交通事故 休業損害
2020.11.05 2022.11.15

交通事故後の休業損害と休業補償について知りたい

交通事故後の休業損害と休業補償について知りたい

交通事故により、怪我をした被害者の方が仕事を休まざる得ない場合があります。この時、減った収入分を補填するのが、休業損害または休業補償です。

この2つの違いは何なのでしょうか?

ここでは、休業損害と休業補償について詳しく説明をさせていただきます。被害者の方が、ご自身の損害を請求する際に参考になれば幸いです。

交通事故原因の休業損害

意味と対象

そもそも、休業損害とはいったいどのような損害をいうのでしょうか?

休業損害とは、交通事故により怪我を負ってしまった被害者の方が、仕事を休むこととなった場合、本来であれば得ることができたはずの収入や賃金の減額分をいいます。

請求するにあたって「交通事故の怪我が原因で」「休業の必要性があった」ことがポイントです。

対象となるのは、会社員や公務員といった給与所得者や自営業者、アルバイトやパートの方も請求が可能となります。

基本的には、被害者の方の職業や前年度や事故前の収入、実際に休業した期間、休業している間の入院・通院をした日数等で金額は変わります。

休業損害は、欠勤だけでなく、治療のために早退や遅刻をした場合、有給休暇を使った場合も、減額分として請求できます。

なお、有給の場合は、給与に影響はありませんが、本来であれば自由に使えたはずの有給を交通事故が原因で使用をすることは、有給休暇を取得するという「労働者の有する権利」を被害者の方は喪失した、つまり損害が発生したと考えられ、損害賠償として請求が可能となります。

また、主婦の方も、事故で家事に影響が出た場合は請求することが可能です。主婦業は経済的価値があると考えられているからです。

休業損害の対象外となるのは、実損害ない方です。

具体的には、年金での生活者、生活保護受給者、アルバイトをしていない学生といった収入がない方や、不動産のオーナーの方等です。

不動産のオーナーについては、事故に遭ったとしても、基本的には収入が減らないので請求することができません。

ただし、無職の学生の中でも、事故が原因で半年入社が遅れてしまった場合等で収入を得られなかった場合は、その半年分を請求することは可能です。実際、半年分の収入が休業損害として、認定されるケースもあります。

自賠責保険で請求できる休業損害

減額されるケース

休業損害を相手の自賠責保険に請求する場合は、以下の計算式で求めることが可能となります。

自賠責保険の休業損害=日額6,100円×休業日数

2020331日までの事故は日額5,700

ただし、自賠責保険での日額は、被害者の方の実際の収入なども考慮はされます。立証資料が必要とはなりますが、日額19,000円までであれば、対応はしてくれます。

なお、パートやアルバイト、日雇労働者の方の場合、1日あたりの平均収入額によっては6,100円より減額されることもあります。

よって家事従事者の方で、パートやアルバイトも行っている兼業主婦の方については、家事従事者の場合(日額6,100円)とパートやアルバイトの場合の両方を計算し、いずれか高い金額を自賠責保険は認定してくれます。

主婦の方の場合は、具体的な休業日数を証明できないことから、病院への入院・通院日数をベースに計算されます。

また、自賠責保険では被害者の方に一定の過失がある場合、多少の減額がなされます。

これを【重過失減額】といいます。

減額適用上の

被害者の割合

減額割合

後遺障害または死亡に係るもの 傷害に係るもの
7割以上8割未満 2割減額  

2割減額

8割以上9割未満 3割減額
9割以上10割未満 5割減額

 

被害者の方の過失の割合が、「7割以上10割未満」の交通事故の場合、被害者の方は重過失減額の対象となります。

上記の表にあるように、被害者の方の過失割合により、支払われる自賠責保険金が減額されます。つまり、休業損害も減額されてしまいます。

ただし、自賠責保険は任意保険に比べると、減額の割合は少ないです。

任意保険の場合は、被害者の方に過失が4割あれば4割分が減額され、6割分の損害賠償しか請求ができません。

一方で、自賠責保険の場合は、被害者の方の過失割合が7割未満の場合は、減額対象となりません。

被害者の方の過失割合によっては、任意保険ではなく、自賠責保険に請求する方が、休業損害を含む損害賠償金は多く受け取れる可能性もあります。

休業補償について

休業損害との違い

休業損害以外に、休業補償という言葉を被害者の方は、耳にするのではないでしょうか?

「事故の怪我によって仕事ができなくなり、そのため、減った収入分を補填するもの」という大枠の意味合いは同じなため、混同して使われることが多いですが、厳密には異なります。

・休業損害は「自賠責保険」への請求

・休業補償は「労災保険」への請求

となり、それぞれに請求できる金額や条件は異なります。

具体的にどこが異なるのか、下記表にまとめてみました。

  休業損害 休業補償
請求先 自賠責保険 労災保険
対象範囲 ・休業により発生した収入の減少分

 

・自賠責保険の上限額120万円を超える損害については、差額分を加害者本人、ないしは加害者側加入の任意保険へ請求する

 

・勤務中または通勤中の交通事故による怪我

 

・勤務中の事故の場合は「休業補償給付」、通勤中の事故の場合は「休業給付」の対象となる

対象となる期間 ・交通事故の怪我が原因で休業をした期間

 

・医師の指示による休業期間。被害者方自身が、自己判断で休んだものについては含まない

 

・被害者の方の休業が始まってから、4日目から支給が開始される
計算方法 ・日額(1日あたりの基礎収入額)×休業日数 ・給与基礎日額(事故前3ヶ月分給与より1日あたりの平均給与を計算)の60%×休業日数

 

賞与・有給休暇等の取り扱い ・休業により賞与が減額となった場合、休業損害として請求可能(減額証明書が必須)

 

・怪我の治療のために、有給休暇を利用した場合でも、休業損害の請求可能

・賞与や手当も労働基準法第12条の「賃金」に該当するものであれば、補償が受けることが可能

 

・休業特別支給金として、給与基礎日額の20%が加算される

 

休業補償の考え方

休業補償は通称であり、正式名称は「休業(補償)給付」といい、先ほども述べたように、労災保険から受け取ることできます。

会社等に雇用されている方が、勤務中・通勤中に交通事故の被害に遭ってしまった場合、労作保険の適用対象となります。

勤務中の事故:「休業補償給付」

通勤中の事故:「休業給付」

各々、休業開始の4日目から支給される仕組みになっています。

次に、休業補償の計算は以下となります。

【休業(補償)給付=給付基礎日額の60%×休業日数】

給付基礎日額は、事故の被害に遭う3ヶ月前の給与の平均が基本となります。

また、「休業特別支給金」というものがあります。

これは、給付基礎日額の20%が加算されるものです。

つまり、実際には被害者の方は、「平均賃金の80%の補償」が受けられると言えます。

なお、休業損害と同じように、賞与や各種手当も、給付基礎日額に含まれて算出されます。

さて、休業補償を受けるためには、通常労働者である被害者の方自身が労働基準監督署に対して、請求手続きを行うことが多いです。会社によっては、代わりに窓口となってくれる方もいますので、職場の方に相談をしましょう。

払われないケース

重ねて申し上げますが、勤務中の事故の場合に受け取ることができる「休業補償給付」、通勤中の事故の場合に「休業給付」はそれぞれ休業開始の4日目から支給される仕組みです。

では、作業開始から3日間分は労災保険からは払われません。この3日分については、待期期間として扱われます。そのため、この間については、会社が休業補償を支払わなければならないとされています。

また、休業給付については払われないケースがあります。

そもそも、通勤災害とは、労働者の通勤時による負傷・疾病・障害または死亡のことをいいます。

通勤災害と認められる交通事故とは、自宅(住居)から就業場所へ向かう際の、「合理的な経路・方法で往復している間」に起きた事故でなければなりません。

つまり、合理的な経路でない場合、たとえば、仕事帰りに友人宅に寄ったり、スーパーで買い物をしたりと、寄り道した際の交通事故については、通勤災害として認められず、払われないケースとなってしまいます。

休業損害と休業補償

両方に申請は可能か

休業損害と休業補償の両方に申請が可能かどうか、と気になる方もいらっしゃるかと思いますが、基本的には、併用はできません。

どちらも交通事故によって被害者の方の損害を国が保証する制度です。そのため、補償が重複した部分は差し引かれます。

事案によってはどちらも利用できますので、その場合は、メリットが大きい方を選ぶことが重要です。

休業損害と休業補償のどちらを利用するかは、個別の状況により変わるので、法律の専門家である弁護士に相談することを強くお勧めします。

自賠責保険は補償範囲が広いですが、上限金額が120万円までと定まっていることに被害者の方は注意しなければなりません。

また、加害者側が自賠責保険のみの場合や、被害者の方自身の過失割合が大きい場合は、労災保険を使用する方が、メリットが大きい場合もあります。

任意保険の弁護士費用特約

使い方と特徴

弁護士特約とは、交通事故問題において発生する弁護士の費用を、被害者の方が加入する任意の保険会社が代わりに負担をしてくれるため、実質0円で弁護士に依頼が可能となります。

自動車保険の特約でついていることが多いですが、火災保険やクレジットカードの保険などにもついていることがあります。

まずはご自宅の保険関係を確認すると良いでしょう。

また、弁護士特約は対象範囲が広く、ご家族の方(配偶者、同居の親族、別居の未婚の子供)や同乗していた方も利用することができることがあります。

なお、使用については、加入する保険会社の同意が必要となります。

事故の概要を担当者に説明したうえで、弁護士特約を利用したい旨を伝えてください。

気になる弁護士特約で補償される弁護士費用の金額ですが、各保険会社で上限額が定められています。

多くの場合は、1つの事故1名につき、法律相談料10万円、依頼関係費用300万円までとされておりますが、この金額をこえることはほぼありません。

被害者の方が亡くなった場合の死亡事故、上位等級である後遺障害が認定された事故は、上記金額を超える可能性はあります。

ただし、こういった場合でも、弁護士を入れたことによる増額分の方が大きく、弁護士費用を支払っても被害者の方自身が示談するよりも高額の示談金を受け取れる可能性が高いです。

被害者の方が覚えておくべきことは、弁護士特約は使用するタイミングは被害者の方で決めることができるということです。保険会社によっては「揉めていなければ使えない」「過失が0の時しか使えない」という説明をしてくる場合がありますが、そのような場合は保険の約款を確認しましょう。

そのうえで使用したい意思をしっかり伝えるようにしましょう。

休業損害・休業補償についてのご相談は、交通事故を多く取り扱う大阪市・難波(なんば)・堺市の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイへ

休業損害と休業補償の違いを中心に、ご説明をさせていただきました。

先ほども申し上げましたが、自賠責保険と労災保険の両方を、同じ事故において、併用することはできません。

一般的には交通事故の休業における補償は、自賠責保険の方が高額となることが多いことから、自賠責保険の利用を推奨されることが多いです。

しかし、その一方で、被害者の方の怪我の程度が大きく、治療費が120万円を超える案件や、加害者が無保険者であったり、対人補償内容が不十分な場合であったり、また、被害者の方の過失割合によっては、どちらの保険を使って補償を受けた方が有利かは、事案によりけりとなります。

つまり、一概に自賠責保険の利用を優先するべきとは言えません。

こういったことを、被害者の方自身で判断するのはなかなか難しいです。

おすすめは交通事故問題に強い弁護士に相談をすることです。

交通事故問題の経験が豊富な弁護士に相談をすれば、どちらを使用すればいいのか、的確なアドバイスをもらうことができます。

休業損害や休業補償に関するお悩みは、交通事故を多く取り扱う大阪市・難波(なんば)・堺市の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。

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