえます。当事者達は、裁判をした時に予想される判決なのであれば、早期解決も考え、示談をした方がいいと考えるため、話し合いが成立しやすいです。

さらに、当事者が合意しなかった場合、調停は不成立となりますが、ADR機関では、仲裁決定があります。これは、ADR機関にある審査会に入ってもらい、問題解決方法を決定してもらいます。決定の内容には、相手の保険会社は異議を出せません。受諾するか、異議を申し出るかは、被害者側のみに決定権があります。 なお、仲裁決定は強制執行力が認められるため、調停と同じく、相手が決まった内容に従わなければ、財産を差し押さえることが可能です。 最後に、ADRは費用が安いです。交通事故紛争処理センターでは利用の料金は完全に無料です。被害者の方は、交通費や郵送代くらいしかかりません。被害者本人で手続きを行うのであれば、1万円以内で利用でき、解決が可能となりことも少なくありません。 3つの解決方法では最も費用は抑えることができるといえます。

・示談あっせんのデメリット

示談あっせんのデメリットは、調停と似ています。 1つ目に、終局的な解決にならず、時間が無駄になるおそれがあります。 ADRは調停と同じく、お互いが合意をしない限りは問題を解決できません。仲裁決定に移行したとしても、必ずしも終了するとは限りません。 相手の保険会社の場合は、仲裁決定に従わなければなりませんが、相手が加賀者本人の場合はや被害者側は仲裁決定に従わなくても良く、異議申し立ても可能です。つまり、そのまま訴訟で解決することになります。 その結果、時間が無駄になり、同じく最初から裁判をすればよかったと考える方もいらっしゃいます。 ADRを利用する方は、「できるだけ早く解決したい」という方が多いです。そのため、仲裁決定に納得ができないから、訴訟をするとなると、時間がさらにかかることから、被害者の方にとっては大きなデメリットと考えられます。

2つ目は、手間と時間がかかる、というデメリットです。 ADRを利用する場合は、まずはセンターに相談に行かなければなりません。また和解あっせんが始まれば、何度もセンターに足を運ぶことになりますし、担当の弁護士から指示をされたら、資料の準備をすることも少なくありません。

3つ目は、調停と同じく、自身の主張を上手くできない場合は不利になる可能性が高いです。 ADRの担当者である弁護士は、中立的な立場ではあります。しかし、上手く主張ができる側の話に偏ってしまう場合も考えられます。正しい主張をしていても、上手く説明ができなければ、被害者の方が望む解決にならないこともありえます。

最後に、注意をしなければならないデメリットは、ADRを利用した話し合いでの和解解決の場合、調停とは異なり、強制執行力は認められません。ADRの和解手続きは「民間における任意での当事者同士の話し合い」です。 この和解内容に対して、相手が支払いをしない場合は裁判を起こす必要があります。 以上の点が示談あっせんのメリット・デメリットです。

被害者の方に覚えておいてほしいことは、裁判所の調停委員会やADRの担当者は、「中立の立場である」ということです。 つまり、被害者の方の完全な味方ではありません。 被害者の方が交通事故問題について詳しくないことは理解していますが、主張に対して足りない資料があったとしても、サポートをしてくれることは基本的にありません。 被害者の方自身が、自分で有利になるように進めていかなければならないのです。

こういった解決機関の場で、被害者の方の完全な味方は「被害者が依頼をした弁護士」だけです。 被害者が依頼した弁護士は、調停やADRの場に被害者の代理人として、出席、発言をすることが可能です。 調停、ADRの利用のメリットで費用面についてご説明をしましたが、より被害者の方の負担を軽減し、適正な結果を得るためには、費用が多少かかったとしても弁護士に依頼をすることをおすすめします。

訴訟

訴訟とは

訴訟とは、裁判のこといい、交通事故の場合は「損害賠償請求訴訟」となります。請求額が140万円以上は地方裁判所、それ以下の場合は簡易裁判所に提訴することとなります。 訴訟は、話し合いの手続きではありません。担当の裁判官が、当事者の主張、立証内容・方法を確認し、法的な観点から妥当と思われる内容で、解決方法を決定していきます。これを「判決」といいます。 訴訟については、裁判においてプロである弁護士に依頼すべきだと言えます。被害者の方は、自身の主張と立証を行わなければなりません。裁判においては、法的な根拠がなければ、裁判官は被害者側に有利な評価してくれません。 これを被害者本人で行うことは、難しいと考えられます。そういった点でから、弁護士に依頼をすることをおすすめします。 訴訟にかかる期間は、提訴から8ヶ月~1年、長引く場合は2年~3年以上となります。

訴訟のメリット・デメリット

・訴訟のメリット

1つ目は、最終的な解決ができます。調停やADRは当事者が納得しなければ問題解決はできません。しかし、訴訟は、当事者に不満があったとしても、判決で決まったことは、そのまま強制的に適用されます。 裁判で決まったことについては、他の機関にて再審査はできません。 2つ目は相手との争いがどのような内容であっても解決ができます。 たとえば、交通事故でよくあるのが、当事者間の事故態様の主張の対立です。双方ともに「相手にぶつけられた、自分は被害者だ!」と主張しているとなると、調停やADRでは調整をしても解決をすることはできません。 しかし、訴訟の場合は、主張が真っ向から割れていたとしても、判決で決定することができます。一方がぶつけられた方であり、一方がぶつけた方であると判決で決まれば、片方は受け入れざるを得ない、つまり解決となります。 最後に、裁判所の判決は、当然強制執行力があります。相手が判決の内容に沿わない場合は、相手の財産から取り立てが可能となります。裁判にて和解で解決した時も強制執行力があります。 つまり、裁判を使って、解決をした場合は強制執行力が必ずあるとされ、被害者の方が非常に安心できます。

・訴訟のデメリット

訴訟のデメリットはわかりやすいです。 ・費用が高い ・解決期間が長い ・手続きが複雑であり、専門的である 費用については、裁判自身にかかる費用が比較的に高額です。印紙代や郵便切手、また謄写費用があげられます。特に請求額が大きいと印紙代だけで数万円かかることがあり、治療期間が長ければ、医療カルテなどの謄写費用も高額になることも想定できます。 さらに、弁護士の費用もかかります。 期間は、この章の冒頭でお伝えしたように、年単位でかかることがあります。それであれば、調停やADRで解決したほうがいいのでは?とお考えになる方もいらっしゃいますが、解決ができなければ時間が無駄となります。最初から訴訟をしていた方が早く終わることもあるので、解決までの期間についてはケースバイケースとなります。 最後に手続きが複雑かつ専門的であることです。 調停やADRと違い、被害者の方が手続きを行うことは複雑、かつ専門的であるため非常に厳しいです。 また、弁護士に依頼をしなければ、有利な判決を得ることはほぼ不可能だといっても過言ではありません。 ただし、弁護士に依頼をした場合は、被害者自身はすべきことは基本的にありません。交通事故の問題に強い弁護士であれば、より被害者の方への負担も軽減されますので、デメリットではあるものの、場合によっては、実際の被害者の方への負担はそこまでないと考えられます。

示談交渉でお悩みの方は、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイへ。

冒頭でもお伝えしたように、交通事故は示談交渉ですることがほとんどのため、被害者の方の中には、不満を抱えたまま示談を行う方もいらっしゃるでしょう。 それでは被害者の方が、適正な損害賠償金を受け取れないままです。 示談内容に納得がいかない場合は、示談が成立する前に、調停、ADR、そして裁判を検討しましょう。 ただ、この手続きは被害者が自分一人で対応することは非常に困難ですので、同時に弁護士に依頼をすることも視野に入れましょう。 弁護士に依頼をすれば、被害者は安心して手続きを進めることができるでしょう。 示談交渉が難航している方、一人で進めていくことが不安な方、その他示談交渉でお悩みの方は、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください

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