交通事故 慰謝料 過失割合
2020.11.25 2023.07.31

自転車と車の事故の慰謝料がどのくらいになるか知りたい

自転車と車の事故の慰謝料がどのくらいになるか知りたい

自転車は、運転免許が無くても誰でも乗ることができる手軽な乗り物です。

その手軽さ、便利なことから、多くの方が利用されていますが、その一方で、車道も走ることができることから、車との接触事故が起きる可能性が非常に高いです。

ここでは、自転車と車における交通事故について、ご説明をさせていただきます。

自転車と車の事故の慰謝料

自転車事故の慰謝料の種類

自転車と車の事故においての損害賠償を請求するにあたり、慰謝料は自動車同士の事故と変わらず、以下の3種類があります。

 

・入通院慰謝料

交通事故の怪我が原因で、被害者の方が入院、通院をしなければならなくなった際に受けた精神的苦痛に対する損害賠償金をいいます。

被害者の方の入院、通院の期間や実際に通院した日数などをもとに算出されます。

つまり、怪我をしても軽傷であったから等という理由で通院をしなかった場合は、入通院慰謝料の請求が困難となります。

 

・後遺障害慰謝料

交通事故で負った怪我に対して、治療を継続して行っていたにも関わらず、後遺症が身体に残ってしまった場合、後遺障害等級の認定申請を行うことが一般的です。

この申請を行い、第三者機関である損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所の調査の結果、1~14級ある後遺障害等級のいずれかが認定された際に、等級に応じた金額を請求できるのが、後遺障害慰謝料です。後遺障害が残ったことで被害者の方が受けた精神的苦痛に対しての慰謝料です。

 

・死亡慰謝料

交通事故の被害者の方が亡くなった場合において請求できる慰謝料です。

死亡させられた被害者の方本人だけでなく、相続人であるご遺族の方にも固有の慰謝料が認められます。

被害者の方の受けた精神的苦痛と、被害者の方を失ったご遺族の方の精神的苦痛は別のものとして考えられています。

 

 

自転車事故の慰謝料の算定基準

次に、自転車と車の事故の慰謝料を算定する際の基準ですが、こちらも自動車同士の事故と変わらず、3つの算定基準が使用されます。

 

そもそも、「被害者の方が受けた精神的な苦痛を金銭で癒す」ことが慰謝料の目的です。

本来であれば、1つ1つの事案ごとに、被害者の方の様々な事情を考慮し算出されるべきでしょう。しかし、実務上、すべての個々の事情を考慮することは難しいです。

 

そのため、交通事故の場合は、慰謝料はある程度の定型化、定額化がなされており、相場があります。

また、先ほど述べたように算定基準は3つあり、どの算定基準を使用するかで金額は大幅に異なります。

 

・自賠責基準

原動機付自転車を含むすべての自動車に加入が義務付けられている「自動車損害賠償責任保険(通称:自賠責保険)」で使用されている基準を「自賠責基準」と言います。

自賠責保険が、「自動車事故による人身事故の被害者の方を救済する」ためにある保険であり、より迅速・公平に多くの被害者を補償するために、被害者の方へは「最低限度の補償を行う」としています。

そのため、自賠責基準では、各損害項目において、支払基準や支払限度額が設けられています。

3つの基準の中でも最も低い算定基準です。

 

・任意保険基準

いわゆる強制保険の性質を持つ自賠責保険がある一方で、個人の任意で加入するか否かを決めることができる自動車保険があります。これを「任意保険」と言い、その任意の保険会社で使用をする算定基準を「任意保険基準」と言います。

任意保険基準は、各保険会社で独自に定めていることから、一律ではなく、またその算定基準、計算方法などはすべて非公開です。

加害者側の任意の保険会社が、被害者の方に示談案を提示する場合は、この基準を使用して慰謝料等は計算されています。

基本的には、過去のデータや実績などを基に算定されていると言われますが、実際に提示される金額は、自賠責基準と同等か、少し上回る程度となることが多いです。

 

・弁護士基準(裁判基準、裁判所基準)

慰謝料を算定する3つの基準の中で、最も高額な慰謝料が算出可能な基準です。

交通事故問題の過去の裁判例などを基準にしており、裁判、もしくは示談交渉段階では弁護士に依頼をすれば使用が可能となります。

詳細については、「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(通称:赤い本)」にも記載されています。

「最も適正な損害賠償金を算出できる基準」とも言われており、ケースバイケースではありますが、他2つの基準と比べると、慰謝料が2~3倍になる事案もあります。

各算定基準での慰謝料の計算方法は、こちらの記事「交通事故で受け取れる慰謝料の平均を知りたい」https://lawyers-high.jp/traffic-accident/column/671/をご確認ください。

 

慰謝料以外の損害賠償

慰謝料とは、あくまでも損害賠償できる項目の1つであり、自転車事故の被害者の方は、慰謝料以外にも請求できるもがあります。

以下が請求できる主な項目となります。

損害の種類 項目
傷害による損害 入通院慰謝料

 

治療関係費

・治療費(診察費、手術費、検査費、薬局代等)

・通院交通費

・入院諸雑費

・看護費

・義肢などの費用

休業損害

文書料

後遺傷害による損害 後遺障害慰謝料

 

後遺障害逸失利益

死亡による損害 死亡慰謝料

 

死亡逸失利益

葬儀関係費用

 

なお、これらはあくまでも主に請求できる項目です。

「交通事故が原因で受けた損害である」、ということを立証することができれば、上記以外についても請求が可能なこともあります。

一度示談をしてしまうと、後から損害が漏れていたことが分かったとしても追加で請求することは原則できません。

示談書にサインをする前に、請求漏れがないかを今一度確認することが非常に重要です。

少しでも不安であれば、弁護士に相談をすることをおすすめします。

自転車と車の事故の注意点

自転車も軽車両とみなされる

自転車と車の事故で、被害者側が自転車の場合において注意しなければならないのが、自転車は「軽車両」の扱いをされるという点です。

冒頭でご説明をさせていただいたように、自転車を乗ることに対して、運転免許証は必要ありません。

しかしその一方で、四輪自動車やバイクなどと同様の規定が適用されることになります。

つまり、自転車と車の事故では、自転車は軽車両として扱われるということになります。ただし、自転車は法律上で交通方法において特例が定められている乗り物でもあるので、バイクといった単車と車の事故に比べると有利に扱われると考えられます。

なお、交通弱者である歩行者と同等の扱いはなされることは少ないことは覚えておきましょう。

 

過失割合が争いになるケース

自転車と車の事故は、自動車同士の事故に比べると、過去の判例が少ないということから、過失割合が争点になりやすいです。

交通事故の損害賠償請求における争いは、過去の判例を基準にして、示談交渉を進めていき、解決が図られることになります。

もちろん、過去の判例通りの事故はありませんので、過去の判例から似た内容を探し出し、修正要素を確認しつつ、過失割合を決めていきます。

判例などといった基準を用いずに、事故ごとで過失割合を決めていくとなると、担当者によって過失割合は変わってしまい、被害者の方の受けた損害に対する補償内容に不公平が生じます。

そのため、被害者の方の公平な補償を目的に、過失割合については過去の判例が用いられます。

しかし、ここで問題になるのが、自転車と車の事故については、過去の判例が少ないということです。

つまり、当てはまる判例、似通った事故態様の判例がなければ、双方で1から話し合いを行う必要があるため、過失割合は争いになりやすい傾向があります。

また、「自転車は軽車両である」という認識が、被害者である運転手側も低く、交通ルールを意識せずに利用している方も多いため、場合によっては、被害者の方の過失が非常に多くとられることもあります。

その結果、被害者の方は、相手の保険会社に対し、過失割合について説明をされても「納得できない」と主張することとなり、過失割合が争点となってしまうことも珍しくありません。

加害者側が自転車の場合

ここまでは、自転車と車の事故についてご説明をさせていただきましたが、次に自転車側が加害者であった場合の交通事故について、特徴等をご説明します。

 

保険に加入していないことが多い

加害者側が自転車である場合、よくあるケースが「保険未加入者」であることです。

自動車やバイク等については、自賠責保険へ入ることを義務付けられているため、無保険者であることは非常に稀なケースです。さらに、自賠責保険は最低限度の補償の為、大半の方々が任意保険へ加入しています。

よって、自動車が加害者側の場合は、加入する任意保険会社、未加入であれば自賠責保険から、被害者の方が損害賠償金を受け取ることができます。

 

これに対して自転車については、一部の自治体においてのみ保険の加入が義務付けられているという状況でとどまっています。

さらに、義務付けられている自治体で、保険に未加入であっても、条例違反にはあたりますが、未加入であることに罰則を科せられることがありません。

そのため、未加入者の方は減らない傾向にあります。

しかし、自転車保険には入ることは強くお勧めします。

 

その理由は2点あります。

まず1点目は、自転車保険に加入していない場合、示談交渉は、事故の当事者である被害者の方と直接、つまり加害者自らで行わなければなりません。

交通事故の損害賠償請求問題は、慰謝料の算出はもちろんのこと、その他の請求内容についても専門知識は必須です。

当事者同士が知識もなく示談交渉を進めていくことは非常に困難であることから、解決までに時間がかかってしまうことになるでしょう。

2点目は、高額な損害賠償金を自己負担しなければいけない可能性があるということです。自転車事故であることを理由に、損害賠償金は減額されること等はありえません。

自転車事故で、被害者の方が重い障害を負ってしまったり、死亡してしまったりした場合、高額な損害賠償金を支払うこともありえます。

過去の裁判例では、約9500万円の支払いを命じた事例もあります。

なお、この際の加害者は、当時小学5年生の男子生徒であり、相手は60歳の女性で意識不明の重体となり、その後、症状固定時には、急性硬膜下血腫や広範囲脳挫傷、水頭症から植物状態であり、開眼は可能であっても、意思疎通が不能、四肢可動はできない等の症状が残存しました自賠責保険の後遺障害等級別表1の1級という非常に重い障害がのこったケースです。

この他にも自転車が加害者となり、1000万円以上の支払いを命じられた判例は多数存在します。

 

慰謝料が支払われない可能性

加害者側が保険に加入してない場合、被害者の方は、加害者本人へ慰謝料等損害賠償金の請求を行うことになります。

ここで、注意しなければならないことは、加害者側の資力です。

加害者側に支払えるだけの資力があれば、支払われる可能性があります。しかし、そもそも資力があり、かつ「自身がいつ加害者側になってもおかしくない」という意識をもった多くの方は、保険に加入をしています。

保険に未加入である場合は、支払い能力が見込めない可能性も高く、また、加害者であることを認めず、支払いを拒否するたちが悪いこともありえます。

つまり、示談交渉の段階では、相手に損害賠償を請求したとしても、支払われないリスクが非常に高いです。

 

後遺障害の認定機関が存在しない

加害者側が車やバイクといった、自賠責保険に加入をしている場合は、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所という第三者の専門機関にて、後遺障害の有無や、等級が何級に当たるのかを認定します。

しかし、その一方で、自転車が加害者側となった場合、後遺障害を認定する専門機関が存在しません。

つまり、客観的に後遺障害を認定する機関がありませんので、被害者側は、自身の医療記録や残存する後遺症の重さ等を主張していかなければなりません。

これについては、あくまでも「主張」であり、正式な専門機関での認定では無いことから、加害者側との示談交渉において、大きな争点になりやすく、解決まで長引く可能性が非常に高いです。

自転車事故に遭われた方は、交通事故を多く取り扱う大阪市・難波(なんば)・堺市の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。

自転車と車の交通事故についての慰謝料等についてご説明をさせていただきました。

自転車事故は、自動車同士の事故と比べて、争点になりやすく、また被害者側が自転車である場合は、生身の身体に自動車が接触することから、怪我が重くなる傾向があります。

また、加害者側が自転車であり、自身が歩行者で被害者となってしまった場合、相手が無保険者であれば、争いは避けられません。

適正な慰謝料をはじめ損害賠償を請求するためには、一度弁護士に相談をするようにしましょう。

このコラムの監修者

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